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「シン・ゴジラ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

体調最悪で1日臥せっていました。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
シン・ゴジラ.jpg
エヴァンゲリオンの庵野秀明監督による、
ゴジラ映画の正当的な新作を観て来ました。

これはゴジラという未曾有の「災害」に対峙する、
危機担当の人間達の対応に的を絞ったドラマで、
殆ど会議室とゴジラの大暴れとが、
並行して描かれ、
それ以外の要素は存在しない、
というユニークな映画です。

特に情報量が山盛りで怒涛の展開を見せる、
前半から中盤が優れていて、
ゴジラが鎌倉から上陸して、
都心に向かう辺りの臨場感は素晴らしく、
日本の怪獣映画もここまで来たか、
という心が震えるような感じがありました。

ただ、一旦ゴジラが止まってしまい、
人間側のゴタゴタだけが展開される後半は、
少しテンションが下がる感じになり、
最終作戦も、
あまり動きがなく、
意外性のある展開もないので、
少しボルテージが下がりました。

特撮は本当に頑張っていたと思います。
実際の東京にゴジラ出現、
というリアルさがあって、
最初に上陸するのが、
クリニックのある北品川なのですが、
本当に北品川に怪獣出現というリアルな感触があって、
これには非常に興奮させられました。

ストーリー的にも、
オタク世代が日本を救うのだという、
非常に明確な意思に満ちていて、
若干甘いところもあるのですが、
その志には素直に感動するような思いがあります。

勿論「単なる怪獣映画」なのですが、
それだからこそ到達した高みのようなものがあり、
待ったかいはあったと感じたのです。

なかなかお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~ [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ヒトラー、最後の20000年.jpg
ケラさんが古田新太さんと組んで、
下ネタも入れたナンセンスコメディを追求したシリーズの新作として、
「ヒトラー最後の20000年」が今本多劇場で上演中です。

このシリーズは好きで毎回観ています。

完全なネタバレはしませんが、
鑑賞予定の方は、
以下は鑑賞後にお読みください。

前作はただのナンセンスと思いの外、
原発事故を笑いのめすような、
かなり際どい作品でした。

今回もヒトラーで、
何か最近発言が多い政権批判ネタでもするのかしら、
中途半端にそういう感じなのは嫌だなあ、
と思っていたのですが、
実際の作品は完全なナンセンスコメディで、
時事ネタはありませんでした。

オープニングはいきなりの反則で開演という感じで、
とても楽しく観ることが出来ました。
それから1945年の天国(?)になるのですが、
そこもなかなか良い感じです。

ただ、その後アンネの日記をモチーフにした、
こじんまりした家族劇が主体になると、
正直かなりボルテージが落ちます。

日本人と黒人の親子が出て来て、
やや人種ネタで笑いを取ったりするのも、
どうかなあ、という感じがして乗り切れません。

「最後の20000年」というタイトルからは、
もっと壮大な時間を股に掛けるような感じを期待するのですが、
実際にはアンネの日記の時代に裸探偵がタイムスリップして、
ヒトラーを改心させてユダヤ人の虐殺を止めさせよう、
という話がメインになるので、
かなりこじんまりした感じになるのが面白くありません。
ヒトラーの実際の映像を出して、
無関係のテロップで笑わせよう、
というような趣向も、
ありきたりで乗れませんでした。

ラストはメタフィクション的になりますし、
蜷川さん追悼スペクタクル的な趣向もあり、
お客さんいじり的な部分もあって、
それなりに楽しめますが、
役者が素に戻るようなところまでは行かないので、
そこも少し食い足りない感じがしました。

役者さんは良かったと思います。

古田新太さんも生き生きとしていましたし、
大倉孝二さんの神様は、
最近の舞台では一番乗っていたように思いました。
賀来賢人さんがなかなかの好演でとぼけた味を出していました。

そんな訳でナンセンスに徹底した姿勢自体は、
とてもステキで良いなと思ったのですが、
せっかくヒトラーという、
最強のキャラを主人公として出していながら、
何かその強みを十全には活かしていないような、
モヤモヤした出来栄えになったいたことが、
少し残念に感じました。

