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リドリー・スコット「オデッセイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日なので、
午前中は石田医師の診察で、
午後は石原の診察になります。

土曜日は趣味の話題です。

今日はこちら。
オデッセイ3.jpg
「火星の人」という、
本当に本を売る気があるのかしら…
と疑問に思うようなやる気のない邦題の、
アメリカのベストセラー小説を映画化した、
「オデッセイ」という、
小説版の題よりは語感はましだけれど、
意味はより不明の邦題の映画を、
アイマックス3Dで観てきました。

監督はかつては独特の様式美の映画を作り、
今はハリウッドの何でも無難にこなす職人監督の1人、
リドリー・スコットです。

これは近未来(ほぼ現在)に、
火星に事故で1人取り残されたマット・ディモン演じる宇宙飛行士が、
科学の知識とバイタリティで生き延びるという話で、
そのサバイバルのディテールや展開に、
面白みがある映画です。

基本的には地味な映画で、
そう派手な場面はありません。
オープニングとラストの救出劇は、
なかなか迫力があり、
大画面と3Dの効果もなかなかですが、
「ゼロ・グラヴィティ」の2番煎じの感があり、
そう新しいビジュアルという感じではありません。

後ろに座っていたおじさんは、
途中から退屈して大あくびや舌打ちをして、
その後からいびきをかいていました。

僕も映画館なので集中して観ていましたが、
自宅でテレビで観ていたら、
最後までもたなかったと思います。

そんな感じの映画です。

監督はリドリー・スコットですし、
もう少し火星の情景に、
オリジナルで目を奪うようなビジュアルがあっても、
良かったのではないかと思いました。
実際の火星は、
あんなものなのかも知れませんが、
リアルである必要はないと思うからです。
ただの砂漠という感じしかありませんし、
実際に砂漠でロケをした場面が多かったようです。
これでは詰まりません。

それから、
ちょっとネタバレになってしまいますが、
基本的にはアメリカの「俺様映画」であるのに、
一番困った時には、
中国に助けてもらうという設定になっています。
登場するのは、
アメリカと中国、
そしてちょこっとイギリスが出て来るだけです。
本来宇宙開発はロシアの方が進んでいる筈ですが、
ロシアや中東は全く蚊帳の外です。
勿論日本も出て来ません。
日本語のコピーでは、
「70億人が彼の還りを待っている」そうですが、
その70億人の中には、
僕達は入っていないようです。

アメリカにとっての世界は、
そうした場所なのだと思いますし、
アメリカ様と中国様にひれ伏して許しを請わないと、
生きていけないのが現実なのだと思いますが、
改めてそんなことを、
お金を払って思い知らされるのも、
何だかなあ…
という気がしました。

そんな訳で正直あまり乗れませんでしたが、
仮にこの映画がアカデミー賞を取れば、
要するにそういうことなのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

腹部大動脈瘤と気管支喘息との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

きょうはこちら。
腹部大動脈瘤と喘息との関連.jpg
今年のArterioscler Thromb Vasc Biol誌に掲載された、
腹部大動脈瘤と気管支喘息との関連についての論文です。

気管支喘息は、
気道のアレルギー性の炎症により、
発作的な気管支の収縮と呼吸困難などが生じる病気です。

一方で高齢者に多い、
腹部大動脈瘤は、
腹部大動脈の動脈硬化性変化に伴って、
動脈が拡張して脆くなり、
最悪は破裂して大出血を来すこともある病気です。

この2つの病気の発症するメカニズムは、
基本的には全く別個のものと考えられています。

両者は共に病変部に炎症が存在していますが、
気管支喘息は好酸球や肥満細胞が主体の炎症であるのに対して、
腹部大動脈瘤の病変部には、
マクロファージやリンパ球、好中球が主体の炎症であると、
そのように考えられていました。

しかし、
上記論文の著者らは最近、
腹部大動脈瘤の病変部にも、
アレルギー性の炎症の特徴である、
肥満細胞やIgEが検出された、
という知見を報告しています。

実際腹部大動脈瘤の病変部に浸潤している細胞と、
気管支喘息の気道の病変部に浸潤している細胞は、
多くの同一の炎症物質(サイトカイン)を分泌している、
という知見もあります。

つまり、
意外に同じようなメカニズムで、
気管支喘息と腹部大動脈瘤は増悪し進行している、
という可能性があり、
仮にそうであるとすれば、
両者の悪化は結びついている、
ということも想定されるのです。

そうした推測を検証する目的で、
今回の研究では、
国民総背番号制を取っているデンマークにおいて、
50歳以上で破裂した腹部大動脈瘤の事例と、
破裂はしていない腹部大動脈瘤の事例を多数集積し、
入院中の喘息の診断や気管支拡張剤の使用と、
動脈瘤の破裂などとの関連性を検証しています。

その結果…

半年以内に入院での喘息の診断があると、
その腹部大動脈瘤の破裂のリスクは1.51倍有意に増加し、
1年以内に喘息の診断があると、
その破裂のリスクは2.06倍有意に増加していました。

