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5α還元酵素阻害剤による内蔵脂肪の蓄積効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
デュタステリドの代謝作用.jpg
今年のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
前立腺肥大症や脱毛の治療薬に、
メタボを進行させるような働きがあるという、
興味深い報告です。

5α還元酵素は、
主に男性ホルモンのテストステロンを、
より作用の強い代謝産物である、
ジヒドロテストステロンに代謝する酵素で、
1型と2型の2つの種類があります。

このうち1型は全身の皮脂腺などに分布し、
2型は前頭部の皮膚や前立腺などに限局して発現している、
とされています。

この酵素をブロックすることにより、
局所の男性ホルモンの作用が減弱します。

その作用を利用した薬が、
5α還元酵素阻害剤です。

何故男性ホルモンの作用を、
弱めるような薬のニーズがあるのかと言えば、
その目的は主に2つです。
その1つは男性ホルモン反応性の組織である前立腺が、
病的に肥大する前立腺肥大症の治療で、
もう1つは男性型の脱毛症の治療です。

現在日本で使用されている5α還元酵素阻害剤には、
フィナステリドとデュタステリドの2種類があります。
このうちフィナステリドは、
1日最大で1ミリグラムという低用量で、
男性型脱毛症の治療薬として使用されています。
商品名はプロペシアなどです。
このフィナステリドは酵素の2型のみの阻害剤です。
一方のデュタステリドは、
より効果が強く1型と2型両方の酵素の阻害剤で、
1日0.5ミリグラムで前立腺肥大症の治療薬として使用され、
今年になって男性型脱毛症にも適応が拡大されました。
前立腺肥大症の治療薬としての商品名はアボルブで、
脱毛症の治療薬としてはザガーロです。

さて、
テストステロンのみの代謝の阻害剤として、
5α還元酵素阻害剤は説明されることが多いのですが、
実はこの酵素は肝臓や脂肪細胞において、
ステロイドホルモンであるコルチゾールを、
作用の弱いジヒドロコルチゾールに、
分解する働きも併せ持っています。
より正確には1型の5α還元酵素は脂肪細胞と肝細胞の両方で発現していて、
2型の還元酵素は肝細胞でのみ発現しています。

仮にこの作用が肝臓と脂肪細胞でブロックされると、
コルチゾールは代謝されずに組織に留まり、
一種のステロイドの過剰状態が生じます。

それは果たしてどのような影響を、
人間の身体に与えるのでしょうか?

今回の研究では、
12人の健康な成人男性のボランティアに、
デュタステリド1日0.5ミリグラム、
もしくはフィナステリド1日5ミリグラムを、
3週間継続的に使用して、
その前後で人工膵臓などの詳細な検査を行ない、
肝臓や脂肪細胞への影響を検証しています。

デュタステリドの使用量は、
日本で前立腺肥大症に使用されている量と同じで、
フィナステリドの使用量は、
海外での前立腺肥大症への使用量と同じです。

その結果、
フィナステリドの使用では、
代謝系への影響は軽微に留まりましたが、
デュタステリドを使用すると、
肝細胞のインスリン抵抗性が増加し、
インスリンの存在下において、
肝細胞はより多くの脂肪を蓄積しました。
そして、脂肪細胞においても脂肪の代謝が低下し、
より身体が脂肪を溜め込む方向に、
シフトしていることが確認されました。

つまり、1型の5α還元酵素が阻害されることにより、
肝臓でのインスリン抵抗性が増すとともに、
脂肪細胞においての脂肪の蓄積が促進され、
メタボの状態が進行する可能性が示唆されたのです。
このメカニズムは、
非アルコール性脂肪肝炎の発症にも、
関連している可能性が高いと考えられます。

こうした作用が、
通常に使用されている量の薬剤で、
起こっているということの重要性は大きく、
勿論今回の知見のみで、
こうした薬剤を使用すると内蔵脂肪が蓄積する、
と言うことはまだ出来ませんが、
デュタステリドの安全性については、
今後再検証される必要性があるように思います。

仮にデュタステリドの使用により、
メタボの状態が悪化する可能性があるとすれば、
その使用においては、
前立腺への良い影響と、
身体の脂肪の蓄積の負の影響とのバランスを、
慎重に考えた上で、
その使用を行なう必要があるからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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