ヒトラーをナンセンスな笑いに変えるのは、
矢張りかなりハードルの高い作業であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

パスタの摂取量と肥満との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
パスタとBMI.jpg
今月のNutrition & Diabetes誌にウェブ掲載された、
イタリアにおけるパスタの摂取量と、
メタボやBMIとの関連を検証した論文です。

現在最も健康面での良い効果が確認されている食事は、
地中海地方などで良く食べられている、
「地中海ダイエット」と称される食事スタイルです。

この食事の特徴は、
オリーブオイルとナッツを沢山摂ることと、
赤身の肉や乳製品、卵は摂らないことです。

これまでに多くの臨床試験が行われ、
この地中海ダイエットの継続により、
心血管疾患が予防され、
ダイエットにも良い影響のあることが確認されています。
この食事の特徴として、
ナッツの量とオリーブオイルの量が、
その効果と相関していることも確認されています。

さて、
地中海地方ではパスタの消費量も多く、
そのため地中海ダイエットでの炭水化物においては、
パスタの比率が多くなっていることが想定されます。

それでは、
地中海ダイエットにおけるパスタの摂取量は、
その効果とどのような関連を示しているのでしょうか?

今回の研究はイタリアにおいて、
2つの大規模な食事の疫学データを解析したものですが、
全体のカロリーに占めるパスタの摂取量が多いほど、
BMIは低く、
メタボの基準であるウエスト・ヒップ比も低い、
という関連が認められました。

勿論単純にパスタの消費量で比較すると、
体格が大きい方が消費量も多いのですが、
カロリーとの比率で比較すると、
パスタの消費量が少ない方が、
肥満や内臓脂肪の蓄積が多かったのです。

これで単純にパスタを沢山食べる方が内臓脂肪が溜まらない、
というようには言えないのですが、
健康上の評価が定まっている地中海ダイエットにおいて、
パスタの比率が大きいことも、
1つの構成要素である可能性はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

食後高血糖と死亡リスクとの関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
食後血糖と死亡リスク.jpg
これは2011年のDiabetes Care誌に掲載された、
食前血糖と食後血糖の、
糖尿病の患者さんの予後に与える影響を検証した論文です。

昨日食後血糖についてのガイドラインを概説しました。

その元になっている研究の1つがこちらです。

食前血糖と食後血糖、そしてHbA1cのうち、
どの指標が最も糖尿病の合併症リスクなどと、
強い関連を持っているのかについては、
いまだ議論のあるところです。

上記論文においては、
イタリアの単独施設において、
トータル505名の2型糖尿病の患者さんを登録し、
食前と各食後の血糖、そしてHbA1c値を全て測定。
その後14年間の経過観察を行い、
血糖値と心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症と、
死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果…

登録時の平均年齢が62歳くらいで、
長期の観察を行っているので、
観察期間中の全体の34.1%に当たる172件の心血管疾患が発症し、
全体の29.1%に当たる147名が亡くなっています。
食前食後の血糖値とHbA1c値と予後との関連を見ると、
食前血糖は心血管疾患や総死亡のリスクに関連しなかったのに対して、
食後血糖、特に昼食後2時間の血糖値と、
HbA1c値は、
それぞれ独立に心血管疾患と総死亡リスクの増加に、
関連していました。

このデータは単独施設のものですが、
個々の条件の血糖値と心血管疾患や死亡リスクとの関連を、
14年という長期間で検証した点が興味深く、
2型糖尿病の患者さんの経過観察においては、
HbA1cと昼食後2時間の血糖値を、
それぞれ目標に達することを,
もう少し考えた方が良いのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

食後血糖管理の目標値について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は食後血糖の話です。

糖尿病は血液のブドウ糖濃度である血糖値が、
通常より高い状態のことです。

2型糖尿病の場合、
まず食後の血糖値が上昇し、
そのピークが遅れると共にその変動幅が拡大、
その時点では食前血糖は正常範囲なのですが、
その後病状の進行と共に、
食前血糖も上昇する、
というのが通常の経過です。

