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飲み水の微量元素が甲状腺機能に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

北品川藤クリニック開院直前で、
ドタバタした日々が続いています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
水道水のリチウムと甲状腺機能.jpg
今年のThyroid誌に掲載された、
水道水に含まれる微量元素が、
甲状腺機能に与える影響についての論文です。

リチウムは微量元素で金属の一種ですが、
双極性障害(昔の躁鬱病)の治療にも使われている不思議な成分です。

放射性物質としてその被ばくが問題となった、
セシウムもそうですが、
元々微量には土壌に含まれる成分であるため、
食物や飲料水の中にも微量には含まれていて、
その影響が議論となることもあります。

勿論日本の水道水にも含まれています。

このリチウムについては、
多く含有する飲料水が使用されている地域の住民は、
自殺のリスクが少ないというような、
興味深い報告もあります。

その一方でリチウムには多くの有害な作用も生じる可能性があり、
その中で有名なのは甲状腺の機能異常です。

薬として使用されているリチウム製剤では、
甲状腺の機能異常、特に甲状腺機能低下症が、
生じ易い副作用であることが知られています。

それでは、
水道水などに含まれている程度の微量のリチウムでも、
甲状腺に影響を与えるのでしょうか?

今回のデータはアルゼンチンにおいて、
194名の妊娠されている女性を対象とし、
飲料水に含まれているリチウムの濃度と、
血液中のリチウムの濃度や、
他の微量元素の濃度と、
甲状腺機能異常との関連を検証しています。

その結果…

リチウムの血液濃度は平均で0.0036mmol/Lで、
0.000027から0.021という広範囲に分布しています。
リチウムを薬として使用した場合の血液濃度は、
上限で1.2mmol/L程度ですから、
勿論飲料水に含まれているリチウムは、
極めて微量である、
ということは間違いがありません。

しかし、それでもリチウム濃度が高いほど、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高く、
甲状腺ホルモンであるT3は低いという相関を示しました。
つまり、リチウム濃度が高いほど、
甲状腺機能低下症の「傾向」を示しています。
ただし、これは勿論顕性の甲状腺機能低下症になっている、
ということではありません。
臨床的には問題にはならないレベルの変化です。

今回もう1つ、
セシウムの濃度が高いほど、
血液のT3濃度が低いという相関が認められました。
ただし、TSHについては相関は認められませんでした。
これも臨床的には問題にならないレベルです。

今回のデータでは、
極微量のリチウムやセシウムでも、
僅かながら甲状腺機能に影響を与えることが示唆されました。

こうした僅かな変化が、
通常は臨床的に問題になるようなことはほぼないと思いますが、
妊娠中の女性のような、
甲状腺機能が胎児の成長に影響を与える可能性があるようなケースでは、
一応配慮をしておく必要があるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

北品川藤クリニックウェブ内覧会 [業務連絡]

こんにちは。
石原藤樹です。

昨日と今日は北品川藤クリニックの内覧会を行なっています。
今日も10時から17時まで開催の予定です。
お近くの方やお出でになることが可能な方は、
是非お気軽にお立ち寄り下さい。

今日はお出でになれない方のために、
ウェブ内覧会をお届けします。

クリニックの入口を入って頂くと、
受付がこんな感じです。
受付正面.jpg
この画像の左手から診察室に入ります。
診察室がこんな感じ。
診察室風景.jpg
どうしても今はモニターだらけになってしまいます。
一番左がレントゲン写真のモニターで、
中央が電子カルテのモニター。
そして、右は通常のインターネットに繋いでいるパソコンです。

次は待合室です。
こんな感じです。
待合室.jpg

では次を。
超音波装置.jpg
超音波診断装置です。
GE社のニューモデルで、
これは少し拘りました。
腹部、表在や甲状腺、
心臓も全て精度の高い診断が可能です。

では次を。
血液検査機器.jpg
血液検査機器です。
血算とCRPの測定が10分程度で可能です。

レントゲン室.jpg
レントゲン室です。
非常にコンパクトなサイズですが、
立位でも寝ての撮影も可能です。

トイレ.jpg
これはトイレです。
車椅子でも入れる大きさに拘りました。

ここまでがクリニックですが、
それ以外にビルの2階にもう1フロアを借りています。
こちらは医学図書館兼イベントスペースという感じの場所です。

入口がこちら。
2F入口.jpg
中に入るとこんな感じです。
2F前側.jpg
ハリーポッター風の空間がイメージです。
この書棚が医学書で埋まる予定です。
2F後ろ側.jpg
同じ部屋の後方です。
ここでは、健康教室のような催しを、
定期的に行なう予定です。
また、地域の健康についての、
交流の場になることを目指しています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

