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前立腺癌放射線治療後の二次発癌リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
朝から結構強い雨が降っています。
受診予定の方は足元にご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
前立腺癌放射線治療後の二次発がんについて.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
前立腺癌の放射線治療後の、
二次発癌のリスクについての論文です。

放射線治療は癌の治療において、
非常に有用なものであることは間違いがありませんが、
その合併症として問題になるのは、
その放射線により誘発される、
二次発癌のリスクの増加です。

放射線はそれ自体が発癌を誘発します。

前立腺癌の放射線治療において、
身体の外部から照射した場合、
前立腺の周辺にある直腸や膀胱にも、
ある程度の放射線が照射されることになります。

ただ、
前立腺癌自体は高齢者に多い病気で、
放射線による二次発癌は、
放射線照射後5から10年以降に発症するものですから、
二次発癌のリスクはあっても、
放射線治療に有用性のあることは間違いがありません。

しかし、
その一方で前立腺癌は予後の良いことが知られているので、
仮に治療をしなくても、
その患者さんの生命予後には影響を与えないとすれば、
放射線治療をすることにより、
その後の二次発癌の方が、
よりその患者さんの生命予後に影響を与えてしまう、
というような可能性も完全には否定出来ません。

それでは、
実際に放射線治療を行なうことにより、
どの程度の二次発癌のリスクが、
その後に発生するのでしょうか?

その問題を検証するために、
今回の論文においては、
これまでの21の臨床研究データをまとめて解析する手法で、
そのリスクを検証しています。

21の臨床研究のトータル3056名の前立腺癌患者を、
まとめて解析したところ、
放射線治療を施行しない場合と比較して、
膀胱癌の発症リスクを1.67倍、
大腸癌の発症リスクを1.79倍、
より限定した直腸癌のリスクを1.79倍、
それぞれ有意に増加していました。
その一方で、
造血系の癌と肺癌については、
放射線治療後の発症リスクの増加は、
認められませんでした。

その癌が放射線治療と関連があるか、
無関係であるかの線引きは、
簡単ではありませんが、
今回の検討では、
放射線照射後5年以降の癌のみを二次発癌とした場合と、
10年以降の癌のみをそれとした場合という、
2つの限定を用いて解析を行ない、
いずれの場合にも、
膀胱癌と直腸癌については、
放射線治療群で有意な増加を認めていました。

放射線治療の方法による検証では、
外部照射では有意差をもって二次発癌が増加した一方、
放射線源を前立腺に埋め込むような、
小線源密封療法においては、
まだデータは少ないのですが、
現時点で膀胱癌と直腸癌を含めて、
二次発癌の有意な増加は認められませんでした。

要するに、
前立腺癌に放射線の外部照射による治療を行なった場合、
その5年後以降に、
二次発癌の増加が起こります。
膀胱癌および直腸癌の1.6から1.7倍程度の増加が確認されていますが、
その予後については、
自然発症の癌と比較して、
特に違いはないと考えられています。
また、小線源を用いた治療については、
そうした二次発癌の、
問題となるような増加の報告は、
現時点ではないようです。

放射線による二次発癌のリスクは、
それほど高いものではありませんが、
前立腺癌のように予後の良好な癌の場合には、
その施行にはそうしたリスクも勘案して、
より慎重な適応の判断が、
必要になることは事実であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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