血糖値は簡単に測定が可能で、
糖尿病の管理にとって、
最も重要な指標であることは間違いがありません。

ただ、その数値は食前後などで、
常に変動していて、
更にはストレスなどの外部環境の変動によっても、
その数値は変動するものなので、
どのような条件で血糖値を測定することが、
最も適格に糖尿病の状態の指標となるのか、
という点については、
まだ議論の余地を残しています。

現在血糖コントロールの状態を把握する上で、
最も広く使用されている検査は、
HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)です。

この数値は大体2か月くらいの平均の血糖値を反映している、
というように考えられ、
血糖値より正確な、
血糖コントロールの指標として使用されています。

しかし、
稀にHbA1cが血糖を正確に反映していないように、
思われるケースもあります。
また、この数値のみで糖尿病の状態を判断していると、
動脈硬化性の病気などは、
必ずしも充分に予防出来ない、
というような欠点もあります。

そんな訳でHbA1cに追加するべき指標として、
食後血糖値を重視するという見解があります。

まだ食前血糖が正常な状態であっても、
食後血糖が高値であると、
心筋梗塞のような心血管疾患は、
増加するという報告があります。

血糖の急激な上昇により、
酸化ストレスによる血管内皮障害が生じることが、
その要因として想定されています。

それでは食後血糖はどのくらいから異常と考え、
治療するとすれば、
どのくらいを目標として考えるべきでしょうか?

この点については、
国際糖尿病連合(IDF; international diabetes federation)が、
2007年に「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を発表し、
その改訂版が2011年に公開されています。
こちらです。
IDF食後血糖ガイドライン.jpg
http://www.idf.org/2011-guideline-management-postmeal-glucose-diabetes

これによると、
正常の耐糖能を持っている人では、
血糖値は食事に反応して上昇するが、
そのピークは140mg/dLを超えることは殆どなく、
一般的には食後2から3時間で食前値に戻るとされ、
このため、
食後1から2時間後の血糖値が、
140mg/dLを上回る場合を、
食後高血糖と定義しています。

そして、
この食後高血糖が認められた場合には、
食後1から2時間後の血糖値を、
160mg/dL以下とすることを目標として、
治療を行なうとされています。

ただ、現時点でこの食後高血糖のみを改善することにより、
心血管疾患のリスクが減少するなど、
明確な効果が臨床試験などで実証されたことは、
これまでに殆どありません。

そこでアメリカ糖尿病学会(ADA)の最新のガイドラインでは、
次のような記載になっています。
ADAの血糖のコントロール目標値の図.jpg
これはHbA1cで7%を切ることが目標となり、
そのためには食前血糖を80から130mg/dLとすることを目標とするのですが、
その目標に達していても、
HbA1cが目標に達しない場合に限って、
食後1から2時間の血糖を、
180mg/dL未満とすることを目標とする、
という主張になっています。

つまり、敢くまで食後血糖は、
補足的な意味しか持たないという判断です。

要するに、理論的には食後高血糖は、
単独でも動脈硬化のリスクになる可能性があり、
そうしたことを示唆する疫学データもあるのですが、
その一方で食後高血糖の治療効果は、
臨床的には明確に示されてはいないのです。

食後高血糖の治療には、
糖尿病治療薬の多くが一定の有効性がありますが、
同時に食前血糖も低下させるので、
低血糖などのリスクが生じます。
そのため純粋な食後血糖の改善のためには、
食後の運動や、
GI値の低い食事、
低炭水化物食、
副食を先に取り主食を後にする、
というような生活上の工夫の方が、
より有用であると考えられます。

食後血糖の明確な基準は、
日本のガイドラインでは定められておらず、
IDFのガイドラインが引用されるに留まっていますが、
その真の意味での意義はまだ不明の点が多く、
今後の検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

食後血糖と海馬の萎縮との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
海馬の萎縮と食後過血糖.jpg
今月のDiabetes Care誌にウェブ掲載された、
糖尿病が脳に与える影響についての論文です。

糖尿病はアルツハイマー病のリスクであることが知られています。

アルツハイマー病においては、
比較的その臨床症状の初期に、
脳の海馬という場所とその周辺の萎縮が、
MRI検査などで認められることが分かっています。

それでは、
糖尿病の患者さんでは、
海馬の萎縮が多く見られるのでしょうか?

