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第12回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

今日は告知です。

それがこちら。
12回健康教室.jpg
来月の9月17日(土)の午前10時から11時まで、
クリニック2階の健康スクエアにて、
第12回の健康教室を開催します。

テーマは「決定版インフルエンザの基礎知識」です。

10月1日から例年通りインフルエンザワクチンの接種が始まります。
ワクチンメーカーのトラブルなどの影響で、
今年のワクチンは昨年より流通量が減り、
そのため防腐剤を含まない1人用のシリンジタイプのワクチンは、
原則製造はされないようです。

そうした話題も含めて、
インフルエンザウイルスの感染の本質論から、
ワクチンの意義から限界まで、
テーマ自体はいつもより限定されている分、
幅広くかつ掘り下げて、
より充実した健康教室に出来ればと想を練っているところです。

参加ご希望の方は、
前々日(15日木曜日)の午後6時までに、
電話かメールでご予約下さい。

皆さんのご参加を、
心からお待ちしています。

よろしくお願いします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

脳トレは流動性知性を高めるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳トレのプラセボ効果.jpg
今年の7月のPNAS誌に掲載された、
脳トレーニングの流動性知性に対する効果を、
プラセボ効果によるものとして否定した論文です。

これも医療サイトなどで少し話題になっているものです。

脳トレと言うと、
日本では任天堂のものが有名で、
2005年頃にソフトが大々的に発売されて、
大ヒットを記録しました。

監修された先生も非常に有名になりましたが、
今では何となくフェイドアウト気味になっています。

1990年代に知性(知能)を、
結晶性知性(crystallized intelligence)と、
流動性知性(fluid intelligence)に分ける、
という考え方が生まれました。

これは元論文には当たっていないので、
孫引きでピンと来ない部分があるのですが、
結晶性知性というのは経験の中で積み重ねられたスキルや知識のことで、
流動性知性というのは、
新しい環境に対応して問題を解決するような能力のことのようです。

加齢によっても、
結晶性知性は低下しにくいのですが、
流動性知性は低下しやすく、
特に認知症においては、
その低下が顕著であると考えられています。

流動性知性というのは、
ある意味知性の本質に近いものですが、
遺伝で決まる部分が大きく、
あまり訓練で増進されるものとは、
考えられていませんでした。

それが2008年にびっくりするような論文が発表されます。
今回と同じPNAS誌です。
それがこちら。
脳トレの効果2008.jpg
この論文では、
少し前の図形の配置や音声を思い出す、
という形式の作業記憶に関する訓練を行うことにより、
短期間で流動性知性が改善された、
という画期的な結果が報告されています。

これはややトリッキーな感じの研究なのですが、
本来作業記憶のテストとは無関係な流動性知性を、
作業記憶のテストに置き換えるという手法を確立して、
それによる検討を行ったところ、
そのタスク自体を繰り返すことにより、
タスクの効率が短期間で改善したので、
それは流動性知性が改善されたことを意味している、
という内容になっています。

流動性知性というのは、
新たな環境に対応して問題を解決するような能力で、
通常「あの人は頭が切れる」と評価されるような状態のことです。
この能力は遺伝によってほぼ決定され、
思春期を過ぎた頃にはほぼ安定すると考えられています。

知識や反応であれば訓練により改善しても良いでしょうが、
流動性知性が簡単な訓練により改善する、
というのはにわかには信じ難いという気がします。

しかし、これが大々的に取り上げられたので、
少しでも賢くなりたいと思う多くの人が、
商品となった流動性知性を高めるという触れ込みの、
脳トレに飛びつきました。

販売した会社は多額の利益を上げました。

しかし、そんな上手い話が本当にあるのでしょうか?

