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GLP-1アナログの心不全への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
GLP1アナログの心不全への効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
インクレチン関連薬と呼ばれる糖尿病治療薬の注射により、
進行した心不全の患者さんの予後が改善するかどうかを、
検証した論文です。

インクレチン関連薬は、
従来のSU剤などとは別個のメカニズムで、
インスリン分泌を刺激する薬で、
一種の消化管ホルモンを薬にしたものです。

インスリン分泌を促進すると共に、
インスリン抵抗性を改善する作用を併せ持ち、
SU剤で問題となる低血糖を、
起こしにくい点がその特徴です。

インクレチンそのものであるGLP-1アナログの注射薬と、
インクレチンの分解酵素の阻害剤であるDPP-4阻害剤の、
2種類のタイプの薬剤が使用されています。

このうちでよりその効果が強力で、
体重減少などの付加的な作用も期待をされているのが、
GLP-1アナログで、
その代表はリラグルチド(商品名ビクトーザ)です。

DPP-4阻害剤については、
心不全による入院を増加させるのではないか、
というデータが問題となったことがありましたが、
リラグルチドについては、
心臓の筋肉の代謝を改善して、
心機能にも良い影響を与えるのでは、
という指摘があり、
単独施設のデータでは、
心不全の予後を改善したという報告も得られています。

心不全では、
心臓におけるブドウ糖や脂肪の代謝異常との関連が指摘されていて、
それが糖尿病における心不全の発症の要因でもある訳ですが、
こうした心臓の代謝を改善するような心不全の治療薬は、
実際には存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
リラグルチドを入院を要するような進行した心不全の患者さんに使用して、
その有効性と安全性をより厳密な方法で検証しています。

アメリカの24の専門施設において、
進行した心不全で入院した患者さんトータル300名を、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つのグループに分け、
一方はリラグルチドを1日1回皮下注射して、
もう一方は偽薬を注射して、
180日間の経過観察を行なっています。
リラグルチドは原則1回1.8ミリグラムまで増量します。
患者さんの年齢は中央値で60歳くらい。
左室躯出率は中央値で25%、
心不全の重症度の指標の1つであるNT-proBNPは2049pg/mLですから、
かなり進行した事例が中心です。

その結果…

観察期間中の死亡や心不全による再入院、
NT-proBNPの変動率の3つの指標について、
リラグルチド使用群と偽薬群との間で、
有意な差はありませんでした。

2型糖尿病の患者さんのみで解析しても、
矢張りリラグルチドの効果は確認されませんでした。

今回の結果においては、
リラグルチドは進行した心不全の「治療薬」としては、
明確な有効性を示せませんでした。

ただ、一時問題にされたような、
GLP-1アナログによる心機能への悪影響は否定的で、
心不全の進行予防としての効果は否定はされてはいないので、
トータルに2型糖尿病の患者さんにおいて、
その病態を改善し得る薬剤であるという可能性は、
最近の知見により更に高まっているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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