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ビッグ・データで薬の副作用が100%予測出来る? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビッグデータで副作用予測.jpg
これは昨年のJournal of Big Dataという雑誌に掲載されたもので、
京大の女性研究者の単独執筆ですが、
今年の京大のニュースリリースで大々的に取り上げられ、
それからすぐに削除されて、
一部で話題になったものです。

内容は病気に関する情報と、
副作用に関する情報、
遺伝子点変異(SNP)の情報、
蛋白の相互作用に関する情報などを、
統合にして解析するモデルを完成させた、
という報告のようなもので、
このような分野の論文が、
どのような形式であるべきなのか、
というようなことはよく分からないのですが、
内容が具体的に書かれているというより、
その概略とビジョンが書かれている、
というような性質のものです。

こうした解析モデルを活用することにより、
データに含まれていない9種類の薬の副作用を予測したところ、
実際に報告された211の副作用症状のうち、
93%に当たる197の副作用が起こりうるものとして予測され、
実際の副作用事例335例のうち、
99.7%が予測可能であった、と記載されています。

どのような薬がデータの信頼性の確認のために使用されたのかは、
具体的に記載はされていないので何とも言えないのですが、
副作用や有害事象という性質のものは、
アレルギーに関わる症状や、腹痛や下痢などの胃腸症状、
肝障害や腎障害などの内臓障害など、
ある程度の項目に分類されることは、
どの薬でも9割以上は同じだと思いますし、
薬の性質から、
これまでの同様のメカニズムの薬と比較して、
これは白血球減少が起こり易いそうだとか、
発癌のリスクに注意が必要かも知れない、
というようなことも推測は可能なように思います。

しかし、
実際には薬の作用のメカニズムについても、
作用や副作用の大きな部分を占める免疫のメカニズムについても、
その全てが解明されている訳ではなく、
新たな薬の副作用が見付かることにより、
未解明のメカニズムの解明に繋がる、
というような発見の繰り返しであるように思います。

そうした情報はデータには含まれていないのですから、
当然このシステムで予測は出来ないのです。

臨床医の立場から考えると、
臨床的に本当に問題なのは、
予測が出来ない1%の方だ、
ということになるのですが、
それについてはこうしたシステムは、
あまり役には立たないのではないかと思います。

勿論こうしたシステムが無効だ、
ということではなく、
これまでのデータから推測可能な副作用について、
一定の推測を科学的に行なうことは、
薬を使用する上で極めて重要なことで、
このシステムがどうなのかはともかくとして、
こうした研究も医学には不可欠のものだと思います。

ですから、
ビッグ・データで薬の副作用が100%予測出来るのか?
と言えば勿論そんなことはなく、
比率的には1%未満ではあっても、
予期せぬ副作用や有害事象が生じるのが臨床であって、
それが新たな科学の進歩に繋がるのです。
しかし、
推測可能な副作用の予測の精度を上げること自体は重要なことで、
本来こうした研究は、
実地の臨床と表裏一体で検証するべきものではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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