これは単純に一種の暗示の効果なのではないか、
という批判は以前よりあり、
それを科学的に検証したのが今回の論文です。

やることはいたってシンプルで、
25名ずつのボランティアを用意し、
1時間の作業記憶のタスクを行います。
これは基本的に2008年論文と同じものです。
その時一方(プラセボ群)では、
タスクを行う前に、
「こうした訓練により流動性知性が改善する」
という紙を見せて説明し、
コントロール群では同じような紙を見せますが、
そこには知性改善というような効果は記載されていません。

すると、
1時間のタスク終了後、
プラセボ群のみで流動性知性の指標は増加し、
IQテストの数値も5から10ポイント増加しました、
そうした反応はコントロール群では認められませんでした。

つまり、
流動性知性の改善と思われたものは、
「これをすれば頭が良く成るよ」
という暗示で再現が可能な現象に過ぎなかった、
ということになります。

この結果は敢くまで作業記憶のタスクに関してのもので、
他のタイプの脳トレにも拡大可能なものではありませんが、
どのような脳トレを行うにせよ、
訓練によりそのタスク自体は改善しますが、
それは脳全体の機能とはあまり関連はなく、
賢さの本質的な部分というのは、
不公平で切なくなりますが、
矢張り多くの人が直感的に感じているように、
生まれつきほぼ定まっている性質のもののようです。

また、見方を変えれば、
暗示の効果というのは、
短時間でIQをワンランク引き上げるほど凄まじく、
不良高校生がカリスマ教師の指導により、
短期間で一流大学に合格した、
というようなドラマも、
そうしたメカニズムからは、
意外に筋が通っているようにも思います。
そうした意味での人間の「やる気」の可能性というものは、
潜在的にかなりの力を持っていることもまた、
確かなようです。

哀れで不思議で、
何処か物寂しい感じもするのですが、
人間というものは、
結局暗示とやる気で変わるのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

吹奏楽器による過敏性肺炎の発症について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
台風の影響で、
朝から雨が急に降ったり止んだりと、
不安定な天気になっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
バグパイプによる過敏性肺炎.jpg
今月のThorax誌に掲載された、
バグパイプの使用により誘発されたと思われる、
過敏性肺炎の症例報告の論文です。

内容が興味深いため、
ケースレポートに過ぎないものですが、
複数の医療ニュースなどに紹介されていました。

過敏性肺炎というのは、
一種のアレルギー反応により引き起こされる肺炎のことです。

カビや化学物質、
キノコの胞子や動物の糞便などに含まれる蛋白質などが、
アレルギー反応の原因となる抗原となり、
そうした物質を繰り返し吸入することにより、
身体が感作されると、
その後同じ抗原を吸い込むことにより、
肺にアレルギー性の炎症が起こります。

たとえば、カビが原因と言っても、
カビが肺の中で増殖して炎症を起こすのではないのです。
カビの抗原に対して、
身体が過剰反応を起こし、
免疫が過剰に反応することにより、
「アレルギー性の炎症」を起こすのです。

肺炎ですので、
肺のレントゲンやCTを撮ると、
すりガラス様と表現される淡い陰影が検出されます。

過敏性肺炎の原因抗原としては、
日本では「夏型過敏性肺炎」と言って、
古い日本家屋などでトリコスポロンというカビによるものが有名で、
鳩やインコなどの鳥の糞が原因で、
飼っているご家庭で発症するものもあります。

総じて、
原因となる抗原が判明して、
そこから離れる環境が維持されれば、
病状は改善しますが、
抗原と触れ続けるような環境では、
病状は悪化して呼吸困難が進行し、
別の感染などを併発して命に関わることもあります。

今回の論文で紹介されている事例は、
61歳のイギリスの男性で、
長年に渡り過敏性肺炎と診断されて、
ステロイドを主体とする治療を継続していましたが、
病状が悪化して、
結果的には亡くなられたケースです。

この方はバグパイプを趣味としていて、
毎日その演奏をしていました。
結果的には予後の改善には結び付かなかったのですが、
バグパイプの中の培養から、
複数のカビの抗原が同定されました。

これは推測ですが、
オーストラリアで生活していた時期に、
著名に症状が改善していて、
その時にはバグパイプは使用していなかったため、
バグパイプ内のカビの抗原による、
過敏性肺炎と診断されました。

バグパイプに起因する過敏性肺炎の報告は、
上気論文によればこの1例のみですが、
他にトロンボーンとサキソフォン奏者における、
同様の事例が報告されていて、
そのケースはどちらもステロイドの投与と、
当該の楽器の消毒と洗浄により、
病状は改善しています。

