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単純性尿路感染症に対する抗生物質の効果(2015年ドイツの知見) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
単純性尿路感染症に対する抗生物質の効果.jpg
昨年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
膀胱炎の症状に対して、
抗生物質を1回使用した場合と、
3日間痛み止めを使用した場合の、
その後の効果と安全性の比較を行なった論文です。

女性は尿道の構造から、
膀胱炎を起こしやすいことが知られています。
膀胱炎の原因の多くは細菌性で、
それも大腸菌が大部分です。

そのため、
膀胱炎の排尿時の痛みや頻尿など、
不快な症状の改善と、
その後の尿路感染の悪化の予防目的で、
抗生物質が短期間使用されます。

抗生物質の使用については、
耐性菌の誘導などの問題があり、
最近ではその使用が限定されるようになっていますが、
現行のガイドラインにおいても、
この膀胱炎(単純性尿路感染症)に対する、
短期間の抗生物質の使用については、
基本的に推奨されています。

しかし、
単純性尿路感染症は予後の良い病気で、
放置していてもその多くは自然に回復します。
従って、痛みなどの症状をコントロールする別個の方法があれば、
必ずしも抗生物質は必要ないのではないか、
という意見もあります。

そこで今回の研究では、
非ステロイド系消炎鎮痛剤と抗生物質の短期使用を比較して、
その効果を検証しています。

対象はドイツの複数施設で、
単純性尿路感染症と診断された、
18から65歳の494名の女性で、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は消炎鎮痛剤のイブプロフェンを、
1日1200ミリグラムで3日間使用し、
もう一方はホスホマイシンという抗生物質を、
1回のみ3グラム内服で使用して、
その後1週間の症状の経過と、
1ヶ月間に再度抗生物質を使用した回数や、
腎盂腎炎などの発症頻度を比較検証しています。
患者さんにどちらか分からないように、
偽の錠剤を混ぜて処方は行われます。
ホスホマイシンは日本では分服の処方が添付文書通りで、
1日量を1回で飲むという方法は、
通常は行われていません。

その結果…

開始後1ヶ月間で見ると、
イブプロフェン使用群の患者さんのうち3分の2では、
そのまま抗生物質を使用することなく経過していました。
残りの34%の患者さんでは、
再発などのために抗生物質を使用していて、
5例(2%)では尿路感染の重症型である腎盂腎炎を発症していました。
それに対してホスホマイシン使用群では、
その後の抗生物質使用の頻度は14%に留まり、
腎盂腎炎の発症も1例(0.4%)に留まっていました。
(腎盂炎の発症には有意差はついていません)
また、抗生物質を使用した方が、
より症状が短期間で改善していました。

薬の副作用や有害事象は比率的には両群で同等でしたが、
消化管出血などの重症の事例は、
4例認められ、それはいずれもイブプロフェン群でした。

つまり、
抗生物質を使用しなくても、
3分の2の患者さんでは症状は自然に改善するのですが、
3分の1では矢張り抗生物質が必要となります。
症状の早期改善や重症化の予防には、
抗生物質の使用には一定の有効性があることが、
今回のデータからも確認されていて、
仮に抗生物質の症状緩和効果を、
他の薬剤で代用するとしても、
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
有害事象の面からはあまり好ましくはないようです。

従って、
現状は抗生物質の短期間(時には1回のみ)の使用は、
一定の有効性と妥当性のある治療であると、
言って良いと思うのですが、
患者さんの3分の2は未治療でも問題はないので、
今後そうした患者さんをどのようにして振り分け、
どのような対処療法を行なうことが妥当であるのか、
そうした検証は必要であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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