また、3ヶ月以内に気管支拡張剤の使用があると、
その腹部大動脈瘤の破裂のリスクは1.31倍有意に増加していました。

こうした結果はつまり、
喘息の悪化はその後の腹部大動脈瘤の破裂のリスクになる、
ということを示しています。

つまり、
喘息の炎症が悪化している時には、
仮に腹部大動脈に動脈硬化性の病変が存在していると、
そこにおける炎症も悪化している可能性があり、
それがその後の大動脈瘤の破裂に繋がりやすいのではないか、
という想定が可能なのです。

問題は喘息の炎症をコントロールすることにより、
動脈硬化の進行も予防することが出来るのか、
ということになるのですが、
その辺りは今後の知見の積み重ねを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ジカウイルスの母体感染と胎児の小頭症の事例 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ジカ熱による小頭症の報告.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
ジカウイルスの母体感染から、
胎児に小頭症が発症した事例の症例報告です。

ヤブ蚊によって媒介される感染症である、
ジカウイルスによるジカ熱は、
1947年にアフリカのウガンダで、
ジカ森のアカゲザルからウイルスが分離されたため、
ジカ熱と名付けられました。

最初に報告されたのはアフリカですが、
その後東南アジアや南アジア、
ポリネシアなどでも報告が見られ、
昨年よりブラジル、コロンビア、エクアドルなどの中南米諸国で、
流行が拡大して大きな問題となっています。

このジカ熱の病原体であるジカウイルスは、
日本脳炎ウイルスやデング熱ウイルスと同じ仲間の、
フラビウイルスというRNAウイルスに分類され、
その性質も日本脳炎やデング熱に似通っています。

つまり、
人間から人間への感染は、
原則としては殆ど起こらず
(性行為感染が起こり得るとの報告はあります)、
ヤブ蚊に刺されることによって、
人間の体内にウイルスが入ります。
ウイルスが侵入しても、
多くは症状が出ずに終わります。

ジカ熱はデング熱に似て、
発症した場合の症状も、
発熱や関節痛、筋肉痛や湿疹などで、
概ね風邪と見分けは付かず、
デング熱より軽症です。

それだけであれば、
大きな問題はないのですが、
今回のブラジルの流行のケースでは、
小頭症と呼ばれる胎児の脳の障害が、
母体のジカ熱の感染の事例で非常に多く発症し、
その関連が大きな問題となっています。

ブラジルにおいては、
4000例を超える小頭症の事例が、
ジカ熱の流行後に報告されていて、
これはそれ以前の20倍という急激な増加です。

ただ、その全てに母体のジカ熱の感染が、
確認されているという訳ではありません。

ジカ熱の症状自体は軽度の風邪症状ですし、
診断は全例で行われているという訳ではなく、
症状のない感染もあるからです。

また、ブラジル以外でも、
これまでにジカ熱の流行はあったのですが、
このような小頭症の発症の増加は、
あまり報告されていなかった、
という点もやや奇異な感じを受けます。

今回の報告はスロベニアで診察された、
25歳の妊娠女性が、
おそらくはブラジルの滞在中にジカ熱の感染があり、
その後に胎児に小頭症のあることが確認され、
中絶後に胎児の解剖を行なって、
ジカ熱ウイルスの感染を脳内で確認した、
という事例です。

患者はブラジル滞在中の妊娠13週の時点で、
高熱や関節痛、皮疹などの症状が出現しています。
妊娠20週までの検査では特に異常の指摘はなかったのですが、
ヨーロッパに帰国した後の妊娠29週から32週の時点の超音波検査で、
胎児の発育不全と小頭症、水頭症の所見を認め、
脳内と胎盤には複数の石灰化を認めています。

そして、32週の時点で、
胎児の予後は極めて不良との判断があり、
妊娠は強制的に中止され、
胎児は取り出されて解剖に供されています。

胎児の脳にジカウイルスの構造が認められ、
遺伝子検査でその存在が確認されると共に、
完全なその遺伝子構造の再構成に成功しています。
確認されたジカウイルスの遺伝子は、
アジア由来のものと相同性があることが確認されました。

つまり、
母体の妊娠早期のジカウイルスの感染により、
それが胎盤を介して胎児に垂直感染し、
脳の異常を来したことが、
ほぼ確認されたのです。

胎児の脳以外の部分には、
全く異常が見られなかったことより、
ジカウイルスの垂直感染においては、
ウイルスの中枢神経親和性は極めて高いと想定されました。

今回の事例は妊娠32週の時点で、
記載によればまだ生存している胎児を、
強制的に中絶している、
という点が、
勿論倫理委員会を通している、
というような記載はあるのですが、
倫理的にどうなのか、
という違和感を感じさせます。
「母親の希望により」という記載がされているので、
母体に危険があった、
ということではなさそうです。

その是非はともかくとして、
日本では通常はなされないような判断であったことは、
間違いがないように思います。

この報告および、
他の少数ですが同様の知見により、
妊娠早期のジカウイルスの感染により、
胎児への垂直感染が起こり、
その感染は脳に親和性がある、
ということは間違いがなさそうです。

