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デノスマブ(プラリア)による副甲状腺ホルモン上昇とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
デノスマブによるPTH上昇とその影響.jpg
今年のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
骨粗鬆症の治療薬によるホルモン系の異常と、
その影響についての論文です。

骨粗鬆症の治療薬は近年多くの新薬が登場し、
活況を呈していますが、
その一方でどの薬をどのような患者さんに対して、
どのように使用するのがベストの選択であるのか、
臨床の現場では当惑することも多くなっているのが、
実情ではないかと思います。

大雑把な分類としては、
骨粗鬆症の治療薬は、
骨形成を刺激する薬と、
骨吸収を抑制する薬とに大別されます。

要するに、骨を作る働きを高めて骨を丈夫にするのか、
骨を壊す作用を抑えることによって、
骨粗鬆症の進行を抑えるのか、
そのどちらかということになります。

ただ、実際には骨形成を刺激することが、
明確に立証されている薬は、
テリパラチド(商品名フォルテオ、テリボン)の一種類です。

このテリパラチドは、
副甲状腺ホルモンの誘導体で、
副甲状腺ホルモンは持続的に骨を刺激する場合には、
骨を壊す方向に働きますが、
その一方で間欠的に刺激すると、
骨を作る方向に強力に働くという性質があります。

その一方でそれ以外に薬は、
最も広く使用されているビスフォスフォネートにしても、
古くから使用されている女性ホルモンとその誘導体にしても、
新薬であるデノスマブ(商品名プラリア)にしても、
いずれもそのメインの作用は骨吸収(乞破壊)の抑制にあります。

しかし、副甲状腺ホルモンの誘導体は、
長期の使用で発癌の誘発に働くのではないか、
という危惧が完全には否定されていないため、
その使用は1年半に制限されるなど、
どのような患者さんに対して、
どのようなタイミングで使用をするべきかについての、
議論はまだ解決に至っていません。

もう1つの新薬であるデノスマブは、
抗RANKL抗体というまた別個のメカニズムの薬剤で、
骨吸収に関わる破骨細胞の分化自体を、
強力に抑制する作用を持つ薬です。
半年に一度の注射で持続的な効果がある、
という点が大きなメリットですが、
その長期の安全性については、
まだ未知数の部分を残しています。

デノスマブに特徴的な副作用の1つとして、
指摘されているのが、
血液の副甲状腺ホルモンの上昇です。

副甲状腺ホルモンは、
血液のカルシウムを維持するホルモンなので、
血液のカルシウム(イオン化カルシウム)の濃度が低下すれば、
刺激されて上昇します。

デノスマブには血液のカルシウムを、
一時的に低下させる作用があるので、
理屈から言えばそれに伴って、
副甲状腺ホルモンが上昇してもおかしくはありません。

しかし、これまでの報告では、
デノスマブがカルシウム濃度を介さずに、
副甲状腺ホルモンの分泌を刺激するのでは、
ということを示唆する報告もあり、
副甲状腺ホルモンの上昇の程度やその時期についてのデータもまちまちで、
混乱を招くものとなっていました。

今回の研究では、
69名の閉経後骨粗鬆症の患者さんを、
くじ引きでデノスマブ使用群と、
テリパラチド使用群とに分け、
半年の経過観察を行ない、
3ヶ月の時点では骨生検を行なって、
薬剤による骨組織の変化と、
骨代謝マーカーや副甲状腺ホルモンの数値との関連性を検証しています。

例数は各群で30名余と少ないのですが、
骨生検で直接的に骨の組織の変化を比較している点が特徴です。

その結果…

副甲状腺ホルモンであるテリパラチド使用群では、
その使用後に内因性の副甲状腺ホルモンは低下したのに対して、
デノスマブの使用群では、
その投与後1ヶ月の時点で、
副甲状腺ホルモン値は有意に増加していて、
その後は徐々に低下しますが、
投与後半年の段階でも、
投与前よりは上昇していました。

具体的には投与前のインタクトPTH(副甲状腺ホルモン)の濃度が、
平均で38.1pg/ml出会ったのに対して、
投与後1ヶ月では平均で63.5と増加が認められています。

しかし、骨形成のマーカーは増加はせず、
投与後3ヶ月での骨生検では、
テリパラチド使用群に見られるような、
骨形成の刺激所見は認められませんでした。

要するに、デノスマブによる副甲状腺ホルモンの上昇は、
テリパラチドを使用した時のような、
骨形成の亢進とは関連のない可能性が高い、
という結果です。

このデータの欠点は、
血液のカルシウム濃度が薬剤投与後に測定されていないことで、
副甲状腺ホルモンの上昇が、
カルシウム濃度と関連があるのかそうでないのかが、
判定不能となっている、ということです。

現状では骨粗鬆症に対する治療薬の選択は、
病状の重症度のみで決められることが多く、
副甲状腺ホルモンを含めたカルシウム代謝的な検証は、
治療前には行われないことが多いと思うのですが、
少なくともデノスマブとテリパラチドは、
副甲状腺ホルモンやカルシウム値に、
大きな影響を与える薬剤であるので、
今後はそうした検証を元に、
薬剤を選択する必要があるのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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