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2型糖尿病の治療薬の選択と合併症との関連について(2016年イギリス大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の治療薬剤と予後との関連について.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2型糖尿病の一般臨床での治療における、
治療薬と合併症との関連についての論文です。

こうしたデータは沢山存在しているのですが、
今回のものは、
一般臨床において実際の治療の影響を、
大規模にリサーチしている点が特徴です。

インスリン抵抗性のある2型糖尿病の患者さんにおいて、
メトホルミン(商品名メトグルコなど)という飲み薬が、
第一選択の治療薬であるという点では、
欧米のガイドラインは一致しています。

メトホルミンの治療によって充分なコントロールに至らない場合には、
第2選択の薬剤として、
SU剤と呼ばれるインスリン分泌を刺激する飲み薬と、
インスリン抵抗性の改善剤であるグリタゾン系の薬剤
(ピオグリタゾンがその代表です)と、
インクレチン関連薬
(DPP4阻害剤という飲み薬とGLP1アナログという注射薬)
が主な選択肢となります。

組み合わせとしては、
メトホルミンを基礎薬として、
通常はそれに上乗せする格好で、
SU剤、グリタゾン系、インクレチン関連薬が使用され、
1種類で不充分であれば、
更にもう一種類の薬剤が上乗せされます。

このうち、メトホルミンとSU剤については、
かなり長期のデータが複数報告されていて、
血糖の降下作用が確認されているとともに、
合併症の予防効果も確認されています。
ただ、SU剤は低血糖のリスクが高いため、
それによる弊害も指摘をされています。

その一方でグリタゾン(チアゾリジン系)とインクレチン関連薬については、
HbA1cなどの低下は確認されていますが、
長期の安全性や合併症の抑制効果については、
そのデータはまだ限定されています。

そこで今回の研究では、
イギリスにおけるプライマリケアのデータベースを活用して、
2007年から2015年における、
25歳から84歳の2型糖尿病の患者さん、
トータル469688名のデータを解析し、
投薬治療の薬剤の種類と、
合併症などの予後との関連を検証しています。

これは同一の患者さんでも、
処方歴から1年間SU剤が使用されていて、
1年間インクレチン関連薬が使用されていれば、
それぞれ別々にカウントする、
という方法で集計をされています。

予後の指標としては、
壊疽による足などの切断、
網膜症による失明、
末期腎不全(CKDのステージ5以上)、
高血糖(ケトアシドーシスや昏睡)、
低血糖(入院など治療を要するもの)を使用しています。

つまり、重症の合併症の発症率を比較しているのです。

その結果…

全体の58.4%の患者さんが1種類以上の糖尿病治療薬を使用されていて、
54.5%の患者さん(薬剤使用患者の9割以上)がメトホルミン、
28.7%の患者さんがSU剤、
4.5%がグリタゾン系、6.9%がインクレチン関連薬、
4.2%がインスリンを使用されていました。

グリタゾン系の薬剤(主にはピオグリタゾン)は、
このタイプの薬を未使用の治療と比較すると、
失明の発症リスクを、
29%有意に低下させ、
重症低血糖のリスクを22%有意に増加させ、
重症高血糖のリスクは12%有意に低下させていました。

インクレチン関連薬は、
このタイプの薬を未使用の治療と比較すると、
重症低血糖のリスクを有意に14%低下させていましたが、
それ以外の合併症の指標には、
他の薬剤との違いは認められませんでした。

メトホルミンの単独治療との比較で見ると、
失明のリスクについては、
SU剤単独治療が1.42倍(1.25から1.62)、
インスリン単独治療が1.96倍(1.50から2.55)と、
それぞれ有意に増加していました。

重症低血糖のリスクは、
SU剤が7.32倍、インスリン治療が21.17倍と、
それぞれ著名な増加を認めていました。

末期腎不全のリスクについては、
グリタゾンとインクレチン関連薬、インスリン、SU剤のいすれもが、
メトホルミンと比較するとそのリスクを増加させていました。

メトホルミンの単独治療と比較して、
メトホルミンとグリタゾンとの併用は、
重症高血糖のリスクを40%、
インクレチン関連薬との併用は22%、
それぞれ有意に低下させていました。

メトホルミンとSU剤の併用により、
重症低血糖のリスクは6.03倍と有意に増加し、
そこに更にグリタゾン系薬剤やインクレチン関連薬を上乗せしても、
そのリスクには有意な違いはありませんでした。

メトホルミンとSU剤、そしてグリタゾンの3者併用により、
失明のリスクが33%有意に低下していましたが、
他の合併症のリスクには有意な低下は認められませんでした。

トータルに考えて、
インスリン抵抗性が主体の2型糖尿病においては、
メトホルミンの単独治療が基本であることは間違いがなく、
より良い血糖コントロールを目指して、
他の薬剤を上乗せする場合には、
グリタゾン系とインクレチン関連薬が、
悪影響は少なく血糖降下が望めそうだ、
ということは言えそうです。
ただ、この2種の薬剤の併用においても、
末期腎不全のリスクは増加する可能性があり、
その点は今後の検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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