この点については、
実はあまりクリアなことが分かっていません。
糖尿病の患者さんを長期間経過を見て、
脳の萎縮を観察したような研究というものは、
あまりこれまでに施行されてはおらず、
ある時点での脳の所見を、
糖尿病のあるなしで比較したものが殆どなのですが、
そうした比較においては、
あまりはっきりした差が認められていないのです。

今回の研究は日本の長期の疫学データとして有名な、
九州の久山町研究の一環として行われたもので、
久山町の65歳異常の住民1238名を対象として、
頭部のMRI検査から算出された、
脳萎縮や海馬の萎縮の指標と、
糖尿病の指標との関連を検討しています。

年齢性別などの因子を補正した結果として、
糖尿病でない住民と比較して、
糖尿病の住民では、
脳全体の萎縮の指標も、
海馬の萎縮の指標も、
そして海馬優位の萎縮の指標も、
いずれも萎縮がより強い、
というデータが得られました。

この萎縮の指標は、
ブドウ糖負荷後2時間の血糖値とは相関しましたが、
食前血糖とは相関せず、
糖尿病の罹患年数が長いほど、
萎縮の程度も高くなっていました。
ほぼ同じ意味合いですが、
高齢で診断された糖尿病の患者さんと比較すると、
中年で診断された患者さんでは、
海馬の萎縮と海馬優位の脳萎縮が、
いずれも優位に強いという結果になっていました。

海馬の萎縮自体は、
たとえば低還流でも生じる現象なので、
これを持って必ずしも認知症と糖尿病に関連がある、
というようにも言い切れないのですが、
糖尿病で海馬優位の萎縮が起こり、
それが食前血糖より食後血糖に関連している、
というデータは興味深く、
今後の更なるデータの蓄積を期待したいと思います。

このデータではHbA1cが測定されておらず、
糖負荷試験が糖尿病の診断に用いられているので、
食前血糖と糖負荷後の血糖値が、
関連する因子として用いられているのですが、
HbA1cとの関連も、
また別個に興味のあるところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ホルモン補充療法で認知症は予防出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
閉経後ホルモン補充療法と認知症.jpg
今月のNeurology誌に掲載された、
女性ホルモン補充療法による認知機能への影響についての論文です。

女性には更年期があり、
女性ホルモンの急激な低下により、
発汗や頭痛、のぼせなどの多くの不快な症状が起こります。
そうした症状が強い場合には、
女性ホルモンの補充療法が行われます。
補充療法により、こうした更年期症状の多くは軽減されます。

女性ホルモンと認知機能との関連については、
多くの報告があります。
その影響は一定していませんが、
女性ホルモンの大きな変動があれば、
認知機能の低下を招く可能性のあることは、
ほぼ間違いがないようです。

その意味で女性ホルモンが急激に低下する更年期は、
認知機能にも悪影響を与えることが想定されます。

それでは、更年期以降の女性にホルモン補充療法を行なうと、
その後の認知機能の低下が予防されるのではないでしょうか?

そうした仮定の元に、
複数の臨床試験が行われましたが、
明確な認知症予防効果が確認されたものはありません。

ただ、これまでの臨床試験の多くは、
高齢の女性を対象としていて、
もっと若年で閉経からそれほど経たない時期であれば、
その効果があるのではないか、
という指摘が以前からありました。

その問題を検証する目的で、
今回の研究では、
閉経から6年以内か、
もしくは10年以上経過している、
41から84歳の女性トータル567人を、
本人にも担当医にも分からないようにくじ引きで2群に分け、
一方は女性ホルモン製剤
(17βストラジオールを1日1ミリグラム)
を使用、
もう一方は偽薬を使用して、
2.5年と5年の段階で両群を比較検証しています。

その結果…

閉経後6年以内の群においても、
閉経後10年以上の群においても、
女性ホルモンの補充の有無と、
認知機能の低下との間に、
有意な差は認められませんでした。

今回の結果においては、
閉経後それほど経たない時期から使用を開始しても、
女性ホルモン補充療法に、
明確にその後の認知機能の低下を予防するような効果は、
数年という経過では確認されませんでした。