個人的な経験では、
尺八を趣味にしている男性で2例、
慢性の呼吸困難や咳嗽の事例を診たことがあり、
その当時は関連を意識していませんでしたが、
ひょっとしたら同様のケースであったかも知れません。
その方々も、
何故か尺八の演奏を繰り返している発表会の前などの時期に、
病状の悪化をみていたからです。

このように、
決して報告の多い訳ではないのですが、
楽器演奏と呼吸器症状というのは、
盲点の部分があり、
実際にはこうした事例はもっと多いのかも知れません。
通常吹奏楽器の演奏は、
むしろ肺活量を増し、
呼吸器疾患のある方では推奨されることなので、
それで実は悪化していても、
気づかないケースが多いのでは、
と考えられるからです。
また、間違いなく吹奏の楽器の内部は、
カビの繁殖には適している環境でもあるからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「娼年」(作 石田衣良 脚本・演出 三浦大輔) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の演劇の記事になります。

それがこちら。
娼年.jpg
石田衣良さんの「娼年」と「逝年」を、
ポツドールの三浦大輔さんが戯曲化して演出し、
松坂桃李さんと高岡早紀さんが主演した、
見てビックリの舞台が、
今池袋の芸術劇場プレイハウスで上演されています。

三浦大輔さんは最近は舞台から、
映画などに軸足を移していて、
ポツドールのような活動はもうされないようですが、
今回はまあ期待された過激さを演じている、
という感じはあるもの、
ほぼ全編セックス描写のみが連続する、
という作品を臆面もなく上演していて、
普段は裸にはまずならないような役者さんが、
ほぼ全裸で次々と絡みを演じ、
勿論偽物ではありますが、
実際にザーメンが飛び、女性が放尿し、
フェラチオの効果音まで流れるという、
空いた口が塞がらないような作品になっています。

ストーリーラインはそれでいて、
正攻法の純愛と難病と少年の成長物語として成立していて、
後味は決して悪くはありません。

それほど舞台は出ていない映像のスターに、
何もこんな芝居をさせなくてもいいじゃないか、
という気はしますし、
これを本当に三浦さんがやりたいのだとすれば、
もっと小さな劇場で、
名前のそれほど知られていない役者さんでやった方が、
より完成度の高い伝説的な芝居になったのではないか、
という気もします。
劇場は大きすぎ、立派過ぎて、
客席の雰囲気も含めて、
今回のような煽情的な芝居を上演するには、
かなりの違和感がありました。
僕は2階の最前列での鑑賞だったので、
全体像を観ることが出来ましたが、
客席によっては、
「何をしているのか分からない」
という感じもあったのではないかと思います。
隠すところは隠さないといけないので、
死角が多く、
観客に不親切な舞台ではあったと思います。

ただ、前例のない作品であることは間違いがなく、
小劇場の劇団の多くが、
性を主題にした作品をしばしば上演していながら、
レオタードや露出の少ない衣装で、
腰の引けた絡みを演じている中で、
プロの凄みを見せたと言っても良いと思います。

内容は意外にオーソドックスで、
セックスシーン以外の場面の芝居も、
極めて普通に演出されています。
これはポツドール時代の三浦さんとは違いのあるところで、
かつては新劇的な芝居を拒絶するようなところがあったのですが、
今回は絡み以外は極めてオーソドックスで教科書的です。
破天荒なようで、
その辺のバランス感覚はなかなか的確だ、
という印象を持ちました。

メインのセックスシーンが、
作品として成立しているかというと、
それはかなり微妙なところで、
役者さんもこうした芝居は初めての人が多く、
何かたどたどしくぎこちない感じはあります。
こちらが気恥ずかしくなるような感じもあります。
腹を括ってセックスを主題にするのであれば、
もっと別の方法論もあり得たのではないか、
という気もしますが、
この気恥ずかしさが、
三浦さんの持ち味である、
という思いもあります。

そんな訳でかなり趣味的な作品なので、
とても一般の方にお勧め出来るような芝居ではありませんが、
三浦さん以外では、
まず絶対になしえなかった作品であることは間違いがなく、
再演なども間違いなくされないと思いますので、
ご興味のある方は一見の価値はあると思います。

怪作です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

劇団☆新感線「ヴァン!・バン!・バーン!」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ヴァン・バン・バーン2.jpg
劇団☆新感線の新作秋興業が、
生田斗真さんをゲスト主役に迎え、
赤坂ACTシアターで賑々しく上演されています。

