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2型糖尿病の生命予後について(2015年スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の過剰死亡リスク.jpg
先月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
2型糖尿病の患者さんの生命予後についての論文です。

糖尿病の患者さんに心筋梗塞などの心血管疾患が多いことは、
よく知られた事実です。
その予防のために、
血糖コントロールの改善に加えて、
脂質降下剤や降圧剤などが使用されていますが、
その効果は未だ充分とは言えません。

糖尿病の患者さんの心血管疾患リスクは、
年齢層によっても違いがあると想定されていますが、
そうした点についての、
精度の高いデータはあまり存在していませんでした。

今回の研究では、
国民総背番号制を取るスウェーデンにおいて、
435369名の2型糖尿病の患者さんを、
2117483名のコントロールと比較して、
平均4.6(糖尿病群)から4.8(コントロール群)年の経過観察を行なっています。

その結果…

トータルではコントロールと比較して、
糖尿病群では1.15倍(1.14から1.16)
総死亡のリスクが有意に増加し、
心血管疾患による死亡のリスクも、
1.14倍(1.13から1.15)有意に増加していました。

この超過死亡リスクは、
若年層でより高く、
血糖コントロールが悪く、
腎機能低下があるほど高くなっています。

コントロールと比較して、
年齢が55歳未満で、
血糖コントロールの指標であるHbA1cが、
目標とされる6.9%以下の患者グループの総死亡のリスクは、
1.92倍(1.75から2.11)とかなり高くなっていました。
その一方で同じ条件で年齢が75歳以上の群では、
そのリスクは0.95倍とむしろ低下していました。

年齢が55歳未満で、
糖尿病性腎障害の初期の指標である、
微小アルブミン尿がなく、
HbA1cが6.9%以下の患者グループは、
コントロールと比較して、
総死亡のリスクが1.60倍(1.40から1.82)と有意に高く、
それが75歳以上では0.76倍(0.75から0.78)、
65から74歳でも0.87倍(0.84から0.91)と、
有意に低くなっていました。

要するに55歳未満くらいの年齢層においては、
血糖コントロールが良く、
腎機能低下の兆候がなくても、
数年以内の死亡リスクが、
糖尿病のない方よりは1.6倍と高くなるのですが、
年齢と共にそのリスクは低下し、
75歳以上では糖尿病であることの、
生命予後に与える影響は、
血糖コントロールが良く、
腎機能低下がなければ、
問題にはあまりならなくなります。

75歳以上でも、
HbA1cが8.8から9.6%のグループでは、
総死亡リスクはコントロールの1.34倍と増加しますが、
55歳未満ではそれが2.92倍となりますから、
その影響はより大きいのです。

腎機能低下の影響はより顕著で、
55歳未満のグループでは、
腎機能の指標であるeGFRが、
90ml/minとほぼ正常であっても、
そのリスクは2.07倍と上昇しますが、
75歳以上のグループでは、
45から60ml/minまでは、
死亡リスクはほぼ変化はありません。

つまり、
中年層での糖尿病は、
その後の死亡リスクを上昇させる大きな原因となるので、
予防が可能であれば予防することに、
大きな意義があり、
発症した場合には、
血糖コントロールでHbA1cを6.9%以下にすることと、
腎機能低下を予防する治療に重点を置く必要があります。
治療により死亡リスクは低下しますが、
糖尿病のない状態と同じにすることは、
現状では出来ません。
こうした患者さんの予後の更なる改善には、
もっと新たな知見や治療が必要なのです。

その一方、75歳以上で発症したり、
発見された糖尿病に関しては、
腎機能のeGFRが45ml/minを超えていて、
HbA1cは概ね8未満であれば、
その生命予後には糖尿病のない方と、
それほどの違いはないので、
全ての患者さんを治療する必要は乏しいと思いますし、
もっと緩やかな治療の基準が、
あるべきのように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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