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ビタミンA過剰による門脈圧亢進症のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンA過剰による門脈圧亢進症.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
ビタミンAの過剰によって足が浮腫み、
大量の腹水が溜まり肝臓が障害されるという症例の提示と、
その病態を解説した教育記事です。

あまり教科書などには書かれていない、
ビタミンの過剰摂取による有害事象なので、
興味深く感じてご紹介をさせて頂きます。

事例は54歳の男性で、
1ヶ月前から足の浮腫みが出現し、
1週間前からは腹痛が出現。
間欠的な吐き気もあって、
食事が取れなくなり病院を救急受診しました。

AST(GOT)が87U/L、ALT(GPT)が50IU/Lと、
肝機能の軽度の異常があり、
腎機能には問題はありませんでした。
血小板は10万6000と軽度低下していましたが、
プロトロンビン時間は13.5秒と延長はなく、
アルブミンは3.6g/dLと軽度の低下に留まりました。

腹部CT検査では大量の腹水を認めましたが、
肝臓は腫大はなく、
脂肪肝を疑わせる所見を認めるのみでした。
脾臓の腫大も認めませんでした。

こうした所見から、
肝硬変以外の原因により、
腸管から肝臓に入る血管である門脈の圧力が、
高まっている可能性が示唆されました。

それでは、肝臓に大きな基礎疾患がなく、
生まれつきの病気でもなく、
それで門脈圧が亢進する原因は何でしょうか?

患者さんに慎重な聞き取りをしたところ、
救急受診の半年前から、
ビタミン剤のサプリメントを、
大量に摂取していたことが分かりました。

6ヶ月の平均で1日98500IUという大量です。

これは3万マイクログラムくらいになり、
かなり大量ですが、
たとえば豚レバーで換算すると、
1日230グラムくらいになりますから、
極端に内臓類などを多食していると、
それに近づくケースはあり得ます。

その後の精査により、
この患者さんはビタミンAの過剰摂取によって起こった、
門脈圧亢進症と診断されました。

それでは、
何故ビタミンAを過剰に摂取すると、
肝臓に流入する血管の圧力が高まり、
腹水や浮腫みが起こるのでしょうか?

これは肝星細胞(stellate cell)という細胞に、
その原因があります。

身体に摂取されたビタミンAは、
肝星細胞に取り込まれ、そこで貯蔵されます。
ビタミンAは脂肪の一種ですから、
その細胞の脂肪滴として貯蔵されるのです。
それが過剰なビタミンAが身体に入ると、
肝星細胞はビタミンAでパンパンに膨れ上がり、
肝臓の類洞という場所で血流を圧迫するため、
門脈圧が亢進するのだと考えられています。

この肝星細胞は、
肝臓の線維化にも影響していると言われていて、
肝炎が慢性化すると、
この星細胞が活性化して、
貯蔵しているビタミンAを放出し、
過剰なコラーゲン繊維を作るようになります。
これが肝臓の線維化と肝硬変の起こる、
主要なメカニズムの1つです。

つまり、ビタミンAの過剰は、
門脈圧亢進の要因になるばかりでなく、
肝臓の線維化の原因ともなると想定されているのです。

こちらをご覧下さい。
ビタミンAによる門脈圧亢進症の図.jpg
これは上記の記事からの引用ですが、
肝硬変以外の原因による、
門脈圧亢進症の原因を示したものです。
右上に書かれているのがビタミンAの過剰のケースです。

ビタミンAによる門脈圧亢進症は、
2万単位から40万単位のビタミンAの摂取を、
平均で7年間継続することにより発症していて、
50万単位を超えるビタミンAを、
1回のみ使用した場合にも、
発症したという報告があるようです。

この下限の2万単位は、
6060マイクログラムくらいに相当し、
レバーやウナギを頻回に食べ、
それにビタミンのサプリメントなどを併用していれば、
超えるのはそう難しいことではありません。

ウナギや内臓類を毎日食べる人は少ないと思いますが、
サプリメントを取っている人は、
その内容と食事とのバランスには、
一定の注意を払う必要があるのではないかと思います。

ちなみに、
日本のビタミン剤のサプリメントには、
ビタミンA(レチノール)は通常含まれておらず、
その前駆体のβカロテンが使用されています。
このβカロテンは体内でレチノールに変換されますが、
過剰摂取の場合に全てがレチノールになる訳ではないので、
ビタミンAの蓄積による影響は、
出にくいと考えられています。
主に皮膚に蓄積されるため、
カロチネミアと言って、
皮膚が黄色くなることは良く起こります。
ただ、海外のサプリメントには、
レチノール自体が含まれているものがありますし、
βカロテンのサプリメントも、
ビタミンAの過剰に結び付かないとは言えませんので、
基本的に慎重な使用が望ましいと思います。

今日は稀なビタミンAによる、
浮腫みと肝障害のメカニズムについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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