ただ、厳密に言えば、
小頭症自体は感染とは別個に生じた可能性も、
完全に否定は出来ません。

そして、
何故ブラジルでのみそうした事例が多いのか、
全てのそうした事例を感染の影響と考えて良いのか、
というような事項については、
まだ不明の点を多く残しています。

しかし、いずれにしても、
今後こうした点については、
明らかにされる日は近いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

プロトンポンプ阻害剤と認知症との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日のため、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
プロトンポンプ阻害剤と認知症.jpg
今月のJAMA Neurology誌の解説記事ですが、
プロトンポンプ阻害剤という胃薬で、
認知症の発症が増えるのでは、
というショッキングな内容です。

プロトンポンプ阻害剤は強力な胃酸の抑制剤で、
その効果の高さから、
世界中で広く使用されている薬剤です。

その使用は通常は一時的とされていますが、
逆流性食道炎の治療や、
抗凝固剤や抗血小板剤を使用時の副作用予防には、
継続的な使用が認められているので、
継続の長期処方も多いのが実際です。

これは海外の統計ですが、
65歳以上の人口の2から3%は、
この薬を長期使用している、
というデータもあります。

このように広く使用されているプロトンポンプ阻害剤ですが、
その胃酸を抑える作用の強力さから、
長期使用の際の有害事象も、
しばしば報告されるようになりました。

以前同じJAMA系列の医学誌の解説をご紹介しましたが、
ほぼ確定したものとして、
プロトンポンプ阻害剤の長期使用により、
急性と慢性を含めた腎機能障害と、
低マグネシウム血症、
クロストリジウム・デフィシル菌による腸炎、
そして骨粗鬆症のリスクが増加します。

それに加えて、
今回指摘されているのは認知症の発症リスクの増加です。

2015年に発表されたドイツの認知症研究の疫学データでは、
2911名の75歳以上の対象者を解析した結果として、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
認知症の発症リスクは1.33倍(1.04から1.83)、
アルツハイマー型認知症のリスクが1.44倍(1.01から2.06)、
それぞれ有意に増加した、
と報告されています。
これはやや微妙な結果ではあるのですが、
上記解説記事と同じ紙面に掲載された、
矢張りドイツの健康保険のビッグデータを解析した結果でも、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
認知症のリスクは1.44倍(1.36から1.52)、
有意に増加したとする結果になっています。
例数は7万例を超えます。

数千例程度のデータでばらつきはあるものの若干の傾向があり、
それが数万例規模のデータによって、
より絞り込まれている感がありますから、
どうやらこうした現象があること自体は、
間違いのないことのようです。

それでは、
プロトンポンプ阻害剤は、
認知症の原因の1つなのでしょうか?

それについては、
まだ断定的なことは言えません。

高齢者でプロトンポンプ阻害剤を長期間飲んでいるような人は、
他にも多くの病気を持ち、
別の薬も複数飲んでいる可能性が高いからです。

たとえば、
アスピリンを心血管疾患の予防のために使用していて、
その副作用を予防するために、
プロトンポンプ阻害剤を使用しているような患者さんでは、
アスピリンを使用しているような状態、
すなわち心臓病や脳梗塞などが、
認知症のリスクを上げている可能性もあります。

勿論ある程度の認知症の別個のリスクについては、
補正した上で統計データは出されているのですが、
全てのそうした要因を、
補正するようなことは、
実際には非常に困難です。

従って、
この問題については、
もう少し対象者の条件を同じに設定したような臨床データが、
必要不可欠なものになるのです。

それでは、
仮にプロトンポンプ阻害剤が認知症の原因になるとして、
そのメカニズムは想定されているのでしょうか?

幾つかの知見が存在しています。

まず、プロトンポンプ阻害剤は、
血液脳関門を通過するので、
脳に作用する可能性は否定出来ません。

動物実験のレベルでは、
プロトンポンプの阻害により、
アミロイド蛋白の産生や分解が、
共に促進される、というデータがあります。
プロトンポンプ阻害剤であるランソプラゾールにより、
脳内にβアミロイドが蓄積した、
という論文もあります。

また、ビタミンB12などの神経の成長に関わる栄養素の吸収を、
プロトンポンプ阻害剤が阻害する、
という知見も、認知症のリスクに関連がないとは言えません。

こうした知見からは、
プロトンポンプ阻害剤が認知症、
特にアルツハイマー型認知症のリスクになることが、
場合によっては有り得ることのようにも思われます。

いずれにしても、
現時点で分かっているのはここまでです。

今後プロトンポンプ阻害剤と、
認知症との間のミッシングリンクが、
その存在の有無はともかくとして、
解明されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

遺伝リスクの告知とその与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
遺伝リスクの告知とその影響.jpg
今年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
認知症と心血管疾患についての遺伝リスクと、
その告知の影響についての論文です。

遺伝子検査は最近かなり身近になりました。

単独の遺伝子があることで、
高い確率で発症するような、
遺伝性の強い病気の診断のための検査は、
特定の専門医療機関でのみ施行されています。

また、抗癌剤の有効性を決定するような遺伝子検査もあり、
これも癌の治療に限って、
その専門医療機関でのみ施行されるのが通例です。

こうした遺伝子検査は、
健康保険の適応になっていますが、
通常の医療機関で行われることは少ないので、
一般の多くの方にとって、
遺伝子検査はあまり医療機関で行われるものではありません。

