So-net無料ブログ作成
検索選択

非アルコール性脂肪肝炎をインクレチンで治療する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
NASHに対するGLP1の効果.jpg
先月のLancet誌にウェブ掲載された、
糖尿病の注射薬により非アルコール性脂肪肝炎が改善した、
という、
第2相臨床試験の結果をまとめた論文です。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)というのは、
お酒を飲まない人に、
アルコール性肝炎のような状態が起こる病気で、
以前は通常の脂肪肝と同じように考えられていましたが、
良性の脂肪肝とは違って進行性で、
肝硬変や肝臓癌を発症する危険のある病気として、
近年注目されるようになりました。

肥満やメタボ、糖尿病と深い関連があり、
その進行を食い止めることが、
糖尿病やメタボの患者さんの予後を改善する上で、
非常に大きな要素となっているのです。

食事制限や運動のような生活改善が、
治療の柱となりますが、
その一方で有効な治療薬は、
未だ決定的なものは開発されていません。

ビタミンEとインスリン抵抗性改善剤であるピオグリタゾンには、
一定の有効性が確認されていますが、
それぞれ有害事象もあり、
長期予後の改善に結び付くかは未知数です。
胆汁酸の一種であるオベチコール酸には、
肝硬変への進展を抑制する効果が報告されていますが、
まだ開発の途上にあります。

そんな中で注目を集めている薬の1つが、
糖尿病の治療薬であるインクレチン関連薬のリラグルチドです。

リラグルチド(商品名ピクトーザ)は、
インクレチンと呼ばれる消化管ホルモンの注射薬で、
血糖上昇ホルモンであるグルカゴンを抑制し、
インスリン抵抗性を改善して、
体重を減少させる効果があります。

こうした作用は、
肝臓の細胞が脂肪をため込んだような状態にある、
非アルコール性脂肪肝炎においても、
理屈の上では病態の改善に結び付くことが想定されます。

そこで今回の臨床試験では、
イギリスの4か所の専門施設において、
肝臓の生検を行なって非アルコール性脂肪肝炎と診断された患者さん、
トータル52名をくじ引きで26名ずつの2つの群に分け、
一方はインクレチン関連薬の注射剤である、
GLP-1アナログのリラグルチド(ピクトーザ)を使用し、
もう一方は偽の注射を、
患者さんにも主治医にも分からないように使用して、
その後48週の時点で再度肝臓の生検を行ない、
改善したかどうかを評価します。

リラグルチドは1日0.6ミリグラムの用量で開始し、
問題がなければ1.8ミリグラムまで段階的に増量します。
(日本での糖尿病への使用料は0.9ミリグラムまでです)

肝臓の生検は2名の別々の病理医が判定し、
勿論どちらの群かは伏せられて判定されます。

最終的に48週まで継続された事例は、
リラグルチド群で23例、
偽注射群で22例となりました。

改善の判断は、病理学的に、
肝臓の細胞の風船様の腫大という、
非アルコール性脂肪肝炎に特徴的な所見が、
認められない状態になるとともに、
肝臓の線維化の進行のないことが要件となっています。

例数は少ないのですが、
かなり厳密な手法による臨床試験であることが、
お分かり頂けるかと思います。

その結果…

48週間の治療終了の時点で、
偽注射群では22例中9%に当たる2例のみで、
脂肪肝炎の所見は消失したのに対して。
リラグルチド群では23例中39%に当たる9例で、
所見の消失が認められました。
この差は有意なものと判断されました。

経過中に肝臓の線維化が進行した頻度は、
偽注射群では36%(8例)であったのに対して、
リラグルチド群では9%(2例)に留まりました。

有害事象は主に消化器症状で、
吐き気や下痢などがリラグルチド群で多く、
これは想定された範囲内と考えられました。

この結果はかなり明瞭なもので、
リラグルチドの使用により、
非アルコール性脂肪肝炎の肝臓の状態が、
一定レベル改善することはほぼ間違いがありません。

ただ、リラグルチドの使用により、
偽薬と比較して体重の減少は多く認められていて、
平均で5キロ程度は減っていますから、
単純に体重減少の効果と考えられなくもありません。
また、血液検査などでは偽薬との間に、
明瞭な差は付いていないので、
臨床的にはその改善度を評価することが難しい、
ということも、
この薬を実際に臨床で使用する際には、
問題であるような気がします。

いずれにしても、
非常に興味深い結果であることは間違いがなく、
今後のデータの蓄積を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
メッセージを送る