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難治性うつ病に対するアリピプラゾール(エビリファイ)の有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
難治性うつ病に対するエビリファイの効果.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
高齢者の難治性のうつ病に対して、
抗精神病薬のアリピプラゾール(商品名エビリファイ)を、
上乗せで使用することの、
効果と安全性とを検証した論文です。

60歳以上の高齢者のうつ病は、
退職などの環境の変化や、
身体の病気などによる内的な変化をきっかけとして、
発症することが多く、
生命予後を含めた患者さんの予後に、
大きな影響を与えると考えられています。

その一方で、若年層のうつ病と比較して、
高齢者のうつ病は薬が効き難く、
副作用や有害事象もより多いことが知られています。
これまでの報告によれば、
うつ病の薬物治療の第一選択薬である、
SSRIやSNRIの治療において、
55から81%の患者さんが抵抗性であるとされています。

であるにも関わらず、
多くの薬剤の臨床試験は、
高齢者は対象外となっているので、
治療抵抗性の高齢の患者さんに対して、
どのような薬剤が有効であるのか、
という点についてのデータは非常に限られています。

そのため、
個々の医師が自分の経験的な判断で、
適宜他の治療薬を単独もしくは上乗せで、
使用しているのが実態なのです。

アリピプラゾール(エビリファイ)は、
非定形精神病薬というタイプの薬剤の1つで、
元々は統合失調症の治療薬ですが、
抗うつ作用もあることより、
治療抵抗性のうつ病に対しても、
その有効性が確認されています。
しかし、その多くは高齢者を対象とした試験ではないので、
60歳以上の患者さんに使用した場合の、
効果と安全性についてのデータは限られています。

ただ、以前ご紹介したように、
認知症の高齢者の問題行動に対して、
認知機能を低下させることなく有効性を示した、
という報告はあり、
その意味で高齢者のうつ病にも適した薬剤である可能性があります。

今回の研究はアメリカとカナダの3か所の専門施設において、
通常のSNRIの治療に抵抗性の、
60歳以上の大うつ病の患者さん、
トータル181名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方はアリピプラゾールを上乗せで使用し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
12週間の経過観察を行なっています。

投薬はまず468名の患者さんに、
ベンラファキシンというSNRIを、
徐方剤で1日150から300ミリグラム使用します。
12週間の治療で改善したのが191例で、
有効事例およびその他の理由で不適応とされた事例を除外して、
アリピプラゾールが適応の181名が選ばれています。
アリピプラゾールは1日2ミリグラムで開始され、
問題がなければ10ミリグラム、
必要に応じて15ミリグラムを上限に増量されます。

その結果…

治療により反応して寛解した事例は、
偽薬群で26例(29%)に対して、
アリピプラゾール群では40例(44%)で、
アリピプラゾールの有効性が確認されました。
(NTTは6.6です)

有害事象については、
アリピプラゾール使用群でアカシジアが26%、
パーキンソン様症状が17%に発症していました。
これは偽薬より有意に高い発症率です。
心電図のQT延長に関しては1例のみの報告で、
自殺企図や自殺にも両群で差はありませんでした。

このように、
60歳以上の高齢者のうつ病で、
SSRIやSNRIが無効の事例では、
アリピプラゾールの上乗せが、
寛解率を上げる上で有用な治療であることはほぼ間違いがなく、
認知機能にもあまり影響を及ぼさない、
という知見とも併せて考えると、
こうした場合には、
他の抗精神病薬より、
優先して使用するべき薬剤であると、
考えて良いように思います。

ただ、パーキンソン症状やアカシジアは、
明らかに高齢者では高く発症していて、
こうした有害事象への注意は、
より慎重であるべきだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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