その一方で多くの遺伝子検査と称されるものが、
ネットなどでは一般に販売されています。

この遺伝子検査の中身は玉石混交ですが、
SNPと呼ばれる点遺伝子変異を解析し、
環境要因と遺伝要因が複雑に絡み合う病気の発症において、
その遺伝要因の一部に関連するものを測定し、
それを平均的なリスクと比較して、
何倍というように表現することが通常です。

こうしたSNPの中には、
その意義が確立しているものもありますし、
ただ単独の論文で報告されているだけ、
というレベルのものもあります。

このような意味づけが確定していない検査について、
医療機関がどのように関わるべきか、
という点については、
まだ意見は集約はされてないようです。

さて、こうしたSNPの中で、
その意義がほぼ確立したものとして、
APOEのε4という遺伝子があります。
この遺伝子の有無により、
アルツハイマー型認知症の発症には違いがあり、
また心血管疾患のリスクも増加するという報告もあります。

この遺伝子タイプの解析は、
日本でも複数の遺伝子検査会社で施行されています。

このAPOEのε4は、
アルツハイマー型認知症のリスクの判定として、
行なわれていることが多いのですが、
実際には心血管疾患のリスクとも関連しています。

それでは、
この検査結果を説明する場合に、
アルツハイマー型認知症のリスクとしてのみ、
受診者に説明する場合と、
心血管疾患のリスクについての説明する場合とで、
受診者のその後の行動や結果から受ける心理的な影響には、
差があるのでしょうか?

ちょっと回りくどい感じの問題提起ですが、
上記文献の著者らは、
以前にAPOEのε4の検査を、
アルツハイマー型認知症のリスク判定として施行し、
その後の心理的な影響を観察した論文を発表していて、
その結果としては、
その後受診者はうつ病を発症するなど、
ネガティブな影響は見られなかった、
とする内容になっていました。

今回の研究は更に心血管疾患のリスクについての説明を付加することで、
別個の心理的、また行動的な変化がみられるかを検証しています。

アメリカの4か所の病院において、
健康成人257名を登録し、
APOEのε4の検査を行って、
くじ引きで2つのグループに分けると、
一方は認知症に対する告知のみを行ない、
もう一方は認知症のリスクに併せて、
心血管疾患についてのリスクの告知も行ないます。

その上で、
12か月の経過観察を行ない、
うつ尺度などの心理的な変化と、
その間の生活改善などへの取り組みの有無を比較します。

その結果…

アルツハイマーリスクのみの告知群では37%、
心血管疾患リスクも併せて告知する群では27%の対象者が、
APOEのε4の遺伝子を持っていました。

12か月の時点で、
認知症リスクのみの告知群と、
心血管疾患を含めた告知群との間で、
うつ尺度の数値には有意な差は認められませんでした。
APOEのε4のキャリアーのみの解析では、
心血管疾患を含めて告知した群の方が、
認知症のみの告知群より、
うつ傾向は少ないという結果になっていました。
遺伝子の変異の有無には関わらず、
心血管疾患を含めて告知した群の方が、
より生活改善への行動変化を伴っていました。

要するに、
認知症と心血管疾患のリスクを両方告知した方が、
その後の予防のための選択の幅は広がり、
リスクを減らそうというポジティブな行動に繋がる、
という結果です。

本当でしょうか?

心血管疾患のリスクについては、
そうしたことは日本でもある程度言えるのではないかと思います。

血圧や減塩、コレステロールや中性脂肪の管理、
内臓脂肪の減少や体重の適正化など、
予防のためにするべきことは、
誰でも1つくらいはあるからです。

そうした改善を数値化して、
リスクが低下したと言われれば、
遺伝リスク自体は変わらなくても、
何となくホッとしたような気分になるものです。

しかし、認知症の予防という点については、
リズムを伴う運動の習慣を持つ、
趣味を持って多くの人と触れ合うなど、
あまり数値化出来るような目標ではないことが多く、
何をすれば良いのか、
と迷ってしまうことも多いのではないかと思います。

従って、この2つの告知はニュアンスの違うもので、
高齢者社会が本格化する中で、
認知症のリスクの告知に関しては、
その方のパーソナリティを理解した上で、
より慎重な告知とその後のフォローが必要になるのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

利尿剤の併用の耐糖能に対する影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
利尿剤の併用と血糖への効果.jpg
Lancet Diabetes Endocrinol誌に掲載された、
通常の高血圧治療にサイアザイドと呼ばれる利尿剤を、
上乗せした場合と、
サイアザイドとアミロライドという2種類の利尿剤を併用した場合の、
血糖上昇の副作用を比較した論文です。

サイアザイド系の利尿薬は、
遠位尿細管という部位において、
ナトリウムの排泄を促進するタイプの薬です。

高血圧症の多くにおいては、
ナトリウムが身体に貯留することが、
大きな要因となっているので、
サイアザイド系の利尿剤は、
高血圧の治療において、
非常に有用性のある薬なのです。

