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妊娠中のメトホルミン使用の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
妊娠中のメトホルミン使用の効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
高度の肥満のある妊娠女性に、
メトホルミンという糖尿病の治療薬を使用した場合の、
妊娠女性と胎児への影響を検証した論文です。

BMIが35を超えるような高度の肥満のある女性が、
妊娠された場合には、
母体と胎児ともにリスクが大きいと考えられています。

妊娠中の高血圧や糖尿病などの合併症は増え、
体重増加もより多くなる傾向にあります。
胎児は過体重となり、
出産時に合併症が起こりやすくなります。

妊娠中の体重管理については、
様々な対策が提唱されていますが、
現実にはコントロールは困難であるのが実際です。

こうした肥満女性の妊娠時の体重増加抑制のために、
メトホルミンという薬剤を使用することが、
以前から臨床試験として試みられています。

メトホルミンは2型糖尿病の第一選択の治療薬ですが、
インスリン抵抗性を改善する作用があり、
そのため妊娠中の代謝異常の改善と合併症の予防に、
有用である可能性があります。

ただ、これまでに行われた臨床試験は、
主に多嚢胞性卵胞の患者さんを対象としたもので、
1日2000ミリグラムのメトホルミンの使用により、
妊娠中の母体の体重増加は抑制されたが、
妊娠合併症や胎児の過体重の予防効果はなかった、
というものから、
妊娠高血圧腎症が予防された、というものまで様々で、
未だ一定の結論に至っていません。

今回の研究は糖尿病がなく、
BMIが35を超える高度の肥満があって、
妊娠をされた女性トータル450名を対象として、
対象者にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は妊娠12から18週より出産時まで、
メトホルミンを1日3000ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
妊娠中の母体の経過と、
胎児の体重や異常の有無を比較検証しています。
この3000ミリグラムというのは、
日本では認められていない高用量です。

その結果…

第一評価項目は胎児の体重が過大であるかどうかですが、
これについてはメトホルミン群と偽薬群との間で、
有意な差はありませんでした。

母体の妊娠中の体重増加については、
偽薬群の平均値が6.3キロであるのに対して、
メトホルミン群では4.6キロで、
これは有意差をもって母体の体重増加を抑制していました。

妊娠高血圧腎症の発症率も、
偽薬群が11.3%に対して、
メトホルミン群で3.0%で、
これも有意差をもってメトホルミンの使用により抑制されていました。

一方で妊娠糖尿病の発症率や巨大児の発症、
出産時の合併症の発症については有意な差はありませんでした。

メトホルミン使用群の方が、
有害事象や副作用の頻度は多かったのですが、
重篤なものの頻度には差はありませんでした。
こちらをご覧下さい。
妊娠中のメトホルミンの副作用頻度.jpg
吐き気や嘔吐、下痢、頭痛が主なものであることが分かります。

今回の研究では、
これまでで最も多い1日3000ミリグラムのメトホルミンの使用により、
母体の体重増加は抑制され、
おそらくはそれにより妊娠高血圧腎症も抑制されています。
メトホルミンの妊娠中の使用の安全性も、
妊娠12週以降においてはほぼ確認がされています。
ただ、胎児の過体重自体については、
これまでの研究と同じように、
明確な予防効果は確認されませんでした。

メトホルミンには多種の作用があり、
特に内蔵脂肪の蓄積や肥満のある方には、
トータルに健康上のメリットのあることが、
ほぼ明らかになっています。
妊娠中にも、基本的には安全に使用出来る薬剤であると、
そう考えて良いように思います。

最後に論旨に直接の関係はありませんが、
妊娠糖尿病の診断基準についての、
上記論文の補助資料にある表を載せておきます。
メモ的にお考え下さい。
妊娠糖尿病の定義というのは、
結構変遷のあるものなのです。
妊娠中の糖尿病の診断基準.jpg

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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