ただ、アルツハイマー病は、
老人斑や神経原線維変化から、
10年以上の経過を経て症状が発症するような性質のものなので、
閉経後間もない時期からの長期のホルモン補充療法により、
将来の認知症の予防に繋がる可能性は、
まだ否定はされてはいないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「教授のおかしな妄想殺人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ウディ・アレンの新作.jpg
コメディアンからスタートして、
オリジナルのコメディ映画で頭角を現し、
「アニー・ホール」でウィットに富むセンスのある人間ドラマを確立すると、
その後は映画の楽しさを満喫させる、
多くのアレン映画を生み出した、
ニューヨークを象徴する映画作家の1人、
ウディ・アレンの新作が先日まで公開されました。

僕は1977年の「アニー・ホール」から、
78年の「インテリア」、79年の「マンハッタン」、
80年の「スターダストメモリー」。
82年の「サマーナイト」辺りは封切りで観て、
特に86年の「ハンナとその姉妹」には、
非常な感銘を受けました。

その後も出来不出来はありますが、
今に至るまでコンスタントに作品を発表し続ける、
その旺盛な創作力には脱帽するしかありません。

今回の作品は久しぶりの封切りで観たアレン映画ですが、
アレン自身は登場せず、
ホアキン・フェニックスが演じる、
中年で死にとりつかれた哲学教授が主人公です。

エマ・ストーン演じる女学生は、
この風変わりな教師に魅力を感じ、
その虜となってゆくのですが、
哲学教授は善意の殺人に取り憑かれて、
それを実行に移してしまうので、
愛情と倫理の狭間で女学生は苦しみます。

全体としては典型的な犯罪映画(ノワール)なのですが、
語り口は敢くまで軽妙で、
人生のエッセンスが忍ばされた、
ちょっとした犯罪喜劇を、
見せられているような気分になります。

正直全盛期のアレン映画を思えば、
如何にも軽量級で物足りない感じはあるのですが、
いぶし銀のような演出と語り口は、
ある種の名人芸の域に達していて、
あまり何も余計なことは考えずに、
映画の愉楽にひと時身を委ねることが出来るのです。

なかなか素敵な小品でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

ミナモザ「彼らの敵」(2016年KAAT版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
minamoza.jpg
ミナモザの「彼らの敵」が、
今神奈川芸術劇場大スタジオで上演されています。
昨年駒場アゴラ劇場で再演された作品の、
東京では3演目の上演ということになります。

僕は初演は観ていなくて、
昨年のアゴラ劇場の再演の舞台で初めて観たのですが、
鳥肌の立つような感銘を受けました。

その戯曲の奥の深さと鋭さ、
その世界を具現した6人の役者の見事な演技とアンサンブルに、
文字通り魂を鷲掴みにされたのです。

その時の感想がこちらになります。
http://blog.so-net.ne.jp/rokushin/2015-08-01

今回の上演は昨年と同一キャストによるもので、
舞台が中劇場規模の神奈川芸術劇場であることに、
ちょっと違和感を覚えたものの、
とても楽しみにして出掛けました。

結果としては今回の上演も、
非常に純度の高い素晴らしいもので、
この戯曲が小劇場の演劇史に残る、
素晴らしい傑作であることを再認識するとともに、
唯一無二とも思えるような、
素晴らしいキャストのアンサンブルにも感銘を受けました。

ただ、会場が大きくなったにも関わらず、
演出が全く昨年のアゴラ劇場と同じであったので、
空間に隙間風を感じるような舞台になったことと、
キャストの皆さんが思い入れがあり過ぎて、
全体に「意味のある間」が多すぎ、
不必要に間延びする場面が散見されたことが残念に感じました。

今回の会場は高さがある空間なのに、
床に描かれた大きな円など、
非常に二次元的な演出で、
ダイナミズムがありませんでしたし、
役者さんの移動の導線が長すぎて、
段取りにも支障が生じていました。