サイアザイド系の利尿剤は、
最も古い高血圧治療薬であると共に、
最も臨床データの豊富な降圧剤でもあります。

高血圧の治療の有用性を証明した臨床試験の多くは、
サイアザイド系の利尿薬を使用したものなのです。

しかし、サイアザイド系の利尿剤には、
特有の副作用があります。

その中でも臨床的に問題になるものの1つは、
このタイプの薬を使用することにより、
血糖値が上昇するという事実です。

その原因は、
カリウムの欠乏にあると考えられています。

インスリンの作用により、
細胞内にブドウ糖が取り込まれる時には、
同時にカリウムも細胞内に移動するので、
カリウムの欠乏状態では、
耐糖能も低下するのですが、
サイアザイド系の利尿剤は、
ナトリウムと一緒にカリウムの排泄も促進するので、
細胞外のカリウムの欠乏状態を、
生じやすいと想定されているからです。

サイアザイド系利尿薬を使用する目的は、
血圧の低下とナトリウムの排泄を促すことで、
それは心血管疾患の予防に有効であることが実証されていますが、
その一方で糖尿病は、
単独で強力な心血管疾患のリスクになります。

そうなると、
心血管疾患を治療するために、
サイアザイド系利尿剤を使用しても、
それで糖尿病になってしまったら、
その効果の多くは相殺されてしまう、
という結果にもなりかねません。

それではどうすれば良いのでしょうか?

1つの方法としては、
サイアザイドのカリウム排泄作用に拮抗する作用を持つ、
カリウム保持性利尿薬、
と呼ばれるタイプの利尿剤を、
サイアザイドと併用することで、
血糖上昇の副作用を予防する、
という戦略が考えられます。

これは実際には心不全に利尿剤を使用する際には、
比較的良く使われている方法です。

サイアザイドより強力な利尿作用を持つ、
ループ利尿剤(商品名ラシックスなど)は、
血液のカリウムを低下させるので、
アルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトンを、
ループ利尿剤と併用して、
カリウムの低下を予防するのです。

今回の研究では、
スピロノラクトンとは別個のメカニズムの、
カリウム保持性利尿薬であるアミロライドを、
サイアザイドと併用して、
単独の場合とその後の血糖上昇の違いを検証しています。

アミロライドは日本未発売のカリウム保持性利尿剤で、
遠位尿細管において、
2箇所の作用点でナトリウム利尿を促すタイプの薬で、
一部はアルドステロンの作用を阻害しています。

イギリスの複数施設において、
大多数は利尿剤以外の降圧剤を使用していながら、
外来の収縮期血圧が140以上で、
家庭血圧が130以上の18歳から80歳の441名を登録。
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで3つのグループに分け、
第1グループはアミロライド1日10ミリグラム、
第2グループはサイアザイドであるハイドロクロロサイアザイドを、
1日25ミリグラム。
第3グループはアミロライド5ミリグラムと、
ハイドロクロロサイアザイド12.5ミリグラムを併用して、
12週間の観察を行ない、
その後に薬剤量は全て2倍に増量して、
トータル24週間の経過観察を行なっています。

高血圧以外に1つ以上の心血管リスクがあり、
顕性の糖尿病はないことが登録の条件です。
降圧剤としては、
カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断剤、
直接レニン阻害剤の使用は容認されています。
全ての群でほぼ9割の患者さんは、
ACE阻害剤かアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が使用されています。

その結果、
開始後12週間と24週間の、
ブドウ糖負荷後2時間の血糖値は、
サイアザイドの単独と比較して、
アミロライド単独と両者の併用では、
有意に低いものになっていました。

つまり、
サイアザイドによる血糖上昇は、
アミロライドの併用により予防されていました。

血圧の降下作用も併用群で有意に高く、
血液のカリウム値が基準値を超えていたのは、
アミロライド単独群で4.8%、
併用群で2.3%に認められ、
最高値は5.8mmol/Lでした。
カリウムの上昇につていも、
ほぼ許容出来る結果になっています。

つまり、
利尿剤を高血圧に使用する場合には、
サイアザイドの単独ではなく、
アミリライドとの併用が、
効果も高く、血糖上昇などの副作用も生じにくい、
ということになります。

ACE阻害剤もアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬も、
カリウムは増加する方向に働く筈なので、
サイアザイドの単独でも、
問題はないようにも思われますが、
今回のデータを見る限り、
それでは血糖上昇を抑えるには不充分のようです。

日本ではアミロライドが使用出来ないので、
スピロノラクトンやアルドステロン拮抗薬のエプレレノン、
またトリアムテレンのようなカリウム保持性利尿薬を、
代用して使用することになります。

エプレレノンとサイアザイド、
ACE阻害剤とカルシウム拮抗薬の4種併用試験は、
上記論文の姉妹的な試験で、
難治性高血圧に有効な組み合わせという報告がありますから、
エプレレノン(商品名セララ)の併用が、
一番無難であると考えて良いかも知れません。

