So-net無料ブログ作成

サイアザイド系利尿剤による高カルシウム血症の疫学 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
サイアザイドによる高カルシウム血症.jpg
今月のJ Clin ENdocrinol Metab誌に掲載された、
サイアザイドという利尿剤による、
高カルシウム血症という副作用の疫学についての論文です。

サイアザイド系利尿剤は、
今使用されている薬としては、
ヒドロクロロチアヂド(商品名ニュートライド)や、
トリクロルメチアジド(商品名フルイトラン)などがあり、
近位尿細管のナトリウムポンプに働いて、
水とナトリウムの排泄を促進することが主な作用の薬です。

最も古い降圧剤であり。
その降圧作用と心血管疾患の予防効果は、
これまでの多くのデータにより確立されています。

ただ、その利尿剤としての性質から、
脱水や尿酸値の上昇、血糖値の上昇など、
複数の副作用や有害事象のある薬でもあります。

そうした副作用の中でも、
記載はありながらその詳細はあまり分かっていないのが、
高カルシウム血症という症状です。

サイアザイド系利尿薬には、
尿細管のカルシウムの再吸収を促進する作用があり、
そのために血液のカルシウム濃度が上昇するケースが、
報告されています。

しかし、その実際の頻度やカルシウム上昇のレベル、
カルシウムを調節するホルモンである、
副甲状腺ホルモン(PTH)との関連などについては、
これまであまりまとまったデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
サイアザイド系利尿剤の投与後に発症した高カルシウム血症の事例、
トータル221例を解析し、
アメリカの一般人口の発症率と比較検証しています。

その結果…

サイアザイド系利尿剤使用後に発症した、
高カルシウム血症の事例は、
薬剤使用後平均で5.2年後に発症しており、
平均年齢は67歳と比較的高齢者に多く、
その86.4%が女性という明確な性差が存在していました。

その多くは軽度の上昇に留まり、
11mg/dLを補正値で超えた患者さんは10%で、
重症の事例は認められませんでした。

その発症頻度は1997年以降に上昇し、
2006年にピークに達し、
その後は減少に転じています。
ピーク時の発症率(incidence)は、
サイアザイド服用者年間10万人当たり20人で、
一般人口の年間10万人当たり12人を、
上回っていました。
ただ、2010年には一般人口の平均とほぼ同一になっています。

勿論高齢女性では発症率は高く、
65から74歳の女性では、
年間人口10万人当たり76.3人となっていました。

高カルシウム血症と診断がされて後も、
患者さんの62.4%はサイアザイドは継続されていて、
それでも重度の高カルシウム血症には至っていません。

一方でサイアザイドを高カルシウム血症のために、
中止した患者さんのうちの71%では、
中止後も高カルシウム血症は持続していました。

全体の24%に当たる53人の患者さんでは、
高カルシウム血症の別個の原因である、
原発性副甲状腺機能亢進症が診断されていて、
そのうち21名では副甲状腺腫が確認され、
2名では複数の副甲状腺腫が疑われました。

要するに、
サイアザイド系利尿薬による高カルシウム血症は、
かなりの部分が、
原発性副甲状腺機能亢進症とオーバーラップした現象なのです。

単純に尿細管におけるカルシウムの再吸収の促進が、
原因であると考えると、
極端な性差があることや、高齢者に多いこと、
使用後数年が経過してから発症すること、
使用を中止しても7割は元に戻らないことなどの、
説明がうまくつきません。

これが、
何らかのメカニズムにより、
長期的にサイアザイド系利尿薬が、
副甲状腺を刺激して、
副甲状腺腫の原因となっていると考えると、
原発性副甲状腺腫は高齢女性に多い病気ですから、
比較的多くの疑問を、
説明可能であるようにも思えるのです。

上記文献では、
サイアザイドの中止によっても、
高カルシウム血症が改善しなかった7割の患者さんは、
副甲状腺機能亢進症であった可能性がある、
という大胆な推測をしています。

これが確かなことであるかどうかは、
今回のデータだけでは何とも言えませんが、
サイアザイド系利尿剤を、
数年以上長期間使用している患者さんでは、
血液のカルシウムと副甲状腺ホルモンを、
一度は測定する必要があるのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
メッセージを送る