So-net無料ブログ作成

低用量アスピリンの一次予防ガイドライン(2016年アメリカのデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アスピリンの使用ガイドライン.jpg
今月のAnnals of Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
アメリカ予防医学作業部会(USPSTF)による、
アスピリンの予防的な使用を、
どのような患者さんに対して使用するべきかの、
ガイドラインの最新版です。

低用量のアスピリン(1日81から100ミリグラム)の継続的な使用には、
心筋梗塞や脳卒中の予防効果と、
腺癌、特に大腸癌の予防効果が認められています。

ただ、その一方でアスピリンには、
出血系の合併症があり、
その代表は胃潰瘍などの消化管出血と脳内出血です。

今回のガイドラインのたたき台となった最新のデータでは、
まだ病気を起こしていない状態でのアスピリンの使用により、
その後の心筋梗塞を17%、
脳卒中を14%、男女共に減少させる効果が確認されています。
また10年を超える継続使用により、
大腸癌のリスクは40%の低下が認められています。
その一方でアスピリンの使用は、
重症の消化管出血を58%、
出血性梗塞を27%増加させます。

ですから、
仮に同じくらいの確率で、
その人が心筋梗塞と出血性梗塞を起こすとすれば、
アスピリンの使用は、
出血のリスクがより高くなるので、
メリットが少ないということになります。

アスピリンの使用によりメリットがあるのは、
従って、心筋梗塞や脳卒中を起こす可能性が高く、
その一方で重症の出血を起こす危険性は低い、
という場合です。

10年を超える使用により、
明確な効果が現れて来るとすれば、
なるべく早期にその使用を開始した方が、
よりその予防効果は期待出来る、
という計算になります。

臨床試験や疫学のデータを元にして、
個々の場合のリスクを算出し、
年齢が40から79歳で10年間の心血管リスクが1から20%である、
架空の集団にそれを当て嵌めるという手法で計算を行ったところ、
以下のような結果が得られました。

単なる寿命ではなく、
QOLが保たれた生活を延長する効果は、
10年間の心血管疾患リスクが1から20%の、
年齢が40から69歳の男女において、
アスピリンの使用により確認されました。

また、寿命の延長効果は、
10年間の心血管リスクが1%の女性を除いて、
40から59歳では心血管疾患が低くても認められ、
60から69歳においては、
10年間の心血管リスクが10%を超える時のみ、
その効果が確認されました。

その一方で心血管疾患リスクに関わらず、
70歳以上の年齢層(70から79歳)においては、
寿命の延長効果は認められませんでした。

つまり、40代から50代に低用量アスピリンを開始して、
それを最低でも10年間、
通常は20年以上継続することにより、
その心血管疾患のリスクはそう高くなくても、
それにより心筋梗塞や脳卒中、そして大腸癌が予防されることの効果は、
使用による出血系の合併症の影響を上回り、
一定レベルの寿命延長と、
病気のない生活の延長を期待出来るけれど、
60代からの開始ではその効果は微妙になり、
70歳以上から開始しても、
その効果はあまり有害な影響を超えるものには成り得ない、
ということになります。

これはただ、仮想のアメリカ国民を対象としたもので、
それがそのまま日本人に適応可能とは言い切れません。

ザックリと見れば、
同一の傾向のあることは間違いはないと思います。

ただ、アメリカと比較すれば、
日本では心筋梗塞と大腸癌は少なく、
その一方で脳卒中は多く、
更に出血性梗塞も多い、
という違いは歴然とあります。

以前ご紹介したことのある日本の疫学データでは、
その精度にやや問題はあるものの、
60歳以上の年齢層でのアスピリンの使用には、
明らかなメリットがなかった、
という結果になっています。

現状の考えとしては、
高血圧やLDLコレステロール高値など、
1つ以上の心血管疾患のリスクのある、
40代から50代の年齢層から開始したアスピリンの使用は、
10年を超える使用であれば、
一定の有効性は期待出来る、
というくらいに考えた方が良いように思います。
勿論血圧が治療の有無には関わらず安定しているなど、
出血のリスクが少ないことが条件になります。
60歳以上の年齢層では、
全ての方にはメリットはなく、
糖尿病の患者さんへの使用を別個に考えるかどうかは、
まだ相反する意見があり一定はしていません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
メッセージを送る