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利尿剤の併用の耐糖能に対する影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
利尿剤の併用と血糖への効果.jpg
Lancet Diabetes Endocrinol誌に掲載された、
通常の高血圧治療にサイアザイドと呼ばれる利尿剤を、
上乗せした場合と、
サイアザイドとアミロライドという2種類の利尿剤を併用した場合の、
血糖上昇の副作用を比較した論文です。

サイアザイド系の利尿薬は、
遠位尿細管という部位において、
ナトリウムの排泄を促進するタイプの薬です。

高血圧症の多くにおいては、
ナトリウムが身体に貯留することが、
大きな要因となっているので、
サイアザイド系の利尿剤は、
高血圧の治療において、
非常に有用性のある薬なのです。

サイアザイド系の利尿剤は、
最も古い高血圧治療薬であると共に、
最も臨床データの豊富な降圧剤でもあります。

高血圧の治療の有用性を証明した臨床試験の多くは、
サイアザイド系の利尿薬を使用したものなのです。

しかし、サイアザイド系の利尿剤には、
特有の副作用があります。

その中でも臨床的に問題になるものの1つは、
このタイプの薬を使用することにより、
血糖値が上昇するという事実です。

その原因は、
カリウムの欠乏にあると考えられています。

インスリンの作用により、
細胞内にブドウ糖が取り込まれる時には、
同時にカリウムも細胞内に移動するので、
カリウムの欠乏状態では、
耐糖能も低下するのですが、
サイアザイド系の利尿剤は、
ナトリウムと一緒にカリウムの排泄も促進するので、
細胞外のカリウムの欠乏状態を、
生じやすいと想定されているからです。

サイアザイド系利尿薬を使用する目的は、
血圧の低下とナトリウムの排泄を促すことで、
それは心血管疾患の予防に有効であることが実証されていますが、
その一方で糖尿病は、
単独で強力な心血管疾患のリスクになります。

そうなると、
心血管疾患を治療するために、
サイアザイド系利尿剤を使用しても、
それで糖尿病になってしまったら、
その効果の多くは相殺されてしまう、
という結果にもなりかねません。

それではどうすれば良いのでしょうか?

1つの方法としては、
サイアザイドのカリウム排泄作用に拮抗する作用を持つ、
カリウム保持性利尿薬、
と呼ばれるタイプの利尿剤を、
サイアザイドと併用することで、
血糖上昇の副作用を予防する、
という戦略が考えられます。

これは実際には心不全に利尿剤を使用する際には、
比較的良く使われている方法です。

サイアザイドより強力な利尿作用を持つ、
ループ利尿剤(商品名ラシックスなど)は、
血液のカリウムを低下させるので、
アルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトンを、
ループ利尿剤と併用して、
カリウムの低下を予防するのです。

今回の研究では、
スピロノラクトンとは別個のメカニズムの、
カリウム保持性利尿薬であるアミロライドを、
サイアザイドと併用して、
単独の場合とその後の血糖上昇の違いを検証しています。

アミロライドは日本未発売のカリウム保持性利尿剤で、
遠位尿細管において、
2箇所の作用点でナトリウム利尿を促すタイプの薬で、
一部はアルドステロンの作用を阻害しています。

イギリスの複数施設において、
大多数は利尿剤以外の降圧剤を使用していながら、
外来の収縮期血圧が140以上で、
家庭血圧が130以上の18歳から80歳の441名を登録。
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで3つのグループに分け、
第1グループはアミロライド1日10ミリグラム、
第2グループはサイアザイドであるハイドロクロロサイアザイドを、
1日25ミリグラム。
第3グループはアミロライド5ミリグラムと、
ハイドロクロロサイアザイド12.5ミリグラムを併用して、
12週間の観察を行ない、
その後に薬剤量は全て2倍に増量して、
トータル24週間の経過観察を行なっています。

高血圧以外に1つ以上の心血管リスクがあり、
顕性の糖尿病はないことが登録の条件です。
降圧剤としては、
カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断剤、
直接レニン阻害剤の使用は容認されています。
全ての群でほぼ9割の患者さんは、
ACE阻害剤かアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が使用されています。

その結果、
開始後12週間と24週間の、
ブドウ糖負荷後2時間の血糖値は、
サイアザイドの単独と比較して、
アミロライド単独と両者の併用では、
有意に低いものになっていました。

つまり、
サイアザイドによる血糖上昇は、
アミロライドの併用により予防されていました。

血圧の降下作用も併用群で有意に高く、
血液のカリウム値が基準値を超えていたのは、
アミロライド単独群で4.8%、
併用群で2.3%に認められ、
最高値は5.8mmol/Lでした。
カリウムの上昇につていも、
ほぼ許容出来る結果になっています。

つまり、
利尿剤を高血圧に使用する場合には、
サイアザイドの単独ではなく、
アミリライドとの併用が、
効果も高く、血糖上昇などの副作用も生じにくい、
ということになります。

ACE阻害剤もアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬も、
カリウムは増加する方向に働く筈なので、
サイアザイドの単独でも、
問題はないようにも思われますが、
今回のデータを見る限り、
それでは血糖上昇を抑えるには不充分のようです。

日本ではアミロライドが使用出来ないので、
スピロノラクトンやアルドステロン拮抗薬のエプレレノン、
またトリアムテレンのようなカリウム保持性利尿薬を、
代用して使用することになります。

エプレレノンとサイアザイド、
ACE阻害剤とカルシウム拮抗薬の4種併用試験は、
上記論文の姉妹的な試験で、
難治性高血圧に有効な組み合わせという報告がありますから、
エプレレノン(商品名セララ)の併用が、
一番無難であると考えて良いかも知れません。

ただ、アミロライドの使用以外では、
サイアザイドによる血糖上昇の抑制は、
実証はされていない、
という点には注意が必要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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