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重症の発熱患者に対するアセトアミノフェンの効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アセトアミノフェンの救急患者への効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
発熱した救急治療室の重症の患者さんに対する、
アセトアミノフェンの投与の効果と安全性についての論文です。

熱に対して解熱剤は必要でしょうか?

特に感染症に伴う発熱の場合、
解熱剤で熱を一時的に下げるという治療は、
最近はあまり評判が良くありません。

体温は高い方が、
免疫細胞の活性は高まり、
病原体の増殖はむしろ抑えられ、
抗菌薬などの効果も高まることが、
これまでの研究で分かっているからです。

つまり、発熱は身体が病原体に対抗する武器として、
敢えて起こしている側面があるので、
それを無理に薬で抑えることは、
却って病気の回復を妨害する可能性があるのです。

その一方で、そうした炎症の反応が行き過ぎることにより、
感染症が重症化するメカニズムのあることも知られています。
低体温が臓器の細胞を保護する働きがある、
というような知見もあります。

敗血症で人工呼吸器を装着している患者さんに対して、
身体を物理的に冷却するクーリングなどの処置を施すことにより、
短期の生命予後が改善した、という報告もあります。

要するに、状況によっては、
何らかの形で熱を下げることが、
急性疾患の予後を改善する可能性もあるのです。

そうした理屈はともかく、
高熱で重症の患者さんに対して、
治療やケアをする立場から言えば、
熱を下げないで見ていることは辛く、
結果として解熱剤が使用されるケースが、
実際には多いと思われます。

こうした場合に、最も良く使用される解熱剤は、
アセトアミノフェンです。
商品名ではカロナールやアンヒバなどがそれに当たります。

この薬は解熱鎮痛剤の中では、
使用の有害事象やリスクの少ない薬剤として知られています。
アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤は、
消化性潰瘍や腎障害、心血管疾患やライ症候群など、
多くの有害事象が知られていますが、
アセトアミノフェンはそうした有害事象は、
肝障害自体は稀だと考えられています。

それでは、
集中治療室で治療を受けているような、
感染症の疑われる重症の患者さんで、
発熱が認められた場合に、
アセトアミノフェンを使用することは、
患者さんの予後にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の研究では、
オーストラリアとニュージーランドの、
23の専門医療施設において、
感染症もしくはそれが疑われる病状で38度以上の発熱があり、
重症のため集中治療室に入室した、
700名の患者さんをくじ引きで2つの群に分け、
一方は6時間毎にアセトアミノフェンの注射薬を1グラム使用し、
もう一方は偽の糖分のみの注射薬を使用して、
登録時から28日の時点までの予後を比較しています。

その結果…

登録時から28日までの集中治療室を退室後の日数
(要するに早く回復しているほど日数は長くなります)
には、アセトアミノフェン群と偽注射群とで有意な差は認められず、
90日後までの死亡リスクにも差は認められませんでした。

この結果から分かることは、
重症感染症で発熱があるような患者さんにおいて、
発熱に対してアセトアミノフェンを使用してもしなくても、
その予後には特に差は認められない、
ということです。

ただ、これは裏を返せば、
通常のアセトアミノフェンの使用により、
患者さんの予後が悪化するようなこともない、
ということも意味していて、
こうした解熱剤の使用により、
患者さんの苦痛などの症状が、
少しでも改善したり楽になるようなことがあるのであれば、
その使用には一定の意義がある、
ということも言えそうです。

世間では目を吊り上げて、
どんな高熱でも解熱剤など使うのはヤブ医者だ、
とがなりまくるような医療者の方も多いのですが、
僕は現時点で適切なアセトアミノフェンの使用に対して、
そこまで言い募るだけの科学的根拠はなく、
勿論濫用は厳に慎むべきですが、
発熱で苦しんでいるような患者さんに対しては、
一定の対処療法としての意義はあるように、
個人的には考えています。

こうした古くからある治療法などの是非については、
極論には真実はあまりないと、
皆さんには是非ご理解を頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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