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甲状腺癌術後の心房細動発症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺術後の心房細動発症リスク.jpg
今年のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
分化型の甲状腺癌治療後の心房細動発症リスクについての論文です。

悪性度の高くない分化型の甲状腺癌の治療は、
欧米の標準治療としては、
甲状腺の全摘と放射性ヨードのアブレーションとの併用です。
この場合、確実に甲状腺機能低下症になりますから、
患者さんは一生、甲状腺ホルモン剤を服用しなければいけません。
それも、TSHは甲状腺を刺激しますから、
TSHを正常より抑制するように、
やや多めの量を投与することが一般的です。

日本では放射性ヨードのアブレーションは、
よりその適応が限定されていて、
甲状腺も全摘はされないことが多いと思いますが、
術後の甲状腺ホルモンによるTSHの抑制は、
しばしば行われています。

つまり、治療として、
潜在性甲状腺機能亢進症の状態を作っているのです。

ここで1つの問題は、
この医原性の潜在性甲状腺機能亢進症により、
身体に弊害は生じないのだろうか、
という点にあります。

潜在性甲状腺機能亢進症では、
心臓に負荷が係ることにより、
慢性心房細動のような、
心臓の疾患のリスクが増加する可能性があるとされています。

それでは、
甲状腺癌の術後でTSHが抑制されている患者さんでは、
実際にどの程度のリスクがあるのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの甲状腺癌術後の予後についての疫学データを活用して、
518名の甲状腺癌術後の患者さんと、
他の条件をマッチさせたコントロール1563名を対比させ、
心房細動の発症リスクを検証しています。
各群の平均年齢は48.6歳です。

その結果…

心房細動の発症リスクは、
コントロールでは年間1000人当たり2.7人であるのに対して、
甲状腺癌術後の患者さんでは6.2人で、
他の条件を補正した結果として、
甲状腺癌術後の患者さんでは、
コントロールの2.47倍、
有意に心房細動の発症率は増加していました。

このリスクはTSHの数値自体とは相関しませんでしたが、
アブレーションの放射性ヨードの線量とは、
弱い相関を示しました。

このように、
甲状腺癌術後で放射性ヨードのアブレーションを施行した患者さんでは、
そうでない場合と比較して、
2倍以上その後の心房細動の発症リスクが高まることが確認されました。

ただ、
これが潜在性甲状腺機能亢進症による現象であるのか、
それとも手術自体や放射性ヨード治療の影響であるのかについては、
明確な結論には至りませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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