ただ、アミロライドの使用以外では、
サイアザイドによる血糖上昇の抑制は、
実証はされていない、
という点には注意が必要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

根本宗子「ねもしゅーのおとぎ話 ファンファーレ・サーカス」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ねもしゅうのファンファーレ・サーカス.jpg
月刊「根本宗子」で大活躍の根本宗子さんが、
番外公演的な試みとして、
ねもしゅーのおとぎ話、
という新作公演を行なっています。

場所は新宿歌舞伎町の「FACE」で、
小規模なプロレスの興業などが良く行われるホールですが、
最近は演劇の公演への利用も多くなっています。
ただ、割と高額なドリンクチャージがあるので、
どうなのかな、と思わなくもありません。
演劇向きのホールではないので、
ガッチリとしたセットは組めませんし、
根本さんの芝居作りは、
今のところ小劇場がしっくり来る感じです。

作品は月刊「根本宗子」の、
梨木智香さんとあやかさんに、
ゲストとして趣里さんと蒼波純さんが加わり、
そこに「おとぎ話」という4人組のバンドが、
生演奏としてコラボする、というものです。

夢見がちの女子中学生が、
絵本の中に入ってしまう、という、
純然たるファンタジーの世界で、
後半には如何にも根本さんというひねりもあるのですが、
トータルにはやりたいことと、
舞台の技術レベルとの間に、
大分ギャップはあったように感じました。

こうした作品はもっとふんだんにお金を掛けて、
ミュージカル的に処理するか、
それとも昔の劇団300のように、
狭い空間に無理矢理大仕掛けで力技を見せるか、
どちらかでないと、
成立はしないという気がするからです。

以下ネタバレを含む感想です。

舞台の前方に巨大な本が開かれていて、
何か胡散臭い梨木智香さん演じる、
失敗で飛べなくなった妖精が待ち構えているところへ、
蒼波純さんが演じる夢見がちの少女と、
神岡実希さん演じる現実的な少女がやってきて、
2人はひょんなことから、
インチキ妖精の企みで、
「ファンファーレ・サーカス」という、
哀しい結末の童話の本の中に入ってしまいます。

それは、
あやかさん演じる団長の母親のストリップと、
趣里さん演じる美少女の娘の踊りが売り物の、
ファンファーレ・サーカスという奇妙なサーカスの話で、
サーカスの演奏を務める4人組のバンドは、
失踪したボーカルを探しています。

ボーカルの「アリマ」(実際のバンドのボーカルと同じ名前です)として、
絵本に入った蒼波純さんが趣里さんにスカウトされるのですが、
悪い魔法使いと団長が取引をしていたために、
趣里さんが20歳の時に舞台の上で、
歩けなくなってしまいます。

ここまで絵本のストーリー通りに話は進むのですが、
そこで「こんな悪が栄えるような悲しい終わりはおかしい」と、
キャストが皆で逆キレし、
持ち込まれた本の最後のページを破ってしまうので、
ストーリーという縛りを失った登場人物は暴走し、
そこで蒼波さん演じる夢見がちの少女が、
ペンを握ってラストをハッピーエンドに書き換えます。

ラストはその後童話作家となった、
かつての夢見がちの少女の元に、
10年ぶりにかつての妖精が姿を現して終わります。

物凄く定番の、
「ネバー・エンディング・ストーリー」的な話ですが、
ラストには根本さんの作品でお馴染みの、
メタプレイ的な要素が織り込まれています。

バンドの「おとぎ話」のメンバーは、
常時舞台の奥にいるのですが、
皆団長によって檻の中に閉じ込められている、
という設定になっていて、
芝居にも参加しつつ、
しっかり演奏もする、
というスタイルがユニークで、
この趣向は成功していたと思います。

ミュージカル仕立てで歌と踊りもふんだんにありますが、
貧相なディズニーランドという感じは否めません。
メイクや衣装は何処かティム・バートンの「アリス」のようですし、
もう少し独創的で統一感のあるビジュアルが、
あった方が良かったのではないか、
というように思いました。

キャストでは、
妖精役の梨木さんが意外にフィットしていて面白く、
あやかさんの大暴れも新鮮です。
趣里さんのテンションの高い独特の個性も、
面白く感じました。
蒼波さんは微笑ましい感じの初舞台です。

総じて、
前回のプロデュース公演の時も感じましたが、
統一感が今一つで、
やり切れていない感じが否めません。

この会場でこの舞台というのは、
難しい面があるのだと思いますが、
もう少しレベルの高いものを観たかったな、
というのが正直な感想です。

次回に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

星屑の会「星屑の町 完結編」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日ですが、
石田医師は休診で、
午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
星屑の町.jpg
1995年が初演という演劇の大河シリーズ、
水谷龍二が愛すべきムード歌謡のコーラスグループを描いた、
「星屑の町」のシリーズ第7作が、
完結編と銘打って今下北沢の本多劇場で上演されています。