デイヴィッド・アリグザンダー「絞首人の一ダース」 [ミステリー]

こんにちは。
石原藤樹です。

今日明日と、北品川藤クリニックの内覧会を、
午前10時から午後5時まで開催します。
よろしければお越し下さい。
ご希望の方にはちょっとした検査もしていますし、
大したものではありませんが、
ちょっとしたお土産も用意しています。
当日は街道のお祭りもあります。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
絞首人の一ダース.jpg
1961年に原書が刊行された、
ミステリーの短編集です。

1950年代のアメリカは、
短編ミステリーの黄金時代で、
正直なところ、
短編ミステリーの殆どのパターンの最良のものは、
この時期に全て出尽くしているような気もします。

ダールの「あなたに似た人」や、
エリンの「特別料理」は、
名短編集として知られていて、
抜群の切れ味ですが、
この作品もそれに匹敵する、
というのはちょっと言い過ぎですが、
かなり肉薄する魅力と独創性に溢れた短編集です。

ただ、代表作とされる巻頭の「タルタヴァルに行った男」は、
アメリカの歴史を知らないとオチが分からず、
そのために作者自身によるコメントが、
最後に付いているという具合で、
ちょっと翻訳で日本で読むのには難があるのが、
発売当時には日本で刊行されなかった、
主な理由ではないかと思います。

原作は1961年の刊行ですが、
日本での翻訳版の発売は2006年です。

アリグザンダーの特徴は、
ミステリーの骨格の中に、
人生の哀感のようなものを、
巧みに潜ませて抜群のオチに昇華させる手際で、
僕のお気に入りは、
「見知らぬ男」や巻末の「雨がやむとき」です。

孤独から生じる恐怖を描いた「見知らぬ男」は、
ショートショートと言って良い短さですが、
ラストがバッチリ決まって深い余韻の残る逸品です。

もしご興味があれば是非。
それから、エリンの名作「特別料理」は、
最近初めて短編集の全編を通読したのですが、
全てが傑作と言って良い極めつけで、
まだ未読の方は本当に面白い本を読みたい時に、
とっておいて下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

甲状腺ホルモン治療による甲状腺機能亢進症のリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

10月1日の北品川藤クリニック開院に向け、
準備の真っ最中です。
今日は機材の搬入のある予定です。
明日から2日間は内覧会です。
お近くの方は是非お立ち寄り下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
医原性甲状腺機能亢進症.jpg
今年のThyroid誌に掲載された、
高齢者への甲状腺ホルモン治療による、
医原性甲状腺機能亢進症のリスクについての論文です。

甲状腺機能低下症の治療には、
主に甲状腺ホルモンのT4製剤が使用されます。
商品名はチラーヂンSです。

T4製剤は安全性の高い薬ですが、
過剰に使用されると、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は抑制されます。

更に多い量を使用すると、
T4の血液中の濃度はやや上昇します。

通常T3が上昇することは殆どありません。

TSHが抑制されている、ということは、
身体が甲状腺ホルモンを過剰と認識している、
ということになり、
潜在性の甲状腺機能亢進症になっている、
という言い方が可能です。

この潜在性の甲状腺機能亢進症は、
若干ながら心房細動という不整脈のリスクや、
骨粗鬆症のリスクを増加させる、
という疫学データがあり、
特に高齢者においてはそのリスクの増加が問題となります。

高齢者ではTSHが10を超えない程度の、
軽度の甲状腺機能低下症は、
むしろ生命予後を改善する、という報告もあり、
その点を考慮すると、
甲状腺ホルモン剤の漫然とした使用は、
高齢者において健康上のリスクになっている、
という可能性があるのです。

今回の研究はアメリカにおいて、
加齢の影響を調査した大規模な疫学研究のデータを活用して、
1450名の住民の甲状腺機能と、
ホルモン剤の使用の影響を検証しています。

TSHの基準値は全て統一はされていないのですが、
概ね0.4から0.5mIU/L以下を、
潜在性甲状腺機能亢進症と判断しています。

その結果…

TSHの抑制、すなわち潜在性甲状腺機能亢進症は、
甲状腺ホルモンを使用している患者さんの9.6%に認められ、
その一方で未使用の住民では、
TSHの抑制は0.8%に認められたのみでした。

