心筋梗塞後の患者さんへの消炎鎮痛剤使用のリスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わります。
朝から診療の準備をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

先月のJAMA誌に掲載された、
心筋梗塞をされていて、
「血をサラサラにする薬」を使用されている患者さんが、
痛み止めや解熱剤を使用することで、
どのようなリスクがあるのかを検証した論文です。
実地の臨床において、
日々悩ましい、
僕にとっては身近な話題です。
非ステロイド系消炎鎮痛剤と呼ばれる一連の薬剤があります。
アスピリン、メフェナム酸(ポンタール)、
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、
イブプロフェン(ブルフェン)、ロキソプロフェン(ロキソニン)、
セレコキシブ(セレコックス)などがその代表で、
COXと呼ばれる酵素を阻害することにより、
炎症性物質のプロスタグランジンを抑え、
それにより痛みを和らげたり、
熱を下げたりする作用のある薬です。
非常に簡便ですぐに効果が実感出来るため、
痛みや熱の症状に対しては広く使用されています。
医療機関での処方以外に、
多くの薬剤が既に処方箋なしで、
薬局で気軽に買える薬となっています。
しかし…
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあります。
一番多いのが消化管出血で、
これは胃粘膜で防御因子であるプロスタグランジンを、
抑制することが主な原因と考えられています。
また、心筋梗塞や脳卒中などの、
心血管疾患の発症リスクを増加させることも知られていて、
心血管疾患の患者さんでは、
その使用は控えるべきだとされていますが、
実際にはそうした患者さんに対しても、
痛み止めや解熱剤として、
こうした薬は広く使用されているのが実態です。
特に心筋梗塞後の患者さんなどでは、
抗血小板剤の使用が行われているので、
その場合の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用は、
より出血系の合併症などを増やす可能性が否定出来ません。
それでは、
実際にどのくらいの期間非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用すると、
心血管疾患の患者さんにおいて、
どのくらいのリスクがあるのでしょうか?
今回の文献では、
国民総背番号制を取るデンマークにおいて、
診療と処方のデータを解析することにより、
初回の心筋梗塞発症後の患者さんにおける、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の処方と、
患者さんの予後との関係を検証しています。
61971名の心筋梗塞後の患者さんを登録し、
そのうちの34%が非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用を行なっていました。
平均で3.5年の観察期間中に、
そのうちの29.2%に当たる18105名が死亡し、
8.5%に当たる5288例で出血系の合併症が、
30.0%に当たる18568例で心血管疾患が新たに発症していました。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
未使用と比較して出血系の合併症は2.02倍(1.81から2.26)、
心血管疾患のリスクは1.40倍(1.30から1.49)、
それぞれ有意に増加していました。
この消炎鎮痛剤によるリスクの増加は、
3日程度の短期間の消炎鎮痛剤の使用においても、
既に認められていて、
薬の種別による差は有意には認められませんでした。
つまり、
心筋梗塞後で抗血小板剤を使用しているような患者さんでは、
短期間の使用でも非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
出血系の合併症や心血管疾患のリスクが、
最大で2倍程度増加する可能性があり、
その意味でそうした患者さんには、
痛み止めや解熱剤は極力使用を控え、
使用する場合にも、
アセトアミノフェン以外は極力使用しないことが、
現時点では望ましいと思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わります。
朝から診療の準備をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

先月のJAMA誌に掲載された、
心筋梗塞をされていて、
「血をサラサラにする薬」を使用されている患者さんが、
痛み止めや解熱剤を使用することで、
どのようなリスクがあるのかを検証した論文です。
実地の臨床において、
日々悩ましい、
僕にとっては身近な話題です。
非ステロイド系消炎鎮痛剤と呼ばれる一連の薬剤があります。
アスピリン、メフェナム酸(ポンタール)、
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、
イブプロフェン(ブルフェン)、ロキソプロフェン(ロキソニン)、
セレコキシブ(セレコックス)などがその代表で、
COXと呼ばれる酵素を阻害することにより、
炎症性物質のプロスタグランジンを抑え、
それにより痛みを和らげたり、
熱を下げたりする作用のある薬です。
非常に簡便ですぐに効果が実感出来るため、
痛みや熱の症状に対しては広く使用されています。
医療機関での処方以外に、
多くの薬剤が既に処方箋なしで、
薬局で気軽に買える薬となっています。
しかし…
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあります。
一番多いのが消化管出血で、
これは胃粘膜で防御因子であるプロスタグランジンを、
抑制することが主な原因と考えられています。
また、心筋梗塞や脳卒中などの、
心血管疾患の発症リスクを増加させることも知られていて、
心血管疾患の患者さんでは、
その使用は控えるべきだとされていますが、
実際にはそうした患者さんに対しても、
痛み止めや解熱剤として、
こうした薬は広く使用されているのが実態です。
特に心筋梗塞後の患者さんなどでは、
抗血小板剤の使用が行われているので、
その場合の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用は、
より出血系の合併症などを増やす可能性が否定出来ません。
それでは、
実際にどのくらいの期間非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用すると、
心血管疾患の患者さんにおいて、
どのくらいのリスクがあるのでしょうか?
今回の文献では、
国民総背番号制を取るデンマークにおいて、
診療と処方のデータを解析することにより、
初回の心筋梗塞発症後の患者さんにおける、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の処方と、
患者さんの予後との関係を検証しています。
61971名の心筋梗塞後の患者さんを登録し、
そのうちの34%が非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用を行なっていました。
平均で3.5年の観察期間中に、
そのうちの29.2%に当たる18105名が死亡し、
8.5%に当たる5288例で出血系の合併症が、
30.0%に当たる18568例で心血管疾患が新たに発症していました。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
未使用と比較して出血系の合併症は2.02倍(1.81から2.26)、
心血管疾患のリスクは1.40倍(1.30から1.49)、
それぞれ有意に増加していました。
この消炎鎮痛剤によるリスクの増加は、
3日程度の短期間の消炎鎮痛剤の使用においても、
既に認められていて、
薬の種別による差は有意には認められませんでした。
つまり、
心筋梗塞後で抗血小板剤を使用しているような患者さんでは、
短期間の使用でも非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
出血系の合併症や心血管疾患のリスクが、
最大で2倍程度増加する可能性があり、
その意味でそうした患者さんには、
痛み止めや解熱剤は極力使用を控え、
使用する場合にも、
アセトアミノフェン以外は極力使用しないことが、
現時点では望ましいと思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。