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肥満喘息のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
肥満喘息.jpg
今年のAm J Respir Cell Mol Biol誌に掲載された、
肥満と関連する喘息のメカニズムについての論文です。

肥満のある気管支喘息の患者さんでは、
喘息の程度は重く、薬によるそのコントロールは困難で、
急性増悪による入院などの発生も、
多いという事実は広く知られています。

アメリカにおいては、
重症でコントロールの困難な気管支喘息の、
大部分は肥満を伴っているようです。

それでは、
何故肥満と喘息の悪化との間には関係があるのでしょうか?

大きく2つのメカニズムがあると考えられています。

成人発症型の肥満喘息と、
小児発症型の肥満喘息です。

成人発症型の肥満喘息というのは、
肥満により喘息症状が発症する、
というタイプのものです。

このタイプの喘息は気道の炎症があまり認められず、
炎症マーカーも上昇しない、という特徴があります。
そして、その喘息症状は体重の減少により改善します。

これは厳密に言えば気管支喘息ではなく、
喘息様の症状が、
肥満に伴って生じる病態と、
考えることが出来ます。

確かに太っている人は、
呼吸音が苦しそうで、
ゼコゼコしていることが多いものです。

それでは、何故そうした現象が起こるのでしょうか?

幾つかのメカニズムが想定されています。

脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種であるレプチンは、
気道の収縮に働くという知見があります。
肥満により高インスリン血症が生じますが、
これが抹消の副交感神経の興奮を高め、
これも気道の収縮に働きます。

また、肥満による酸化ストレスにより、
気道の一酸化窒素の代謝が亢進し、
気道の一酸化窒素が減少することにより、
気道の収縮が起こりやすくなる、
というメカニズムも想定されています。

肥満になると気道過敏性が亢進し、
要するに気道がすぐに閉じてしまうのですが、
その現象の一部は、
肥満による肺の容量低下が関係していて、
肥満により気道の壁自体も厚くなっている可能性が、
指摘されているようです。

このように複数のメカニズムが、
肥満に伴い身体に起こり、
気道自体が狭くなり、
かつ収縮しやすくなるので、
それにより喘息様の症状が起こると考えられているのです。
このメカニズムは加齢により起こりやすくなるので、
この成人発症型肥満喘息は比較的高齢者に多いのです。

その一方で、
小児発症型肥満喘息というのは、
肥満と喘息が小児期から同時に存在しているもので、
通常の喘息より、
むしろ気道のアレルギー性の炎症が強く、
血液のIgEは著増しています。

こうした肥満喘息では、
喘息の重症化が、
肥満のない喘息より数倍多いというデータがあります。

成人発症肥満喘息とは異なり、
体重減少により喘息症状は改善しますが、
そのベースにある気道過敏性やアレルギー性の炎症自体は、
改善はしないという違いがあります。

最近この2種類の肥満喘息以外に、
それにオーバーラップするものとして、
化学物質や公害による肥満喘息がある、
という考え方があります。

肥満している子供はホコリや粉塵の刺激に敏感で、
喘息になりやすく、
オゾンなどの化学物質にも敏感に反応して、
気道が収縮しやすいという知見があります。
こうした化学物質の影響により、
免疫系の機能異常が生じ、
それが喘息症状の発症に関連しているのではないか、
という仮説です。

以上をまとめた図がこちらになります。
肥満喘息のメカニズムの図.jpg
一口に肥満喘息と言っても、
複数のメカニズムが想定され、
幾つかの病気がオーバーラップしているので、
体重減少により何らかの改善の得られること自体は、
間違いのないことではあるのですが、
その病態によりその効果にも違いがあり、
化学物質が影響しているケースでは、
そのコントロールも重要なので、
その病態をしっかりと把握した上で、
それに合わせた治療を、
患者さんと一緒に考える、
という視点を大事にしたいと、
改めて思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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