これは僕は1996年の第1作の再演で初めて観て、
巻頭大平サブローのソロに、
ラサール石井、小宮孝泰、でんでん、渡辺哲、有薗芳記のコーラスが付く、
という素敵な趣向のライブに、
とても楽しい気分になりました。
その後楽屋の揉め事や人間模様が展開されますが、
そちらはそれほど楽しくはありませんでした。

第2作も楽しみにして出掛けましたが、
話は第1作より暗くなっていて、
ゲストの平田満さんが、
悪い時の暗いじめっとした芝居をしていたので、
同工異曲な筋立てもあって、
それ以降は毎回は足を運ばなくなりました。

2006年の作品からは大平サブローさんも出なくなり、
戸田恵子さんがソロを歌いました。
当初は脇役を色々と演じていた菅原大吉さんが、
途中からリーダーの小宮さんの弟ということになり、
コーラスに加わるような異動もありました。

完結編と銘打った今回は、
10年ぶりに大平サブローさんも復帰し、
戸田恵子さんも出演して、
かつてのオールスターキャストが顔を揃えています。

オープニングにシャ乱Qの「ズルい女」のイントロが流れると、
それだけでグッと来る感じがあります。
第1作のオープニングがこの曲のライブで、
丁度流行っていた時期だったのです。

このシリーズは、
ライブの場面は抜群に良いのですが、
お芝居として繰り広げられる、
グズグズの人情話が、
僕にはあまり好みでなかったのですが、
今回の作品は、
謎の実業家に招かれて、
北海道のもう閉鎖されたグランド・キャバレーに、
かつてのコーラスグループが招かれ、
一夜限りのライブのために、
8年ぶりにメンバーが集まる、
という設定自体がなかなか良いですし、
それぞれの人間ドラマが過不足なく描かれ、
ラストも綺麗に祝祭的に着地していて、
個人的には今までに観たこのシリーズの中で、
一番の傑作なのではないかと思いました。

何よりも良いのは、
意外な人物のその後を含めて、
ほぼメンバー全員が幸せになっていることで、
ラストのアンコールには、
こちらまでそのささやかな幸せの、
おすそ分けを受けた気分になるのです。

キャストは抜群で名人芸を堪能出来ますし、
ディテールにはちょっと嫌な部分もあるのですが、
トータルには大変気分良く劇場を後にすることが出来ました。

ほぼラストだと思いますので、
気になった方は是非劇場に足をお運び下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

新規抗凝固剤は本当にワルファリンより優れているのが? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リバーロキサバンの臨床試験は信頼出来るのか?.jpg
今月のBtitish Medical Journal誌に掲載された、
解説記事ですが、
リバーロキサバン(商品名イグザレルト)という、
ワルファリンに代わる新規抗凝固剤の臨床試験において、
ワルファリンのコントロールの精度に、
問題があったのではないか、
という指摘がなされています。

これまでにも何度もご紹介をしていますが、
ワルファリンという、
これまで広く使用されて来た、
ほぼ唯一の内服の抗凝固剤に代わって、
NOACと総称される新規抗凝固剤が、
その主流の位置を占めつつあります。

直接トロンビン阻害剤であるダビガトラン(プラザキサ)が先陣を切り、
その後リバーロキサバン(イグザレルト)、
アピキサバン(エリキュース)、
エドキサバン(リクシアナ)と、
凝固因子のⅩa因子阻害剤と呼ばれる薬が、
次々と発売され実際に臨床で使用されています。

この新規抗凝固剤の、
患者さんの側からのメリットは、
ワルファリンのように定期的に血液の検査を行ない、
その効果を確認する必要がなく、
また納豆などの食事制限がないという点にあります。

その効果は各薬剤の承認時の臨床試験では、
良くコントロールされたワルファリンと同等の、
血栓症や塞栓症の予防効果を持ち、
有害事象である重篤な出血の発症については、
ワルファリンより概ね軽微である、
と報告されています。

ところが…

今回指摘されているのは、
ROCKET-AFと題された、
リバーロキサバン(イグザレルト)の臨床試験において、
ワルファリンのコントロールが、
正確に行われていなかったのではないか、
という問題点です。

この臨床試験においては、
慢性心房細動という不整脈の患者さんに対して、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はワルファリンを使用し、
もう一方はリバーロキサバンを使用して、
経過観察を行なっています。

ワルファリンは定期的に血液検査をして、
量の調節を行なう必要があるのですが、
この試験においては、
その場で短時間で検査結果が出せる、
PT-INRの迅速診断の装置を用いて、
そのコントロールを行なっています。

現在日本の臨床では、
コアグチェックという商品名の器具が、
保険適応もされています。
これは血糖の自己測定に似たタイプのもので、
もう少し多くの血液が測定には必要なのですが、
基本的には皮膚を針で刺して血液を絞り出すことにより、
1分程度でその場でPT-INRの測定が可能です。

これと同様のメカニズムの、
別個の測定器によって、
リバーロキサバンの臨床試験は、
行われているのですが、
実はこの測定器はヨーロッパにおいて、
データが不正確で実際より低く数値が出るとして、
リコールがされているのです。

