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ジカウイルス感染症(2016年BMJの総説) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ジカウイルス感染症.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ジカウイルス感染症の総説です。

この病気についての、
現時点での問題をまとめておきたいと思います。

ヤブ蚊によって媒介される感染症である、
ジカウイルスによるジカ熱は、
1947年にアフリカのウガンダで、
ジカ森のアカゲザルからウイルスが分離されたため、
ジカ熱と名付けられました。

最初に報告されたのはアフリカですが、
その後東南アジアや南アジア、
ポリネシアなどでも報告が見られ、
昨年よりブラジル、コロンビア、エクアドルなどの中南米諸国で、
流行が拡大して大きな問題となっています。

こちらをご覧下さい。
ジカウイルスの流行地域.jpg
画像が小さくて見づらいと思いますが、
ジカウイルス感染症の流行地域とその時期とを示したものです。

2007年にミクロネシアのヤップ島で流行があり、
遺伝子検査で確定した事例は49例のみですが、
抗体検査からの推測では、
島民の73%は感染した可能性がある、
というデータがあります。

2013年のフランス領ポリネシアでは、
294事例が確認され、
2015年の5月からブラジルでの感染が始まっています。

このジカ熱の病原体であるジカウイルスは、
日本脳炎ウイルスやデング熱ウイルスと同じ仲間の、
フラビウイルスというRNAウイルスに分類され、
その性質も日本脳炎やデング熱に似通っています。

つまり、
人間から人間への感染は、
原則としては殆ど起こらず
(性行為感染が起こり得るとの報告はあります)、
ヤブ蚊に刺されることによって、
人間の体内にウイルスが入ります。
ウイルスが侵入しても、
多くは症状が出ずに終わります。

性行為による感染の疑われるケースが、
これまでに2つの事例で報告されています。
感染症状出現後17日の精液からウイルスが分離された、
という報告があり、
また症状出現後62日の精液から、
ウイルスのRNAが検出された、
という報告があります。

フランス領ポリネシアにおいては、
流行時に症状のない住民からの献血検体のうち、
おおよそ3%でジカウイルスが検出された、
と報告されています。
従って、輸血などの血液による感染の可能性は否定出来ませんが、
実際にそうした事例の報告はありません。

羊水中や死亡した胎児組織から、
ウイルスを検出した事例はあり、
母体の感染が胎盤を介して、
胎児に感染することは確認されています。

ジカ熱はデング熱に似て、
発症した場合の症状も、
発熱や関節痛、筋肉痛や湿疹などで、
概ね風邪と見分けは付かず、
デング熱より軽症です。

それだけであれば、
大きな問題はないのですが、
今回のブラジルの流行のケースでは、
小頭症と呼ばれる胎児の脳の障害が、
母体のジカ熱の感染の事例で非常に多く発症し、
その関連が大きな問題となっています。

ブラジルにおいては、
4000例を超える小頭症の事例が、
ジカ熱の流行後に報告されていて、
これはそれ以前の20倍という急激な増加です。

ただ、その全てに母体のジカ熱の感染が、
確認されているという訳ではありません。

ジカ熱の症状自体は軽度の風邪症状ですし、
診断は全例で行われているという訳ではなく、
症状のない感染もあるからです。

また、ブラジル以外でも、
これまでにジカ熱の流行はあったのですが、
このような小頭症の発症の増加は、
あまり報告されていなかった、
という点もやや奇異な感じを受けます。
フランス領ポリネシアの流行では、
小頭症の報告は9事例で、
それ以前の時期と比較すれば多いのですが、
せいぜい5倍程度の増加で、
かなりの開きがあります。

2015年11月以降に発症したブラジルの小頭症の事例は、
その85%以上が特定の地域でのみ報告されています。
ジカウイルスの感染自体は、
もっと広い地域で流行しているので、
これも本当にジカウイルスの感染により、
胎盤感染で小頭症になるのだとすれば、
ちょっと理屈に合わないような気がします。

もう1つ指摘されているジカウイルス感染の合併症は、
ギラン・バレー症候群に代表される、
感染後の神経障害で、
ブラジルにおいては2015年に1708例のギラン・バレー症候群が発症していて、
前年より18%増加していると報告されています。
その全てではありませんが、
複数の事例でジカウイルスの感染が証明されています。

小頭症もギラン・バレー症候群も、
他のウイルス感染でも報告のある合併症で、
現時点で必ずしもジカウイルス感染症の、
特徴であるとは言い切れません。
日本でも今後流行する可能性は否定出来ませんが、
特別な対応が必要ということではなく、
ヤブ蚊に無防備に刺されないようにする予防的対応と、
他のウイルス感染を含めて、
妊娠中のウイルス感染にはリスクがある、
という認識を持つことが重要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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