たとえば喫茶店の場面があるのですが、
狭い喫茶店のイメージを、
椅子と机で出しているのに、
店に入ってくるのを袖から長い距離歩いて来るので、
非常に間延びして不自然な感じになっています。
舞台上の長い距離を歩くことで、
「広大な空間や時間」などの、
ある種の意味が生じてしまうので、
こうしたところは、
もっと大きな空間なりの、
人の出入りを考えて欲しかったと思いました。

水に映った月を思わせて、
ある種の結界のようでもある床の円は、
面白い発想ではあるのですが、
大きな空間では不似合いで、
平面的な印象をより強くしてしまっています。
ここは蜷川演出のように、
背後のホリゾントに大きな月を出しても、
悪くなかったように思いました。

キャストは皆素晴らしかったと思います。
主人公の屈折を「不器用な迫力」で演じた、
劇団チョコレートケーキの西尾友樹さんも良かったですし、
嫌らしい雑誌編集者を演じた大原研二さんも、
主人公より世慣れした同級生を演じた山森大輔さんも良く、
何より作者の分身のように主人公を詰問し追い詰める、
コケティッシュな小悪魔のような菊池佳南さんが抜群です。
主人公を侮蔑するように見つめるその表情や、
ハッとして振り返るその横顔などを、
見ているだけでもう、
既に元は取ったような思いがします。

ただ、今回は全体に力みと過剰な思い入れも感じられました。

原作の戯曲も今回買って読んでみたのですが、
観劇するより印象はもっとサラッとしています。
特に菊池さんが主人公を追い詰めるところなどは、
意外に普通の会話として描かれているのですが、
実際の舞台では、
ある種デモーニッシュな応酬、
かつての今村昌平映画のような言葉のバトルになっています。
この辺りに原作を膨らませた今回のキャストの技量があり、
作品のカラーがあると思うのですが、
今回は菊池さんの身体に力みが見え、
やや底の見えたような感じがありました。
もう少しサラッとやっても良かったと思います。

嫌らしい編集者を演じた大原さんも、
抜群の芝居なのですが、
今回は間合いが長すぎて、
そこの演技に意味を付けてしまうので、
不必要に芝居が長くなっているのが残念に感じました。
この辺りは、
役者さんを上手くセーブ仕切れていない、
演出の責任であるように思いました。

戯曲は本として読み返しても素晴らしいと思います。
最後の「もう誰も殺さない」というのは、
ちょっと唐突な感じがするのと、
主人公を追い詰めた女性が、
最後に主人公にエールを送るのが、
やや甘ったるい感じがするのですが、
これは捉え方にもよるのかな、
というようにも思います。
タブロイド誌のカメラマンとしての日常と、
パキスタンの人質生活、
その後のメディアとの対峙などを、
交錯させる構造が素晴らしく、
主人公をフリーライターの女性に追い詰めさせたり、
兵士の死を最後に持って来たりと、
意外性も秘めたストーリーも魅力です。
作者としての主張はあると思うのですが、
単一のアジテーションに陥ることなく、
多面的で考えさせる作品となっていること、
その分かりにくさの匙加減も絶妙なのです。

そんな訳でちょっと不満も残る舞台でしたが、
演劇史に残る傑作であることは間違いなく、
同じキャストでの再演はあるかどうか分かりませんので、
ご興味のある方は明日までですので是非。
僕の観た7月22日の夜は、
客席の3分の1も埋まらないような寂しい入りでした。
とても残念です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

一般臨床における糖尿病治療薬と心血管疾患予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の治療薬と心血管疾患リスク.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2型糖尿病の治療薬と動脈硬化性疾患の予後との関連についての論文です。

2型糖尿病の薬物治療のあり方については、
欧米と日本とではかなり考え方の違いがあります。

欧米では基本的に第一選択薬はメトホルミンで、
そこに効果が不十分であれば、
他の薬を適宜上乗せすることになっていますが、
日本の場合は複数の薬剤が同列で並んでいて、
患者さんの病態に合わせてそこから適宜選択する、
というガイドラインになっています。

