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エゼチミブとスタチンの併用による脳梗塞再発予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
8月15日(月)までクリニックは夏季の休診となります。
ご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
「Ezetimibe-Simvastatin Therapy Reduce Recurrent Ischemic Stroke Risks in Type 2 Diabetic Patients」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=ezetimibe-simvastatin+therapy+reduce+recurrent
今月のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
脳梗塞の再発予防に対する、
コレステロール降下療法の種類と効果についての論文です。
台湾の研究グループによるものです。

今回の文献の注目点は、
通常の臨床であまり根拠なく行なっている、
比較的低用量のスタチンとエゼチミブ(商品名ゼチーア)との併用が、
実際に高力価のスタチンの使用と比較して、
同等の効果があるかどうかを、
直接比較している、という点にあります。

欧米では幾つかこうした研究結果が報告されていますが、
日本で使用可能な処方量を、
大幅に上回る用量のスタチンが使用されていることが多く、
また脳梗塞ではなく、心筋梗塞や心不全が、
再発予防の対象疾患のメインであることが殆どです。

その点、
今回の研究は台湾のもので、
使用されている薬剤の量も、
日本の臨床で実際に使用されているものに合致していますし、
対象が虚血性脳梗塞の再発予防に限られている、
という点も興味を引くところです。
対象は2型糖尿病の患者さんに限定されています。

一方で医療保険のデータベースを後から解析したものなので、
個別の患者さんを登録して経過を追うようなものではなく、
データの精度はそれほど高いものではありません。
また、未治療のコントロールは設定されておらず、
比較的少量のスタチン治療がコントロールとして活用されています。

さて、強力なスタチンを使用して、
LDLコレステロールを高度に低下させるという治療が、
心筋梗塞の再発予防に有効であることは、
これはもう間違いのない事実です。

ただ、同じ再発予防とは言っても、
脳梗塞においては必ずしもスタチンの効果は、
クリアなものではありません。

これは欧米での心血管疾患のメインは心筋梗塞などの虚血性心疾患で、
脳卒中は少ないので、
それほどその予防に注目がされていない、
という点が大きいと思います。

最近スタチン単独の治療の他に、
比較的よく行われているのが、
スタチンとエゼチミブとの併用です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤ですが、
この薬を使用してコレステロールを低下させると、
身体はコレステロールが不足していると判断するので、
食事からのコレステロールの吸収率が増え、
それが一部スタチンの効果を相殺するようになります。
エゼチミブはコレステロールの吸収を阻害する作用があるので、
スタチンとエゼチミブを併用することは、
お互いの欠点を補うという点から、
一石二鳥の部分があるのです。

ただ、その一方でスタチンには、
コレステロールを下げるだけではなく、
抗炎症作用などの付加的な作用により、
トータルに動脈硬化の進行を抑制しているのでは、
というような考えがあります。

これが事実であるとすれば、
スタチンを減量してエゼチミブと併用するという戦略は、
動脈硬化性疾患の予防という観点からは、
その効果を減弱してしまう、
という可能性もあるのです。

そこで今回の研究では、
台湾の健康保険のデータベースを活用して、
2型糖尿病で虚血性脳梗塞を起こした患者さんのうち、
欧米のスタンダードな処方である、
高力価スタチンのアトルバスタチン(商品名リピトールなど)を、
1日40ミリグラム使用した1510例と、
中力価のスタチンであるシンバスタチン(商品名リポバスなど)を、
1日20ミリグラム使用した337例、
そしてシンバスタチン20ミリグラムに、
上乗せしてエゼチミブを10ミリグラム併用した、
564例の3群の比較を行っています。
観察期間は34か月で、
この間に虚血性脳梗塞を再発した頻度を、
各群で比較しています。

その結果…

期間中の虚血性脳梗塞の再発は、
シンバスタチン単独群では16.9%であったのに対して、
アトルバスタチン群では7.5%、
シンバスタチンとエゼチミブの併用群では9.2%となっていました。
これより、アトルバスタチン群と比較して、
シンバスタチン単独群の再発率は2.03倍(1.46から2.82)、
シンバスタチンとエゼチミブ併用群と比較しても、
再発率は1.69倍(1.14から2.50)と、
それぞれ有意に再発リスクは増加していました。
つまり、シンバスタチン単独より、
アトルバスタチン群とエゼチミブ併用群は、
いずれも虚血性脳梗塞の再発予防効果が高かった、
ということになります。
そして、アトルバスタチン群とエゼチミブ併用群との間では、
アトルバスタチン群がやや再発予防効果の高い傾向はありましたが、
有意な差はありませんでした。

つまり、2型糖尿病の患者さんにおける脳梗塞の再発予防については、
シンバスタチン20ミリグラムでは不充分で、
アトルバスタチン40ミリグラム単独と、
シンバスタチン20ミリグラムとエゼチミブ10ミリグラムの併用は、
そう遜色のない予防効果が得られている、
ということになります。

今回のデータは日本に近い状況で、
日本での使用可能な用量での比較である点が興味深く、
今後の更なるデータの蓄積に期待をしたいと思います。

心血管疾患の予防には、
基本的には高力価のスタチンを充分量使用することが望ましいのですが、
有害事象などの要因で高用量のスタチンが使用出来ないケースでは、
エゼチミブと比較的低用量のスタチンとの併用は、
考慮するべき選択肢の1つと考えて良いと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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