これが仮に事実であるとすると、
ワルファリンのコントロールにおいては、
実際より低い数値が出ているので、
適正より多くのワルファリンが使用されることになり、
効果はともかくとして、
より出血などの有害事象は、
頻度が多くなっても不思議はありません。

そうなると、
本当に適正にコントロールされたワルファリンと比較して、
リバーロキサバンの方が出血などの有害事象が少ないのか、
その根拠が怪しくなってしまいます。

British Medical Journal誌の調査によれば、
アピキサバンとアドキサバンの臨床試験においては、
別個の精度的には問題はないと考えられる、
迅速測定の機器が使用されていました。

ただ、通常臨床試験の報告書や論文には、
どのような器具を用いてワルファリンのコントロールを行ったのか、
という詳細までは書かれていないことがほとんどで、
それは問題ではないかと上記解説には書かれています。

患者さんにとって多くのメリットが、
新規抗凝固剤にあることは間違いがありませんが、
その評価は多分にワルファリンより良く見せようという、
意図の元に成立している面があります。
これは不正というような性質のものではないのですが、
研究に参加する専門家も、
新薬の方がより良い筈だ、
という先入観を持っている側面はあるので、
それが単独の臨床試験においては、
結果の判断や試験の精度管理に、
影響を与えるという可能性は否定出来ないのです。

従ってこうした新薬において、
本当に有害事象が、
良くコントロールされているワルファリンより少ないのかについては、
今後更なる検証が必要なように思います。

個人的にはワルファリンには、
Ⅹa阻害剤にはない有害事象が多いので、
そのメカニズム的には、
Ⅹa阻害剤がより有用性が高いと考えていますが、
その安全な使用法がどうあるべきかについては、
今後更なる検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

フェリーニ「カサノバ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
昼間はのんびりして、
夜は根本宗子さんのお芝居を観に、
新宿まで出掛ける予定です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
カサノバ.jpg
1976年に製作されたイタリア映画の巨匠、
フェデリコ・フェリーニ監督の「カサノバ」です。
これは海外版のソフトのパッケージです。

フェリーニは幻想的でセクシャルでグロテスクで豊穣なイメージを、
巨大なセットで仰々しく描く一方、
ノスタルジックな監督の幼少期の原風景を、
こちらは繊細かつ叙情的に綴り、
また実質的処女作の「道」から続く、
芸人達の生活を哀感を持って描く手法も味があります。

イタリア映画は戦後すぐのネオ・リアリズムの諸作
(たとえはデ・シーカの「自転車泥棒」)から、
1960年代には不条理映画として、
時代を先取りしたアントニオーニや、
ヨーロッパ的文化の豊穣さを感じさせる、
藝術的なモニュメントのようなヴィスコンティなど、
多くの監督の名品を輩出して、
一時は「高級映画」の代表としてブランド的イメージがありました。

その一角を間違いなく担っていたのが、
フェデリコ・フェリーニ監督で、
封切りで観たのは、
この「カサノバ」と、
「女の都」、「そして船は行く」、「ジンジャーとフレッド」など、
数作品だけでしたが、
名画座では特集上映がしばしば行われ、
「サテリコン」、「フェリーニのアマルコルド」、
「フェリーニのローマ」、「魂のジュリエッタ」など、
多くの作品を幸いなことにスクリーンでフィルムで観ることが出来ました。

「甘い生活」と「道」は、
京橋のフィルムセンターで「映画史上の名作」で観ました。

一番多く映画を観ていた、
高校時代のことです。

フェリーニの作品は当時はその幻想性が僕の好みで、
多くの作品では幻想的な巨大セットの撮影画面と、
ロケ撮影のリアルな場面とが混在していて、
それがトータルにはギクシャクした感じに思えて、
幻想場面は大満足であったものの、
映画全体としてはいつも不満が少し残りました。

「道」はリアリズムに徹して素晴らしかったのですが、
フェリーニの本領発揮とは言えない部分もありました。
カラー撮影となった「魂のジュリエッタ」以降では、
この「カサノバ」が、
全ての場面をセットで描き、
非常に退行的で閉鎖的ではありますが、
巻頭からラストまで一貫した幻想世界を展開して、
公開当時にスクリーンで観た時には、
「これぞフェリーニ」と、
膝を打つような思いがありました。

内容は中世の色事師カサノバの一代記を、
性豪のホラ吹き絵巻として、
幻想的かつグロテスクに、
また一抹の哀感を持って描いたもので、
フェリーニの脳内世界をそのまま見させられているような怪作です。

公開時に観て特に印象的だったのは、
巨大な鯨に呑まれる夢を見る場面と、
自動人形に恋をする場面です。

音楽は勿論ニーノ・ロータで、
この作品では擬似オペラまで作曲しています。
こがまた魅力的なのです。

ただ、一時期偏愛していたこの「カサノバ」ですが、
本当に久しぶりにWowowで再見すると、
性描写がややステレオタイプで凡庸に感じました。

その一方でかつてはダメだと思っていた、
「フェリーニのアマルコルド」や「フェリーニのローマ」が、
意外に良かったのだと再認識しました。

映画というのは、
観る時期によってもその印象は変わるようです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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