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コレステロール降下剤の使用とインフルエンザワクチンの効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームとグループホームの診療には出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンとインフルエンザワクチンの反応.jpg
今年のThe Journal of Infectious Diseases誌に掲載された、
コレステロール降下剤の使用によって、
インフルエンザワクチンの反応が違うのではないか、
という興味深い報告です。

コレステロールの合成阻害剤であるスタチンは、
商品名ではメバロチン、リポバス、
リピトール、リバロ、クレストールなどがそれに当たり、
「悪玉コレステロール」を強力に低下させる作用に加えて、
抗炎症作用などの作用を併せ持ち、
トータルに動脈硬化の進行を抑制し、
動脈硬化性疾患の発症や再発予防に、
その効果は実証されています。

しかし、
このタイプの薬には、
筋肉の細胞を不安定にして、
筋融解症などの誘因になったり、
糖尿病の発症リスクを増加させたりと、
多くの副作用や有害事象のあることもまた事実です。

そのため、
スタチンを継続使用する場合には、
常にそのメリットとリスクとを考え合わせて、
慎重にその使用を検討する必要があります。

特にスタチンの使用のリスクが高くなるのは高齢者です。

高齢者では内蔵機能、特に腎機能の低下により、
スタチンの有害事象のリスクは増加しますし、
その一方で動脈硬化性疾患の予防効果は、
年齢共に小さなものとなるからです。

ある時点で、
リスクは有効性を上回ることが想定されますから、
その前にはスタチンを中止することが適切と考えられますが、
そのための明確な指標は、
ないのが実状ではないかと思います。

さて、今回の文献で取り上げられているのは、
スタチンのリスクのうち、
高齢者の免疫系に与える影響についてです。

スタチンにはTリンパ球の活性化を抑制する作用のあることが、
過去に報告されていて、
抗炎症作用は一種の免疫抑制作用を、
一部併せ持っていると考えられています。

仮にスタチンの免疫抑制作用が事実とすると、
ステロイドのように、
その使用によりワクチンの効果が、
充分に発揮されない、
というようなことがあるのではないでしょうか?

その仮定の元に今回の文献では、
65歳以上の成人14000人以上に対して、
免疫増強剤を含むインフルエンザワクチンの、
効果と安全性を検証するために行われた、
臨床試験のデータを活用して、
スタチンの使用の有無と、
ワクチン接種後の免疫反応との関連を検証しています。
対象者はコロンビア、パナマ、フィリピン、アメリカで登録されています。

ワクチンはMF59と呼ばれる免疫増強剤を含む、
グラクソ社のインフルエンザワクチンで、
免疫増強剤を含むワクチンと、
含まないワクチンが比較されています。

今回の検証には、
免疫増強剤を含むワクチンの接種者6961名と、
含まないワクチンの接種者2482名が対象となり、
そのうちのそれぞれ700人弱がスタチン使用者です。

検証の結果、
ワクチン接種後の抗体の増加反応は、
スタチン未使用者と比較して、
スタチン使用の高齢者では、
A型のH1N1タイプに対する反応が38%、
同じくA型のH3N2タイプに対する反応が67%、
B型に対する反応が38%、
それぞれ有意に低下が認められました。

このスタチンによる抗体上昇反応の抑制は、
免疫増強剤のあるなしでは、
あまり影響はされていませんでした。

今回の結果は別個のデータを再解析したものなので、
単一にスタチンの影響と、
捉えるのはまだ充分とは言えないと思います。

スタチンについては、
過剰なサイトカインの産生を抑制することにより、
高齢者の肺炎などの感染症の、
重症化を抑制する効果があるとする報告もあり、
単純に免疫を抑制するので良くない、
というようには言い切れない部分もあります。

今後スタチンの使用の有無と、
インフルエンザの罹患率や重症化の頻度などが、
より厳密に検証されれば、
この問題はもう少しクリアになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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