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ピオグリタゾンと膀胱癌リスク(2016年大規模疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アクトスと膀胱がん.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
糖尿病の治療薬と膀胱癌のリスクとの関連についての論文です。

ピオグリタゾン(商品名アクトスなど)は、
インスリンの効きを良くする薬として、
むしろ国外でその評価が高く、
欧米のガイドラインにおいても、
メトホルミンに次ぐ第二選択くらいの位置にあります。

ただ、この薬の大きな問題は、
発売当初から、
膀胱癌のリスクを上昇させるのでは、
という危惧があったということです。

これはまず発売前の動物実験において、
オスのラットの膀胱癌の発症が増加した、
という知見から始まっています。
ただ、メスのラットではそうした結果はなく、
同じネズミの仲間であるマウスでも再現されませんでした。

2003年にアメリカのFDAは、
ピオグリタゾンによる膀胱癌の発症について、
発売後10年間の観察研究を指示しました。

その5年間の時点での中間解析の結果では、
トータルにはピオグリタゾンの使用と、
膀胱癌の発症との間には、
有意な関係は認められませんでした。
ただ、2年を超えて使用している患者さんに限ると、
1.4倍という若干ですが有意な、
膀胱癌リスクの増加が認められました。
この結果を受けてFDAは、
ピオグリタゾンのラベルに、
その点の記載を求めています。

その観察研究をより延長し、
平均で7.2年の解析を行なった結果が、
昨年のJAMA誌に発表されていて、
その時点で一度記事にしています。
ここでは膀胱癌のみではなく、
全部で10種類の癌のリスクが解析されています。

193099名の膀胱癌の患者さんが対象となり、
そのうちの18%に当たる34181名が、
ピオグリタゾンを使用していました。
平均の使用期間は2.8年です。
幾つかの別個の解析を行なった結果として、
ピオグリタゾンの使用者では、
若干膀胱癌の発症率が高い傾向がありましたが、
その差は有意なものではありませんでした。

従って、どうもこの問題は、
あまりクリアな形で結論には至っていないのです。

今回の検討はイギリスのプライマリケアのデータベースを利用して、
この問題についての、
また新たな検証を行なっています。

新たに2型糖尿病の治療を開始した145806名を対象として、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌の発症との関連性を検証しています。
観察期間中に622名の膀胱癌の患者さんが新たに診断され、
その全体での発症率は年間10万人当たり90.2件であったのに対して、
ピオグリタゾンを使用している患者さんでは、
年間10万人当たり121.0件で、
それ以外の治療薬を使用している患者さんと比較して、
1.61倍(1.22から2.19)有意にそのリスクは増加していました。
同系統の別種の治療薬で、
現在アメリカ以外では殆ど使用されていないロシグリタゾンでは、
例数は少ないのですが、
有意な増加は認められませんでした。

つまり、今回のイギリスの統計では、
矢張り僅かながら膀胱癌リスクの増加が示唆されました。

一方でピオグリタゾンは、
インスリン抵抗性のある糖尿病を発症していない患者さんで、
心筋梗塞や脳卒中の発症を有意に低下させるなど、
動脈硬化性疾患の発症や進展予防には、
一定の有効性があるというデータもあり、
この薬をどのような患者さんに対して、
どのように使用するのが最も適切であるのか、
まだ一般の臨床医には、
悩ましい状態が続きそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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