今回の脚本は宮藤官九郎さんで、
3回目の新感線への脚本提供になります。

前回は「蟷螂峠」という、
物凄く暗い時代劇で、
あまり新感線の世界にフィットしているとは思えませんでした。
その前に「犬顔家の一族の陰謀」という作品があり、
これはクドカンワールド全開という感じの、
楽しい作品でした。
交流は深いと思われるクドカンと新感線ですが、
意外にクドカン台本の新感線の舞台は、
多くはありません。

今回は内容的にはいのうえ歌舞伎の世界に近いもので、
平安時代のパートはもろそうなのですが、
その後現代が舞台になると、
ビジュアルバンドの演奏や夏フェスなどの歌物の世界になり、
またそこにヤクザの抗争劇などが絡み、
最後は得意の長大な立ち回りが待っています。

背景に複数の巨大なLEDパネルを交差させ、
ダンスや殺陣とバンド演奏、
ど派手な音響や照明効果が一体となり、
計算され尽くした演出は、
さすが新感線というクオリティです。

ただ、人間の移動などはあまりに計算され過ぎていて、
演劇というより、オリンピックの開会式のような、
大イベント的な演出でした。
手作り感はあまりなく、無機的な印象で、
役者さんも段取りの動きにとらわれている感じがありました。

内容は盛り込み過ぎで、
ディテールに面白みが乏しく、
人物が入り乱れて筋立てが複雑な割には、
ダラダラと長い場面が多い、
という印象でした。

主人公は初恋の人の生まれ変わりを、
1000年待ち続ける吸血鬼で、
ビジュアルバンドのボーカルという設定なのですが、
そこにエイリアンの侵略みたいなテーマを絡ませているので、
悲恋の切ない感じや、
死ぬことの出来ない吸血鬼の悲しみのようなものは、
何処かに消えてしまっています。

クドカンとしては珍しく、
ラストに伏線が回収されるようなところがなく、
中途半端に思いつきだけで終わってしまった、
という感じでした。
意外に新感線の世界とクドカンとは、
相性が悪いのかも知れません。

スタッフワークの完成度は高いので、
何となく見れてはしまうのですが、
今回は新感線としては、
消化不良に終わった1本であったように思います。
生田斗真さんは頑張っていましたが、
役柄がちょっと間抜けな感じなので、
損な役回りに終始していたのは残念に感じました。
概ね歌ものはそんな感じになりますね。

今日はもう1本演劇の記事があります。

引き続きそちらもどうぞ。

石原がお送りしました。

新海誠「君の名は。」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
終日石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
君の名は。.jpg
新海誠監督の新作アニメで注目度の高い、
「君の名は。」を初日に観て来ました。

これは確かに感動的で美しい力作で、
僕は1人で観に行って、
両側は女の子の2人連れだったので、
とても恥ずかしかったのですが、
物語の骨格が現れる中段から涙が止まらず、
最後までオイオイ泣いてしまいました。

「なにこのオヤジ泣いてやがる」
と思われるのは嫌だったので、
鼻を啜る音を必死で止めていました。
これは出来ればもう少し空いている時に、
両側は空席の映画館で、
思い切り泣きたかったと思いました。

これはテーマの勘所はネタバレをしていないので、
予告編だけを見ると、
都会の男子高校生と、
田舎の女子高校生が、
夢の中で何度も入れ替わる、
という話のように思えて、
「なんだい、時代遅れの転校生かい。随分古めかしいな」
と思ってしまうのですが、
それは実は導入に過ぎなくて、
○○テーマであったことが中段で分かります。
そこから先はもう、涙涙の展開なのです。

映像の美しさは勿論特筆もので、
かつ幻想的な場面では、
新しい試みが幾つもされています。

暗転というかブラックアウトを上手く活かしていて、
そのため映画館で観ないと、
その魅力が十全には伝わらない作品になっています。
この辺りは大林宜彦監督の「時をかける少女」にも似ています。

ラストは観終わって冷静になると、
大甘過ぎるという気もするのですが、
観ている間は心が震えているので、
そんなことは気になりません。

そして、ある意味こうした奇跡でもなければ、
今の世の中で生きていくことは出来ないようにも思います。

その意味でこの映画はまさに現代の日本の映画で、
今生きている若い世代にエールを送る映画です。
こうした希望という名前の奇跡を用意するために、
捨石になることが、
僕達の世代の使命であるのかも知れません。

