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抗うつ剤治療による自殺企図のリスクについて(治験報告書再解析データによる) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抗うつ剤による自殺リスク.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
SSRIとSNRIと呼ばれる抗うつ剤による、
衝動性や興奮、自殺のリスクについての論文です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)や、
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)は、
その明確な作用メカニズムから、
抗うつ剤の主流として広く使用されている薬剤です。

しかし、主に2000年代の前半に、
小児や思春期の使用(18歳未満)における、
自殺企図のリスクの増加が指摘されて大きな問題となり、
その使用が禁止されている訳ではありませんが、
より慎重な投与が望ましい、
という位置づけになっています。

ただ、この問題については、
どのような臨床データをどのように解析するのかによっても、
結果が異なるという問題があり、
自殺企図は増やすけれど、
実際の自殺が増えているのではない、
というような指摘もあって、
まだ一定の結論には至っていません。

発表された論文を元にした解析では、
全ての有害事象が記載されていなかったり、
恣意的な線引きがなされたりしていることが多く、
それを集計しても実態の解明には結び付かない、
という指摘もありました。

今回の研究では、
より詳細で生データに近い情報がある、
臨床試験の総括報告書(clinical study reports)のみを解析して、
より精度の高いメタ解析を目指しています。

その結果…

70の臨床研究の18526名のデータをまとめて解析した結果として、
成人においては、
希死念慮のリスクは0.81倍(0.51から1.28)、
攻撃的言動のリスクは1.09倍(0.55から2.14)、
アカシジアのリスクは2.00倍(0.79から5.04)、
といずれも有意ではありませんでした。
一方18歳未満においては、
希死念慮のリスクが2.39倍(1.31から4.33)、
攻撃的言動のリスクが2.79倍(1.62から4.81)、
アカシジアのリスクが2.15倍(0.48から9.65)と、
希死念慮と攻撃的言動については、
SSRIもしくはSNRIの使用により、
有意にリスクが増加していました。

今回のデータは不十分なもので、
精度の高い解析に至らなかったと記載されていますが、
これまでのデータとほぼ同一の結果となっており、
SSRIとSNRIの18歳未満の患者さんへの使用については、
希死念慮と攻撃的な言動のリスクが、
その使用により2倍程度に増加する、
ということを念頭において、
より慎重な投薬が求められるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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