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ピーナツバターによるアルツハイマー病診断は有用か?(2014年追試) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピーナツバターテストの追試.jpg
2014年のJournal of the Neurologincal Sciences 誌に掲載された、
2013年に発表されて非常に注目を集め、
世界的に報道された研究の、
再検証を行なった結果をまとめた論文です。

2013年に同じ医学誌に載った、
「A brief olfactory test for Alzheimer's diease」と題する論文は、
そのインパクトから一般に大きな話題になりました。

「ピーナツバターによる認知症診断」として、
報道でも一時期は盛んに取り上げられました。

内容は鼻の下30センチの位置から、
徐々に鼻に近づけながら、
目隠しをしてピーナツバターの匂いを嗅がせ、
明確な左右差をもって、
左の方が嗅覚が落ちていれば、
アルツハイマー型認知症に移行する可能性が高い、
というものです。

何故このような現象が起こるのかと言うと、
アルツハイマー型認知症の初期において、
左の嗅皮質の機能低下が認められる、
という事実がその裏打ちになっています。

しかし、嗅皮質の機能低下が起こることは事実であるとしても、
それに明確な左右差があり、
それがピーナツバターの試験で検出可能だ、
という論文の結論については、
「本当にそんなクリアな結果が出るのだろうか?」
という疑問が発表時からあったこともまた事実です。

上記論文はその検証を別のグループが行なったもので、
同じ雑誌の2014年に発表されました。

その結果は、
まず15名のアルツハイマー型認知症の患者さんに、
2013年の論文と同じ方法で、
ピーナツバターの試験を行なったところ、
明確な左右差は検出されず、
次に20名のアルツハイマー型認知症の患者さんに対して、
通常嗅覚機能の検査として行われる、
UPSITという複数の匂いを嗅いで、
どんな匂いが答えさせる試験を行なったところ、
こちらも明確な左右差は認められませんでした。

そして、
その後にこのピーナツバター試験についての、
明確な再現はされていないと思います。

要するに、
アルツハイマー型認知症の初期に、
嗅覚の低下が生じること自体は事実なのですが、
その左右差で病変を検出しよう、
という試みは、
あまり再現性のあるものではなさそうです。

ただ、嗅覚の試験を通常の認知機能の試験と同時に行なうことが、
非常に重要な意味を持つことは間違いがないと思います。

こちらをご覧下さい。
認知症と嗅覚.jpg
これは2015年のNeurology誌の論文ですが、
まだ明確に記憶などの機能が低下する以前に、
アルツハイマー型認知症においては、
嗅覚の低下が起こり、
その低下が最も鋭敏に、
その後のアルツハイマー型認知症の発症の予測因子になると共に、
通常の加齢による物忘れとの鑑別にも、
有用性が高い、
という結論になっています。

つまり、
嗅覚の低下がアルツハイマー型認知症の、
初期症状の特徴であることは間違いがなく、
しかし、その左右差に着目したデータは、
実際には信頼性はあまりないものであったようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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