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腹部大動脈瘤と気管支喘息との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

きょうはこちら。
腹部大動脈瘤と喘息との関連.jpg
今年のArterioscler Thromb Vasc Biol誌に掲載された、
腹部大動脈瘤と気管支喘息との関連についての論文です。

気管支喘息は、
気道のアレルギー性の炎症により、
発作的な気管支の収縮と呼吸困難などが生じる病気です。

一方で高齢者に多い、
腹部大動脈瘤は、
腹部大動脈の動脈硬化性変化に伴って、
動脈が拡張して脆くなり、
最悪は破裂して大出血を来すこともある病気です。

この2つの病気の発症するメカニズムは、
基本的には全く別個のものと考えられています。

両者は共に病変部に炎症が存在していますが、
気管支喘息は好酸球や肥満細胞が主体の炎症であるのに対して、
腹部大動脈瘤の病変部には、
マクロファージやリンパ球、好中球が主体の炎症であると、
そのように考えられていました。

しかし、
上記論文の著者らは最近、
腹部大動脈瘤の病変部にも、
アレルギー性の炎症の特徴である、
肥満細胞やIgEが検出された、
という知見を報告しています。

実際腹部大動脈瘤の病変部に浸潤している細胞と、
気管支喘息の気道の病変部に浸潤している細胞は、
多くの同一の炎症物質(サイトカイン)を分泌している、
という知見もあります。

つまり、
意外に同じようなメカニズムで、
気管支喘息と腹部大動脈瘤は増悪し進行している、
という可能性があり、
仮にそうであるとすれば、
両者の悪化は結びついている、
ということも想定されるのです。

そうした推測を検証する目的で、
今回の研究では、
国民総背番号制を取っているデンマークにおいて、
50歳以上で破裂した腹部大動脈瘤の事例と、
破裂はしていない腹部大動脈瘤の事例を多数集積し、
入院中の喘息の診断や気管支拡張剤の使用と、
動脈瘤の破裂などとの関連性を検証しています。

その結果…

半年以内に入院での喘息の診断があると、
その腹部大動脈瘤の破裂のリスクは1.51倍有意に増加し、
1年以内に喘息の診断があると、
その破裂のリスクは2.06倍有意に増加していました。

また、3ヶ月以内に気管支拡張剤の使用があると、
その腹部大動脈瘤の破裂のリスクは1.31倍有意に増加していました。

こうした結果はつまり、
喘息の悪化はその後の腹部大動脈瘤の破裂のリスクになる、
ということを示しています。

つまり、
喘息の炎症が悪化している時には、
仮に腹部大動脈に動脈硬化性の病変が存在していると、
そこにおける炎症も悪化している可能性があり、
それがその後の大動脈瘤の破裂に繋がりやすいのではないか、
という想定が可能なのです。

問題は喘息の炎症をコントロールすることにより、
動脈硬化の進行も予防することが出来るのか、
ということになるのですが、
その辺りは今後の知見の積み重ねを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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