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マクロライド系抗生物質の妊娠中の安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
昼には老人ホームの診察に出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
マクロライドの妊娠中の安全性.jpg
今年のPharmacoepidemiology and Drug Safety誌に掲載された、
幅広く使用されている抗生物質の、
妊娠中の安全性についての論文です。

妊娠中にはなるべく薬は使用しない方が良いのは、
勿論のことですが、
それでも使用が望ましい状況は存在しています。

母体の感染症はその中でも大きな問題で、
治療の必要な細菌感染症に対しては、
胎児に影響の少ない抗生物質を使用して、
早期の治癒を図ることが重要だと考えられています。

それでは、どのようなタイプの抗生物質が、
妊娠中には比較的安全に使用出来るのでしょうか?

その点についての情報は実際にはとても限られています。

マクロライド系の抗生物質には、
エリスロマイシン、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、
アジスロマイシン(ジスロマック)などがあり、
抗菌力とともに一種の免疫調整作用があり、
マイコプラズマやクラミジアなどの、
特殊な病原体にも効果があることから、
広く使用されている薬です。
妊娠中にクラミジア感染が明らかになったようなケースでは、
妊娠と出産の安全のためにも、
その治療は必須の医療です。

このマクロライドは妊娠中にも、
比較的安全に使用出来る抗生物質と考えられていましたが、
2005年のスウェーデンでの疫学データにおいて、
エリスロマイシンを妊娠早期に使用すると、
胎児の心臓奇形のリスクが報告がなされ、
大きな問題となりました。

その後、同様の研究が、
ノルウェー、イスラエル、韓国、北アメリカで、
それぞれ別個に施行されましたが、
いずれの研究においても、
奇形のリスクの増加は確認されませんでした。

そのため、この問題は未解決のまま残されているのです。

今回の研究はカナダにおいて、
トータル135839件の妊娠の事例を解析し、
特にリスクが高いと考えられる、
妊娠の初期に抗生物質を使用したケースにおいて、
胎児奇形のリスクを検証しています。

その中には、
アジスロマイシン使用事例が914例、
エリスロマイシン使用事例が734例、
クラリスロマイシン使用事例が686例、
ペニシリン使用事例が9106例含まれています。

解析の結果、
全ての主な胎児奇形の発症リスクは、
アジスロマイシンの使用で1.19倍(0.98から1.44)、
エリスロマイシンの使用で0.96倍(0.74から1.24)、
クラリスロマイシンの使用で1.12倍(0.99から1.42)、
そしてペニシリンの使用で0.98倍(0.91から1.06)となっていて、
いずれの抗生物質も、
有意に奇形のリスクを増加はさせていませんでした。

ただし、ペニシリンと比較すると、
アジスロマイシンとクラリスロマイシンは、
ややリスクが高い傾向は認められるように思います。

そして、心臓の奇形との関連についても、
上記抗生物質と発症リスクとの間には、
有意な関連はいずれも認められませんでした。

今回のデータもこれまでの多くの疫学データと同じく、
マクロライドと胎児奇形との関連に否定的な結果となっています。

ただ、抗生物質が未使用の群においても、
胎児奇形の発症率は平均で9.82%とかなり高く、
アジスロマイシンとクラリスロマイシンを使用した場合の発症率は、
平均で10%を超えていますから、
この結果からマクロライドと心奇形との間に、
全く関連がないとも言い切れず、
今後の検証は継続される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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