どうか是非、先入観なく映画館に足をお運びください。

その価値は充分にあると思いますし、
少しだけ心が洗濯された気分で、
すれた中年も感動させてくれる映画であることは、
間違いがないからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ピオグリタゾンと膀胱癌リスク(2016年ヨーロッパ4カ国疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピオグリタゾンと膀胱がん(ヨーロッパ4カ国調査).jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
糖尿病の治療薬と膀胱癌との関連についての論文です。

この話題についてはこれまでも何度か記事にしています。

ピオグリタゾン(商品名アクトスなど)は、
インスリンの効きを良くする薬として、
むしろ国外でその評価が高く、
欧米のガイドラインにおいても、
メトホルミンに次ぐ第二選択くらいの位置にあります。

ただ、この薬の大きな問題は、
発売当初から、
膀胱癌のリスクを上昇させるのでは、
という危惧があったということです。

これはまず発売前の動物実験において、
オスのラットの膀胱癌の発症が増加した、
という知見から始まっています。
ただ、メスのラットではそうした結果はなく、
同じネズミの仲間であるマウスでも再現されませんでした。

2003年にアメリカのFDAは、
ピオグリタゾンによる膀胱癌の発症について、
発売後10年間の観察研究を指示しました。

その5年間の時点での中間解析の結果では、
トータルにはピオグリタゾンの使用と、
膀胱癌の発症との間には、
有意な関係は認められませんでした。
ただ、2年を超えて使用している患者さんに限ると、
1.4倍という若干ですが有意な、
膀胱癌リスクの増加が認められました。
この結果を受けてFDAは、
ピオグリタゾンのラベルに、
その点の記載を求めています。

その観察研究をより延長し、
平均で7.2年の解析を行なった結果が、
昨年のJAMA誌に発表されていて、
その時点で一度記事にしています。
ここでは膀胱癌のみではなく、
全部で10種類の癌のリスクが解析されています。

193099名の膀胱癌の患者さんが対象となり、
そのうちの18%に当たる34181名が、
ピオグリタゾンを使用していました。
平均の使用期間は2.8年です。
幾つかの別個の解析を行なった結果として、
ピオグリタゾンの使用者では、
若干膀胱癌の発症率が高い傾向がありましたが、
その差は有意なものではありませんでした。

従って、どうもこの問題は、
あまりクリアな形で結論には至っていないのです。

今年のBritish Medical Journal誌に、
イギリスのプライマリケアのデータベースを利用した、
この問題についての、
また新たな検証結果が報告されています。

ここでは、
新たに2型糖尿病の治療を開始した145806名を対象として、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌の発症との関連性を検証しています。
観察期間中に622名の膀胱癌の患者さんが新たに診断され、
その全体での発症率は年間10万人当たり90.2件であったのに対して、
ピオグリタゾンを使用している患者さんでは、
年間10万人当たり121.0件で、
それ以外の治療薬を使用している患者さんと比較して、
1.61倍(1.22から2.19)有意にそのリスクは増加していました。
同系統の別種の治療薬で、
現在アメリカ以外では殆ど使用されていないロシグリタゾンでは、
例数は少ないのですが、
有意な増加は認められませんでした。

つまり、このイギリスの統計では、
矢張り僅かながら膀胱癌リスクの増加が示唆されました。

さて、前置きが非常に長くなりましたが、
今回の論文の話になります。

今回はヨーロッパのフィンランド、オランダ、
スウェーデン、イギリスの4カ国の医療データを用いて、
再びこの問題についての大規模な解析を行なっています。

対象となっているのは2型糖尿病でピオグリタゾンを使用開始した、
56337名の患者と、
同じ糖尿病でピオグリタゾン以外の投薬を受けている、
トータル317109名の患者さんで、
条件を調整した幾つかの比較を行なっています。

その結果、
多数例の解析において、
ピオグリタゾンを使用している患者さんと、
未使用の糖尿病の患者さん、
そして以前ピオグリタゾンを使用していた患者さんの、
いずれにおいても、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌の発症との間には、
有意な関連は認められませんでした、
またピオグリタゾンの使用期間や累積の使用量と、
膀胱癌のリスクとの間にも、
有意な関連は認められませんでした。

