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クッシング病の長期予後について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
クッシング病の予後.jpg
今月のLancet diabetes & endocrinology誌に掲載された、
クッシング病の長期予後についての論文です。

クッシング病というのは、
脳の下垂体という場所に腫瘍(腺腫)が出来て、
そこから副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌されるため、
それにより副腎が刺激されて、
ステロイドホルモンが過剰に産生される、
という病気です。

クッシング病ではステロイド(糖質コルチコイド)が過剰になるため、
手足は細く、身体の中心に脂肪が集まるタイプの肥満になり、
顔は丸くなって赤ら顔になります。
血圧は上昇して血糖値も上昇し、
インスリン抵抗性のため動脈硬化は進行します。

この病気を放置すると、
動脈硬化性疾患による死亡リスクが、
増加することが分かっています。

このため、
通常下垂体の腫瘍を切除する手術が行われます。

ただ、下垂体の手術が困難なケースもあり、
そうした場合には両側の副腎を切除したり、
腫瘍が大きくて取りきれない場合には、
手術と放射線治療を併用することもあります。

手術のような治療をする目的は、
勿論患者さんの予後を改善することです。

ただ、腫瘍を切除してそのままステロイドホルモンが正常になる、
ということは実際にはそれほど多くはなく、
治療が成功すればホルモン値は低下することが多いので、
そうした場合には今度はホルモン剤の補充療法を行います。

つまり、治療を行なっても、
ステロイドホルモンの分泌は、
全く正常になる、
ということは通常はないのです。

それでは一体、
正常の場合と比較して、
どれだけ治療後のクッシング病の予後は改善しているのでしょうか?

このことは、
クッシング病の治療の必要性を考える上で、
非常に重要な情報となると思います。

今回の研究では、
イギリス、デンマーク、オランダ、ニュージーランドの専門施設において、
クッシング病と診断されて治療を受け、
ステロイドホルモンの過剰分泌が改善して、
最低でも10年は経過している患者さん、
トータル320名を中間値で11.8年観察し、
その生命予後を一般人口のコントロールと比較検討しています。

その結果…

患者さんの生存期間の中央値は、
登録時点からでは女性で31年、男性で28年で性差はなく、
治療時からの期間では約40年間(30から48)と、
良好な生命予後を示していました。

ただ、健常コントロールと比較すると、
総死亡のリスクは1.61倍(1.23から2.12)、
血管病変による死亡のリスクも2.72倍(1.88から3.95)と、
いずれも有意にクッシング病の治療後の患者さんで増加していました。
ただ、癌による死亡のリスクには、
そうした傾向は認められませんでした。
この生命予後の低下は、
クッシング病の治療法と関連を示していて、
下垂体腫瘍の切除手術単独で寛解の得られたケースでは、
その生命予後は一般コントロールと差はありませんでした。

つまり、
クッシング病を治療して、
ステロイドホルモンの過剰状態が改善すると、
その後の生命予後は基本的には良好です。
ただ、
通常副腎の切除などの治療を行なった場合には、
ステロイドホルモンの使用が継続されることになり、
自然のホルモン分泌とは異なる状態になるので、
健常者と比較すると、
心血管疾患のリスクは、
やや増加することが確認されました。

下垂体の腫瘍の切除が成功して、
その後のホルモンの補充も不要であるようなケースでは、
その予後は健常者とは変わらないと考えて良いようです。

今日はクッシング病の予後についての、
貴重な疫学データについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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