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IgA腎症の治療法とその効果の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
IgA腎症の治療の効果比較.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
IgA腎症という腎臓の病気の治療についての論文です。

IgA腎症というのは、
免疫グロブリンの一種であるIgAが、
腎臓に多量に沈着することにより、
腎臓の機能が慢性的に障害される病気で、
慢性腎炎の半数を占める、
日本で最も多い腎臓の病気でもあります。

この病気の治療として、
国際的なガイドラインにおいて推奨されているのは、
ACE阻害剤もしくはARBと呼ばれる薬剤の使用です。
おしっこに排泄される蛋白質が1日1グラム未満では、
上の血圧が130mmHg未満を目標とし、
尿蛋白がそれより多い場合には、
125未満が目標とされます。

数か月の治療により、
尿蛋白の改善が見られない場合には、
ステロイド治療や免疫抑制剤の使用が検討されます。

しかし、こうした免疫抑制療法の上乗せ効果は、
あまり精度の高いデータの裏付けがある、
というものではありません。

治療成績は必ずしも満足の行くレベルのものではありませんし、
レニン・アンジオテンシン系の抑制が、
充分であったかどうかの検証があまりなされていないので、
真の意味での免疫抑制療法の上乗せ効果が、
どのくらいのものであるのかが不明なのです。

日本ではそれ以外に、
扁桃腺の切除とステロイドのパルス療法を組み合わせた治療が、
非常に高い奏効率を持つものとして施行されていますが、
世界的にはあまり言及をされていません。

今回のデータはドイツの32か所の腎臓病専門施設において、
IgA腎症に対するレニン・アンジオテンシン系の抑制療法に上乗せした場合の、
ステロイドを含む免疫抑制療法の効果を、
レニン・アンジオテンシン系抑制療法単独と比較検証しています。

始めにIgA腎症の患者さん337名と登録し、
ACE阻害剤もしくはARBを使用した治療を、
半年間施行します。
半年間が経過した時点で、
尿中の0.75グラム以上であった177名を効果不充分と判断し、
そのうちの162名をくじ引きで2群に分けます。
一方はそのままそれまでの治療を継続し、
もう一方は面積抑制療法を上乗せします。

具体的には、
腎機能の指標であるeGFRが60ml/min/1.73㎡以上であれば、
メチルプレドニゾロン1グラムを3日間使用した後、
体重1キロあたり0.5ミリグラムのプレドゾロンを、
1日おきに半年継続します。
メチルプレドニゾロンのパルスは、
2か月毎にトータルで3回施行されます。
eGFRが30から59であれば、
3か月間サイクロフォスファミドを体重1キロ当たり1.5ミリグラムで使用し、
その後はアザチオプリンを体重当たり1.5ミリグラム、
36か月まで継続。
それにプレドニゾロンを40ミリで併用し、
徐々に減量します。

治療の評価は3年後に行ないます。

その結果…

337名中半年のレニン・アンジオテンシン系の抑制治療により、
94名では尿蛋白が1日0.75グラム未満まで減少しました。
その後免疫抑制療法上乗せ群では、
82名中17%に当たる14例において、
尿蛋白がクレアチニン1グラム当たり0.2グラム未満になる、
寛解が得られましたが、
その一方で免疫抑制療法未施行群では、
寛解は80名中5%に当たる4名にとどまっていました。

つまり、一定の効果が免疫抑制療法には認められています。
しかし、2割に満たない寛解率は十分なものとは言えません。

これを観察期間中の腎機能の低下で比較すると、
免疫抑制療法を上乗せしても、
その後の腎機能の低下には、
未施行と比較して有意な差は認められませんでした。

そして、当然のことですが、
免疫抑制療法群では、
重篤な感染症の発症や糖代謝異常などの有害事象が、
より多く認められました。

今回の結果から分かることは、
通常のレニン・アンジオテンシン系の抑制治療では、
腎機能の低下を止められない患者さんが少なからず残ってしまうけれど、
ステロイドや免疫抑制剤による治療を、
それに上乗せして行なっても、
尿蛋白が減少する患者さんは多くなっても、
実際の問題である腎機能低下の抑制には、
必ずしも結びつかない可能性が高い、
ということです。

尿蛋白が多く、RA系阻害剤で著効しないタイプのIgA腎症に対しては、
まだ決め手となるような治療はないのが現状で、
免疫抑制剤には過度の期待は持たない方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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