今回のデータは、
これまでで最もクリアに、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌のリスクとの関連性を否定したもので、
最近のデータの傾向をみると、
少なくともピオグリタゾンを、
膀胱癌との関連をもって、
適応の患者さんでも使用を控える、
という判断は、
あまり根拠のないものになりつつあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

PTHrP誘導体アバロパラチドの骨折予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アバロパラチド.jpg
今月のJAMA誌に掲載された、
新規の骨粗鬆症治療薬アバロプラチドの、
骨折予防効果を検証した論文です。

骨粗鬆症の患者さんは、
背骨の圧迫骨折や大腿骨頸部骨折に受傷して、
初めて骨粗鬆症と診断されるというケースが多く、
そうした場合には骨折受傷から1年間が最も再骨折のリスクが高く、
その後も5年間はリスクの高い状態が持続することが知られています。
初回骨折後の骨折のリスクは、
そうでない場合の2倍に達します。

それでは骨折後に、
最も再骨折の予防に有効な骨粗鬆症の治療は何でしょうか?

骨粗鬆症の治療薬として、
今最も頻用されているビスフォスフォネートは、
基本的に骨吸収を抑える薬で、
骨形成を促進するというタイプの薬ではありません。

骨折後には、
理屈から言って骨吸収を抑える薬より、
骨形成を促進する薬の方が、
より理に適っているのではないかと思われますが、
そうした薬剤はこれまであまりありませんでした。

唯一副甲状腺ホルモン(PTH)の注射薬があり、
テリパラチド(商品名フォルテオ)と、
テリパラチド酢酸塩(商品名テリボン)があります。
テリボンは週1回の注射なので、
日本ではこちらが多く使用されています。
この副甲状腺ホルモンは、
特に皮質骨の骨形成を強力に促進する作用を持っています。

さて、まだ日本では発売されていない新薬として、
これ以外にアバロパラチドという注射薬があります。

このアバロパラチドは、
副甲状腺ホルモン(PTH)ではなく、
副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の誘導体です。

PTHrPというのは、
PTHの受容体の1型に結合する、
PTHとは少し構造の異なる物質で、
生体内にも微量は存在しますが、
特に癌細胞で多く産生され、
癌の合併症として生じる高カルシウム血症の、
主な原因として想定されている物質です。

2型のPTH受容体にはPTHrPは結合せず、
1型のみに結合してその作用を現しますが、
その結合はPTHよりも強く、
かつ持続は短いという特徴があり、
こうした性質からは、
PTHよりもむしろ骨粗鬆症の骨折予防には、
向いているという見解もあります。

そこで今回の研究では、
アバロパラチドの第3相臨床試験として、
5年以内の背骨の骨折の既往のある、
閉経後骨粗鬆症の患者さん2463名を、
世界10カ国の28の専門施設で登録し、
くじ引きで3つのグループに分けると、
第1群は毎日偽薬の注射を行い、
第2群は毎日アバロパラチド80μgの注射を行い、
第3群はテリパラチド20μgの注射を行なって、
18ヶ月の経過観察を行います。
このうち偽薬やアバプラチドかは、
本人にも主治医にもどちらかは知らされませんが、
テリパラチドの効果は明確であるため、
その使用については伏せられていません。

その結果…

偽薬では4.2%に背骨の再骨折が生じたのに対して、
アバロパラチド群では0.6%、
テリパラチド群では0.8%の再骨折に留まり、
明確に薬剤の使用により再骨折は予防されていました。
アバロプラチドは偽薬と比較して、
背骨の骨折の再発を86%有意に抑制していました。

一方で背骨以外の骨折については、
偽薬群で4.7%に認められたのに対して、
アバロパラチド群では2.7%、
テリパラチド群では3.3%と、
こちらは背骨ほどではなく、
有意差はありませんでしたが、
薬剤の使用により骨折は抑制される傾向を示しました。

