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2型糖尿病の小血管合併症が心血管疾患の予後に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
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今月のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
糖尿病の合併症が、
その後の心血管疾患の予後に与える影響についての論文です。

2型糖尿病で患者さんの予後に大きな影響を与えるのが、
糖尿病性の合併症の存在です。

この糖尿病に伴う合併症には、
小血管の合併症と、
大血管の合併症の2種類があります。

小血管の合併症というのは、
細い血管を中心として起こる、
糖尿病特有の合併症のことで、
眼底出血などの目の網膜に起こる糖尿病性網膜症と、
腎機能が低下する糖尿病性腎症、
そして手足のしびれや感覚の鈍麻などの糖尿病性神経症の、
3種類の臓器に起こる合併症を、
通常糖尿病の3大合併症と呼んでいます。

僕が大学にいた20年くらい前には、
糖尿病の合併症というのは、
もっぱらこの3大合併症のことでした。

しかし、その後2型糖尿病の患者さんの予後は、
むしろこの小血管合併症より、
全身の動脈硬化の進行に伴って生じる、
心筋梗塞や脳卒中などの、
いわゆる心血管疾患によって決まることが徐々に明らかになりました。

しかも、糖尿病の血糖コントロールにより、
3大合併症はかなり抑制されますが、
その一方で心血管疾患については、
血糖を下げてもあまり満足のゆく改善がありません。。
糖尿病の治療薬の多くは血液のインスリンを増加させ、
高インスリン血症は動脈硬化を進行させるので、
良かれと思って行っている治療が、
むしろ悪い影響を与えている可能性も、
指摘がされるようになりました。

それでは、
糖尿病における小血管の合併症と大血管の合併症との間には、
どのような関連があるのでしょうか?

たとえば腎症については、
小血管の病変が腎機能低下の原因となるのと同じように、
大血管の動脈硬化も、
当然腎機能低下の原因にはなりますから、
両者に一定の関連性のあることは間違いがありません。

しかし、実際には両者の関連についての、
実証的なデータはこれまであまり存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスの臨床医療のデータを活用して、
2型糖尿病の患者さんにおいて、
小血管の3大合併症の存在が、
心血管疾患の予後に、
どのような影響を与えるのかを検証しています。

対象となっているのは、
600の医療機関から成る医療のデータベースのデータで、
2型糖尿病の患者さんトータル49027名が登録されています。
中間値で5.5年の経過観察期間中に、
そのうちの5.8%に当たる2822名が、
心血管疾患により死亡するか、
心筋梗塞もしくは脳卒中を発症しています。
(これが本研究における心血管疾患のリスクの定義です)

そして、主だった心血管疾患のリスクを補正した上で、
糖尿病の3大合併症の有無との関連を見ると、
網膜症のあることで心血管疾患のリスクは、
1.39倍(1.09から1.76)有意に増加し、
神経症のあることで1.40倍(1.19から1.66)、
腎症のあることで1.35倍(1.15から1.58)、
それぞれ有意に増加していました。

3大合併症がない場合と比較して、
それが1つあると1.32倍(1.16から1.50)、
2つあると1.62倍(1.42から1.85)、
3つあると1.99倍(1.70から2.34)、
心血管疾患のリスクはそれぞれ有意に増加していました。

通常今後の心血管疾患のリスクを算出する際には、
糖尿病の3大合併症の有無は考慮はされていませんが、
それを試験的に付加することにより、
心血管疾患のリスク予測がより精度の高いものとなることが、
今回のデータから確認されました。

つまり、
2型糖尿病の患者さんにおいて、
今後の心血管疾患のリスクを推定する場合には、
3大合併症のあるなしが少なからず影響を与えるので、
その点を勘案した方が、
より正確な推定となる可能性が高い、
ということになります。

これはまあ当たり前と言えば当たり前の結果なのですが、
今まであやふやにされることが多かった両者の関係が、
かなり明確になったことの意義は大きく、
糖尿病の患者さんのケアにおいては、
重要な情報の1つであることは間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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