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アポEの遺伝子変異と小児脳の発達との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アポEの遺伝子変異と脳の発達.jpg
今年のNeurology誌に掲載された、
認知症のリスクとして知られている遺伝子変異と、
小児の脳の発達との関連についての論文です。

アルツハイマー型老年認知症の発症要因として、
アポEという遺伝子の変異は、
最も広く知られているものです。

アポリポ蛋白というのは血液中で脂質を運ぶ働きを持つ蛋白質で、
アポEは脳の神経細胞への脂肪の取り込みを、
1つの大きな役割にしています。

このアポEにはε2とε3、
そしてε4という3種類の遺伝子のタイプ(アレル)があり、
このうちε4という遺伝子を持っていると、
アルツハイマ-病になるリスクが増加する、
ということが知られています。

このε4の遺伝子を1個持っていると、
持っていない人と比較して、
将来アルツハイマー病になる確率が3倍になり、
2つ持っていると10倍以上になる、
というデータが報告されています。

最近このアポEの遺伝子型と、
脳の発達や成長などにも関連がある、
というデータが複数報告されています。

そこで今回の研究では、
小児の脳神経の発達成長の疫学データを活用して、
脳のMRI所見と遺伝子型の分析を対比させることによって、
アポEの遺伝子多型と、
脳の発達との関連性を検証しています。

対象は登録時に3歳から20歳の健康な小児1187名で、
MRIにて脳構造の詳細な検証を行い、
アポEεの6つの遺伝子型との相関を計測しています。

その結果…

アポEのε4の遺伝子を持っているお子さんの中でも、
そのタイプにより脳構造の特徴は様々で、
ε2ε4のタイプが海馬の容積は最も小さく、
7歳未満のε4ε4のタイプでは、
脳の正常な機能の1つの指標と考えられる、
異方性比率(fractional anisotropy; FA)という数値が、
右の海馬において最も低値を示していましたが、
それ以降はその差は消失していました。

ε3ε4のタイプでは眼窩前頭皮質が最も大きく、
年齢に伴う嗅内皮質の菲薄化は、
ε4ε4のタイプで最も顕著に認められました。

7歳までのε4ε4のタイプでは、
実行機能と作業記憶の機能が他のタイプに比べ低く、
8歳以上ではその差は見られなくなります。
また9歳までのε2ε4のタイプでは、
集中を要するような作業の効率が最も低かったのですが、
10歳以降ではそうした傾向はなくなっていました。

つまり、
大きな括りで言うと、
ε4ε4とε2ε4というアポEの遺伝子型においては、
小さなお子さんの時期から、
その脳の発達においての違いが存在しているようです。

ただ、その違いの多くは、
年齢と共に小さなものとなり、
概ね10歳以降においては差が見られなくなっています。

アポEの遺伝子変異は、
脳の成長発達の一種の遅延と、
アルツハイマー病の発症リスクとに、
共に関わっているという意味で非常に興味深く、
今後のデータの蓄積を注視して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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