このように、アバロプラチドがテリパラチドに匹敵する、
骨粗鬆症の患者さんの再骨折予防効果を示すことは間違いがありません。

ただ、今回の研究ではテリパラチドの使用は伏せられていないため、
テリパラチドと比較してアバロプラチドがより骨折予防に有効、
という結果は得られておらず、
今回のデータを観る限りは、
差はあるとしてもそれほどのものではなさそうです。

アバロプラチドとテリパラチドをどのように使い分けるべきかについては、
今後の検証を待たないといけないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

原発性胆汁性胆管炎に対するオベチコール酸の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事の予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
原発性胆汁性胆管炎に対するオベチコール酸の効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
胆道の病気に対する新薬の効果を見た臨床試験の論文です。

原発性胆汁性胆管炎という病気があります。
これは自己免疫疾患の一種で、
肝臓の中の小さな胆管に、
リンパ球系の炎症が進行性に起こり、
肝硬変や肝不全に移行することもある、
という難病の1つです。

以前は原発性胆汁性肝硬変(PBC)と呼ばれていましたが、
元々小さな胆管に起こる病気で、
肝硬変になる方は比率的には少ないので、
2015年に国際的な取り決めにより、
原発性胆汁性胆管炎という病名に変更となりました。
ただ、難病指定されている関係もあり、
日本ではまだ原発性胆汁性肝硬変という病名も使用されています。

この病気の根本的な治療は未だありませんが、
1991年にウルソデオキシコール酸(商品名ウルソなど)という胆汁酸の一種に、
この病気による検査値を改善する効果のあることが発表されました。
臨床報告自体は1980年代よりあり、
それが精度の高い臨床試験により確認されたのです。
New England…誌に載ったその文献がこちらです。
PBCへのウルソの効果.jpg
文献によれば2年間のウルソの使用(体重kg当たり13から15ミリグラム)により、
偽薬と比較して病状や検査値にはトータルな改善が認められました。

その後も同様の研究結果が複数報告され、
ウルソデオキシコール酸は原発性胆汁性胆管炎の、
標準治療となりました。

ただし、病気の性質上、
肝硬変に以降する患者さんが明確に減ったり、
生命予後が明確に改善した、
というような結果は殆ど得られませんでした。
また、4割の患者さんでは、
この治療による充分な反応は認められませんでした。

つまり、ウルソデオキシコール酸の治療が、
不充分な場合の別の治療が必要なのです。

その1つの候補として注目されているのが、
今回の論文で取り上げられている、
オベチコール酸です。 

胆汁酸は脂肪の消化吸収を助ける作用を持つ物質ですが、
最近の研究により、細胞核の核内受容体である、
FXRという受容体に結合して、
様々な細胞応答を行なう、
という別個の作用も持っています。

このFXRを強く活性化する胆汁酸として誘導された物質が、
オベチコール酸です。

ウルソデオキシコール酸の原発性胆汁性胆管炎に対する効果も、
その一部はFXRを介したものと想定されていますから、
オベチコール酸はより高い有効性が想定されるのです。
そして、既に非アルコール性脂肪肝炎においても、
一定の有効性が確認されています。

今回のオベチコール酸の第三相臨床試験においては、
ウルソデオキシコール酸で効果の不充分か副作用などのために使用が困難な、
原発性胆汁性胆管炎の患者さん217名を、
患者さんにも主治医にも分からないように3つの群に分け、
第1のグループは1日10ミリグラムのオベチコール酸を使用し、
第2のグループは1日5ミリから10ミリグラムのオベチコール酸を使用し、
第3のグループは偽薬を、
ウルソを使用していればそれに上乗せの形で、
12ヶ月の継続使用を行なっています。
全体の93%ではウルソが使用されていました。

比較のポイントは、
ALPという数値が最低でも治療前から15%低下して、
正常上限の1.67倍未満となり、
総ビリルビンが正常となることを有効としています。

治療により有効と判定されたのは、
オベチコール酸5から10ミリグラム群では46%で、
10ミリグラム群では47%であったのに対して、
偽薬では10%に留まっていました。
非侵襲的な肝臓の線維化の指標には、
3群間で有意な差は認められませんでした。

有害事象ではかゆみはオベチコール酸の使用で頻度が高く、
重篤な有害事象もオベチコール酸の使用で高かったのですが、
心不全や肝不全に伴う症状が多く、
あまりオベチコール酸の使用と、
因果関係が想定されるものはありませんでした。