メトホルミンは基本的にインスリン抵抗性を改善するタイプの薬で、
特に肥満に伴う2型糖尿病には有用性が高いのですが、
日本においてはやせ型で、
初期からインスリン分泌も低下するタイプの2型糖尿病が多いので、
欧米のガイドラインをそのまま使用することには問題がある、
という日本の学会や専門の先生の見解には、
首肯すべき点もあるのですが、
実際には「メトホルミンを欧米のように第一選択にしてもいいですよ」
と言外に言っているような中途半端なガイドラインである上に、
日本と欧米の患者さんの病態が異なり、
その薬剤の有効性も異なる、
という点についての根拠となるデータは、
あまり精度の高いものが存在しない、
という点には問題があります。

糖尿病の治療の目的は、
命に関わるような高血糖を回避すると共に、
心筋梗塞や脳卒中、心不全などの、
命に関わるような合併症を予防し、
その進行を阻止することにより、
患者さんの予後を改善することにあります。

上記文献の記載によれば、
中でも生命予後に大きな影響を与えているのが、
心不全の発症で、
心不全を合併することにより、
2型糖尿病の死亡リスクは10倍に跳ね上がり、
5年生存率は、
転移を伴う進行乳癌とほぼ同じ、
12.5%にまで低下している、
というデータがあるようです。

しかし、この心不全の予防と予後の改善という観点では、
これまであまり良い治療データが、
特に最近の治療薬においては得られていません。

インクレチン関連薬のDPP4阻害剤と、
インスリン抵抗性改善剤のチアゾリジン系の薬剤は、
いずれも2型糖尿病の患者さんの生命予後を改善する可能性のある治療薬として、
注目をされた薬です。

しかし、心不全の増悪のリスクについては、
チアゾリジン系の薬の代表であるピオグリタゾン(商品名アクトスなど)も、
多くのDPP4阻害剤も、
いずれもむしろ心不全による入院のリスクを高める、
という期待とは逆の結果が薬剤によっては報告されています。

ただ、これはいずれも発売前などの、
臨床試験での結果で、
実際の臨床でも同じ結果であるとは限りません。

最近SGLT2阻害剤という新しいタイプの治療薬の臨床試験で、
心不全などのリスクを低下させる、
という結果が報告されましたが、
まだこの単独の結果で一般臨床においても、
そうしたことが成立すると考えるのは早すぎます。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
実際の臨床における2型糖尿病の治療薬の違いと、
その心血管疾患予後との関連を検証しています。

その結果…

25から84歳のトータル469688名の2型糖尿病の患者さんの、
治療と経過のデータを解析した結果として、
未治療と比較してDPP4阻害剤の使用により、
総死亡のリスクを18%、
心不全のリスクを14%、
それぞれ有意に低下させていました。
心血管疾患のリスクについては、
有意な低下を示しませんでした。

一方でチアゾリジン系の薬剤については、
総死亡のリスクを23%、
心不全のリスクを26%、
心血管疾患のリスクを25%、
それぞれ有意に低下させていました。

ちなみに第一選択の治療である、
メトホルミンの単独治療では、
総死亡のリスクを41%、
心不全のリスクを30%、
心血管疾患のリスクを24%、
それぞれ有意に低下させていましたが、
SU剤は総死亡のリスクをわずかながら増加させ、
心不全と心血管疾患のリスクも低下させませんでした。
インスリンの治療は、
総死亡、心不全、心血管疾患、
いずれのリスクも有意に増加させています。

それ以外に複数の組み合わせの治療も検証されていますが、
メトホルミンを主体とする併用療法については、
概ね総死亡のリスクも心血管疾患のリスクも、
低下させる方向に向いていました。

今回の実地診療のデータにおいては、
DPP4阻害剤、チアゾリジン系の薬剤、
いずれも心不全に対してもリスクの増加は来さず、
単剤においてメトホルミンに準じる予後改善効果を示していました。

メトホルミンを第一選択として、
適宜そこにチアゾリジン系とDPP4阻害剤を併用することが、
2型糖尿病の経口薬による治療としては、
現状バランスの取れたもので、
患者さんの予後にも概ね良い影響をもたらすものと、
当面はそう考えておいて良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
論文の画像が本文と違っていました。
コメントでご指摘を受け、
画像を入れ替えました。
(2016年7月23日午後10時修正)
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