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心不全のうつ病治療に対する抗うつ剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
レクサプロの心不全合併うつへの効果.jpg
先月のJAMA誌に掲載された、
うつ病の治療薬を心不全に合併したうつ病に使用した場合の、
患者さんの生命予後を検証した論文です。

うつ病は様々なストレスを契機として発症することがあります。

そして、心不全のような慢性の病気は、
それ自体がストレスですから、
そうした病気とうつ病とが合併しやすいというのは、
必然と考えるべきかも知れません。

ある統計によれば、
心不全にはその10から40%にうつ病が合併し、
心不全の状態が重症であるほど、
その合併の頻度は増加しているようです。

一方でうつ病を合併した心不全は、
その予後が悪い傾向のあることも報告されています。

こうした関連があるとすれば、
うつ病を治療することにより、
心不全の予後にも、
良い影響があるのではないか、
という推測が成立します。

ただ、たとえば抗うつ剤でうつ病を治療するとして、
心不全のような内臓疾患が存在していると、
薬剤の副作用な有害事象も出やすく、
それが患者さんの予後に悪影響を与える可能性も考えられます。

それでは、
うつ病を合併した心不全の患者さんに対して、
抗うつ剤による治療を行なうことは、
その患者さんの予後において、
有用性がある治療なのでしょうか、
それともそうではないのでしょうか?

これまでに心不全の患者さんに抗うつ剤を使用する、
偽薬を使用するような厳密な臨床試験は、
セルトラリン(商品名ジェイゾロフトなど)を用いた試験が1つあるのみで、
その試験の結果は偽薬と比較して、
うつ病の有意な改善は認められていませんでした。
ただ、この試験の治療期間は12週間で、
生命予後などについての検証には充分なものではありませんでした。

そこで今回の研究では、
うつ病を合併した心不全の患者さんに対して、
エスシタロプラム(商品名レクサプロ)という抗うつ剤を使用して、
その効果を偽薬と比較して、
24ヶ月の経過観察を行なっています。

対象者は左室の躯出率が45%未満という、
かなり重い心不全の患者さんトータル372名で、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は抗うつ剤のエスシタロプラムを1日10から20ミリグラムを使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
24ヶ月という長期の経過観察を行なっています。

中途でほぼ結果が確定したため、
予定より早く18ヶ月程度で試験は終了となりました。

その結果、
偽薬群も抗うつ剤群も、
いずれも経過と共に
うつ状態の指標は改善しましたが、
両群で有意な違いはありませんでした。

そして患者さんの生命予後や入院のリスクについても、
両群で有意な差は認められませんでした。

つまり、
エスシタロプラムを心不全に合併したうつ病に使用しても、
生命予後に悪影響を与えるようなことはなさそうですが、
心不全の予後においても、
うつ状態の改善においても、
あまり有効性は期待は出来ないようです。

勿論この結果から、
心不全の患者さんに対して抗うつ剤を使用することが、
全て誤りと言うことは出来ませんが、
重度の心不全においての抗うつ剤の使用に、
明確な効果があるというデータはない、
という現状は知っておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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