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降圧剤中止の認知機能への影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
降圧剤の中止による認知機能への影響.jpg
今年のJAMA Intern Med誌に掲載された、
降圧剤の中止が認知機能に与える影響を検証した論文です。

臨床医としては、
非常に重要な知見です。

高血圧は動脈硬化を進行させ、
心血管疾患の原因となります。
このため高血圧自体が、
認知症のリスクの1つであると考えられています。

ただ、中年層の高血圧に関しては、
それはほぼ間違いのない事実ですが、
75歳以上の高齢者については、
同じことが言えるとは言い切れません。

80歳以上の高血圧の患者さんに対して、
降圧治療による病気の予防効果を見た、
HYVET(Hypertension in the Very Elderly Trial)
という大規模臨床試験では、
降圧治療による認知症の予防効果は実証されませんでした。

その後にまとめられたメタ解析の結果では、
どうやら75歳以上くらいを分岐点として、
降圧剤治療は認知症の予防には、
ならない可能性が高い、という結論が得られました。

この結果の解釈は、
概ね次のように考えられます。

高齢になりある程度血管の動脈硬化が進行すると、
血管の伸展性や調節力が低下し、
血圧の軽度の低下でも、
脳の血流を維持することが難しくなります。
このために脳の血流低下により、
認知症の進行もしくは、
脳血流の低下による、
一時的な認知機能の低下が生じると想定されます。

実際には多くの75歳以上の高血圧の患者さんが、
降圧剤による治療を受けています。
この中には、
現行のガイドラインにおいては降圧剤治療の適応であっても、
過度な降圧により認知機能に悪影響の生じているケースが、
少なからずいることが想定されます。

ただ、闇雲に使用している降圧剤を中止することは、
却って患者さんのリスクを増す結果になることは、
これも間違いのないことです。

そこで今回の研究では、
オランダの128の家庭医において、
75歳以上で降圧剤により治療を受け、
収縮期血圧が160mmHg以下で、
認知症の簡易検査であるMMSEにおいて、
軽度の認知機能低下を示す21から27点に相当する、
385名の患者さんをくじ引きで2つのグループに分け、
一方は降圧剤を減量の上中止し、
もう一方はそのまま治療を継続して、
16週間後の認知機能を含む生活状況を比較検証しています。

偽薬を使うような方法は取っていませんが、
研究の目的は主治医にも開示はされずに行われています。
心筋梗塞などの既往のある患者さんは除外され、
糖尿病のケースでは収縮期血圧が140以下を条件としています。

つまり、かなり慎重に、
降圧剤中止によるリスクの低い患者さんを選び、
短期間の降圧剤中止による効果を検証した試験です。

その結果…

降圧剤の中止により、
平均で7.36mmHg収縮期血圧は上昇しましたが、
認知機能やADLの指標に、
両群で有意な変化は認められませんでした。

この結果はまだ結論と言えるようなものではなく、
1つの足掛かりと考えるべきものです。

当然、より長期の効果を見る事の方が、
この問題を解決するには重要なのですが、
今回は仮に軽度の認知機能低下と高血圧を伴う患者さんで、
その降圧が脳血流の低下に影響しているとすれば、
その解除により比較的短期間で認知機能が改善するのでは、
という想定の元に検討を行ない、
その結果としては、
そうした現象は確認されなかったのです。

ただ、その一方、
今回のように事例を選んで降圧剤を中止すれば、
そのことによる全身的なリスクも少ない、
ということも証明されたことになり、
今後75歳以上の患者さんで降圧剤の中止を検討する際の、
基礎データとして意義を持つものではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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