今回の臨床試験では、
確かに一定の上乗せ効果がオベチコール酸には認められています。

ただ、実際には有効であったのは半数以下に留まっていて、
関連は明確ではないとは言え、
全体に有害事象が多くなっている、
という点にも注意が必要です。

今後日本においても、
オベチコール酸は使用されることになると思いますが、
どのような事例に対してこの薬を使用するかどうかは、
まだ今後の知見の蓄積を、
待つ必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

非機能性副腎腫瘍と糖尿病のリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ノンファンクショニングアデノーマと心血管疾患リスク.jpg
今月のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
ホルモン分泌が確認出来ないタイプの副腎腫瘍と、
糖尿病や心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

副腎腫瘍には、
アルドステロンを分泌する原発性アルドステロン症や、
ステロイドを分泌するクッシング症候群、
カテコールアミンを分泌する褐色細胞腫などの、
ホルモン産生腫瘍があることが知られていますが、
比率から言うと、
副腎腫瘍の多くはホルモンの過剰な産生を確認出来ない、
非機能性の腫瘍です。

腹痛などの時や人間ドックなどの時に、
お腹のCTやMRIを撮るという機会が増えたので、
偶然に副腎腫瘍が診断されるというケースが増えました。

これまで報告された統計によれば、
人口の1から10%は副腎腫瘍を持っていて、
その比率は高齢になると増加します。
ホルモン産生腫瘍と診断されるものは、
その極一部なのですが、
一方で非機能性副腎腫瘍の約10%では、
臨床的にクッシング症候群と診断はされないレベルの、
軽度のステロイドホルモン(糖質コルチコイド)を分泌している、
という推計が存在しています。

この軽度のホルモンの過剰や日内変動の乱れは、
健康上に何か有害な作用を持つのでしょうか?

その根拠は現時点では明確ではないのですが、
少数例での検討としては、
コントロールと比較して非機能性副腎腫瘍を持っている人で、
インスリン抵抗性などの、
心血管疾患のリスクが高い傾向が認められた、
というものがあります。

確かに軽度のステロイドの過剰であっても、
糖質や脂質の代謝異常の要因となり、
心血管疾患や糖尿病のリスクになることは想定が可能です。

今回の研究ではアメリカの医療機関グループのデータを活用して、
腹部のCTもしくはMRIで副腎腫瘍の有無を同定可能な被験者を登録し、
166名の非機能性副腎腫瘍と診断された患者さんを、
副腎腫瘍のない740名のコントロール群と比較して、
最低でも3年間の経過観察を行い、
腫瘍の有無と心血管疾患や糖尿病のリスクとの関連を検証しています。

その結果…

副腎腫瘍のない人と比較して、
非機能性副腎腫瘍のある患者さんでは、
糖尿病の発症リスク(2型糖尿病と前糖尿病状態との合算)
が1.87倍(1.17から2.98)有意に増加していました。
前糖尿病状態(HbA1cが5.7から6.4%)のリスクも、
副腎腫瘍のある患者さんで、
3.19倍(1.83から5.59)有意に増加していました。
一方で高血圧や脂質異常症、
心血管疾患や慢性腎臓病のリスクには、
有意な増加は認められず、
2型糖尿病のみのリスクも有意な増加は示していませんでした。

ここでステロイドホルモンの数値は、
デキサメサゾン抑制テストにより正常に抑制されるものの、
尿中の遊離コルチゾールが正常より高めのものを、
潜在性ステロイド過剰症と定義すると、
非機能性副腎腫瘍よりも、
潜在性ステロイド過剰症における糖尿病発症リスクは、
より高いことが確認されました。

要するに、
非機能性副腎腺腫の中には、
軽度ではあれステロイドホルモンの過剰分泌が、
存在している事例が多いので、
何もない人よりは、
糖尿病の発症リスクが高いということが想定されるのです。

仮にそうであるからと言って、
抜本的に原因を治療する方法はないので、
臨床的には難しいところですが、
ホルモン産生はない副腎腫瘍とは考えられても、
糖尿病の発症リスクは高い可能性を想定して、
定期的な血糖やHbA1cのチェックは、
しておくと共に、
生活改善には日々留意する必要はありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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