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深部静脈血栓症における弾性ストッキング装着期間 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
深部静脈血栓症の弾性ストッキング.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
所謂「エコノミークラス症候群」に対して、
予防のための弾性ストッキングの着用を、
どのくらいの期間続けるべきかを検証した論文です。

深部静脈血栓症は、
主に足の静脈に血栓が出来、
皮膚の変化や静脈炎による疼痛などの症状を来すと共に、
剥離した血栓が肺塞栓症などの、
合併症を起こす病気です。

主に長時間の同じ姿勢をした後で、
肺塞栓症を来すような事例が、
「エコノミークラス症候群」のような名前で、
報道されたりすることがあります。

一旦この病気の症状を起こした場合には、
適切な抗凝固療法で血栓を融解して、
血栓の再発を予防すると共に、
伸縮性があって、少し圧力を掛けるような、
弾性ストッキングを着用して、
下肢のうっ血を抑えることが、
その再発の予防に有効だとされています。

現行の国際的なガイドラインにおいては、
この弾性ストッキングを発症後2年間継続的に使用することにより、
その間の再発率が50%抑制されるとして、
その使用が推奨されています。

ただ、その根拠となっているのは、
比較的少数例の介入試験が2つあるだけです。

そのためSOX試験という臨床試験が施行され、
2014年のLancet誌に報告されました。
その結果は意外なことに、
偽の効能のないストッキングと比較して、
弾性ストッキングの静脈血栓症予防効果は、
明らかには示されませんでした。

この試験で判明したことは、
ストッキングの装着率の悪さで、
継続的な装着が医師からは指示されていても、
実際には最終的に週のうち3日以上ストッキングを装着していたのは、
対象者の56%に過ぎないという結果でした。

装着率は当然のことながら、
最初の発症から時間が経過するに従って低下します。

従って、2年間の着用が望ましいとされていても、
期間が長くなれば着用率も低下するので、
あまり意味のないことではないか、
という疑念も当然生じてきます。

そこで今回の研究では、
深部静脈血栓症を発症した518名の患者さんに、
1年間の弾性ストッキング着用を継続し、
1年が経過した時点でくじ引きで2つのグループに分け、
一方はそのまま弾性ストッキング治療を継続し、
もう一方は中止して、
その後1年間の経過観察を行なっています。

その結果、
1年(病気発症後2年)が経過した時点で、
弾性ストッキング継続群では262名中、
13.0%に当たる34名で血栓塞栓症が再発したのに対して、
弾性ストッキング中止群では、
256名中19.9%に当たる51名が再発していて、
有意に弾性ストッキングの使用により、
再発が抑制された、というデータになっています。
この試験においては、
週のうち6から7日においてのストッキング装着率が85%と良好で、
着用が確実に行われていれば、
発症後2年間のストッキングの着用は、
再発の予防に有効である、
という結果が得られました。

矢張り深部静脈血栓症の再発を抑えるには、
弾性ストッキングの着用は有用で、
発症後1年間問題なく経過しても、
2年間の着用を継続することには、
再発抑制のための有用性があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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