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メトホルミンによるビタミンB12欠乏とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
メトホルミンとビタミンB12.jpg
今年4月のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
2型糖尿病の第一選択の治療薬による、
あまり知られていない副作用についての論文です。

メトホルミン(商品名メトグルコなど)は、
肝臓の糖新生の酵素を抑制するなどのメカニズムにより、
インスリンの効きを良くして、
血糖を低下させる作用を持つ薬です。

インスリン抵抗性を改善するところから、
動脈硬化に関わる病気や、
一部の癌などの予防効果があるとする報告もあり、
また糖尿病の予防のための使用も、
試みられています。

乳酸アシドーシス以外には、
それほど目立った有害事象の報告のない薬です。
ただ、それほど知られていませんが、
1969年に既に報告があるのが、
血液のビタミンB12の濃度を低下させ、
貧血を増加させるのではないか、
という有害事象です。

その後も複数の報告があり、
全ての患者さんに対してではありませんが、
そうした事例のあること自体は事実であるようです。

ビタミンB12の欠乏は、
巨赤芽球性貧血というタイプの貧血を来し、
手足のしびれなどの、
神経障害の原因にもなります。
原因としては胃を手術で切除した後の、
吸収不良での発症が有名です。

それでは何故糖尿病の治療薬で、
ビタミンB12が欠乏するのでしょうか?

これについては大きく分けて2つの考え方があります。

その第一はビタミンB12の吸収障害が起こるというもので、
胆汁酸の代謝の変化や小腸での細菌増殖などの仮説があり、
最近ではメトホルミンがカルシウム依存性の小腸粘膜機能を、
妨害することがその要因ではないか、
という説が有力です。
これは胃薬であるプロトンポンプ阻害剤による、
ビタミンB12吸収障害のメカニズムとして、
想定されているものと同一です。

第二の考え方は、
ビタミンB12の肝臓での利用を、
メトホルミンが促進しているのではないか、
というものです。

今回のデータは糖尿病の予防のために、
前糖尿病状態か糖尿病のリスクの高い対象者に、
メトホルミン1日1700ミリグラム、もしくは偽薬を、
投与してその予防効果を検証する、
という臨床試験のデータを活用して、
メトホルミンの使用による、
血液ビタミンB12濃度の変化と貧血の発症について、
比較検証しています。

対象者はメトホルミン群が1073名で、
偽薬群が1082名。
どちらが使用されているかは分からないようにして、
3.2年間の経過観察を行ない、
その後はメトホルミン群のみ、
使用薬剤を開示した上で、
9年間の観察を追加しています。

その結果…

ビタミンB12濃度が203pg/mL以下を欠乏とすると、
観察5年の時点でのビタミン欠乏の頻度は、
メトホルミン群では4.3%であったのに対して、
偽薬群では2.3%で、
これは有意にメトホルミン群で多い、
という結果になりました。

ただ、これを観察13年間の時点で見ると、
ビタミンB12欠乏の頻度は、
メトホルミン群で7.4%に対して、
偽薬群で5.4%で、
メトホルミン群の方が多い傾向はありましたが、
こちらは有意ではありませんでした。

1年のメトホルミンの使用により、
ビタミンB12の欠乏は未使用と比較して、
1.13倍(1.06から1.20)有意に増加していました。

貧血のリスクもメトホルミン群で増加していましたが有意ではなく、
ビタミンB12の濃度との関連性はありませんでした。
神経障害の発症頻度も、
メトホルミン群で増加が認められましたが、
事例は少数であるので、
メトホルミンの使用との関連性は、
明らかではありませんでした。

このように、
メトホルミンの使用とビタミンB12の欠乏との間には、
一定の関連はありそうなのですが、
その程度は概ね軽く、
症状や検査に反映されるような、
高度の異常の頻度は少ないようです。

メトホルミンの使用は日本においても拡大していますが、
ビタミンB12の欠乏が有害事象として生じる可能性を念頭に、
一度はビタミンB12濃度をチェックしておくなど、
一定の対応はしておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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