甲状腺ホルモンを使用中の患者では、
年間1000人当たり、17.7人の比率で、
新規の潜在性甲状腺機能亢進症が発症している、
ということになります。

甲状腺ホルモン製剤の開始は、
80歳以上の女性で多く、
年間100人当たり3人という比率になっていました。

つまり、高齢者においては、
甲状腺ホルモン製剤が使用される頻度が高く、
結果として潜在性甲状腺機能亢進症の頻度も高くなっています。

これは心房細動や骨粗鬆症のリスク増加に結び付く可能性があり、
臨床医は特に75歳以上の高齢者に対しては、
TSHが0.5を切るような補充を慎み、
その使用には慎重であるべきだと考えられます。

僕は個人的には、
T4製剤で若干TSHが低下しても、
その全身に与える悪影響は、
軽微なものに留まる、
という考えを持っていますが、
少なくとも80歳以上の高齢者においては、
TSHがやや高めの方が生命予後の良いことは間違いがなく、
高齢の患者さんではTSHが10を超える場合に限り、
ホルモンの補充を検討する方針としています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

SGLT2阻害剤による心血管疾患予後改善効果 [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

10月1日の北品川藤クリニックの開院に向け、
もう1週間となりました。
今日は機材の搬入などが沢山あり、
1日バタバタした状態が続きそうです。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
SGLT2阻害剤の心血管疾患予後改善効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
尿へのブドウ糖の排泄を促す薬に、
心血管疾患の予防効果と生命予後改善効果が認められた、
という報告です。

SGLT2阻害剤は、
尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制する薬剤で、
このことにより、
ブドウ糖が尿に大量に排泄され、
血糖値が低下します。

これまでにないメカニズムの新薬として、
日本でも何種類も発売されています。

しかし、
先日記事にしたように、
この薬は膵臓のα細胞に働いて、
グルカゴンの分泌を刺激する作用があり、
それが糖尿病の成因から言って、
病態の改善に逆行するのではないか、
という危惧があります。

そうした点からも、
問題となるのはこの薬の長期成績です。

長期の使用により、
糖尿病の合併症として一番生命予後に影響する、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患に、
どのような影響を与え、
生命予後を改善するかどうかが、
糖尿病治療薬の善し悪しを決める、
最も大きなポイントなのです。

この点について多くの臨床試験が行われていますが、
肯定的な結果が得られたのは、
今回のEMPA-REG OUTCOMEと題された大規模臨床試験が初めてで、
そのために今回の結果は、
非常に注目されているのです。

使用されているSGLT2阻害剤は、
エンパグリフロジン(Empagliflozin)、
日本では6番目に発売されたSGLT2阻害剤で、
ジャディアンスという商品名で使用されています。

世界42カ国で登録された、
7020名の心血管疾患を持っている2型糖尿病の患者さんを対象として、
通常の糖尿病治療(メトホルミンなど)を行なった上で、
患者さんにも主治医にも分からないように、
3つのグループに分けます。
偽薬と、エンパグリフロジン1日10ミリグラム、
そして1日25ミリグラムの3つのグループです。

この用量は日本でも使用されているものと同じです。

平均3.1年の経過観察において、
心血管疾患による死亡と、
急性心筋梗塞と脳卒中の発症とを合わせた事例は、
エンパグリフロジン使用群では、
4687例中10.5%に当たる490例であったのに対して、
偽薬群では2333例中12.1%に当たる282例で、
エンパグリフロジンの使用により、
心血管疾患の発症は、
トータルで14%有意に低下しました。

心筋梗塞や脳卒中の発症については、
両群で有意差はありませんでしたが、
心血管疾患による死亡に関しては、
有意に相対リスクを38%低下させていました。
また、総死亡のリスクについても、
有意に32%低下させていました。

今回の結果はかなり画期的なもので、
3年という短期間で、
これだけ生命予後に差が付いたというデータは、
あまり例がありません。

ただ、今回の結果のみで、
SGLT2阻害剤が糖尿病の患者さんの生命予後を改善する、
と断定的に考えるのはまだ早いという気がします。

どのような患者さんに、
本当にこの薬が有益と言えるのか、
今後のより詳細な検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

維新派「トワイライト」 [演劇]

こんにちは。
石原藤樹です。

10月1日の北品川藤クリニック開院に向け、
バタバタと準備が続いています。
今日はクリニックの看板が出来ました。

連休のラストの話題はこちら。
維新派「トワイライト」.jpg
昨日奈良県の曽爾村で、
維新派の新作野外劇「トワイライト」を観て来ました。

日本各地の様々な場所で、
大規模な野外劇を上演し続けている維新派ですが、
今回は奈良県の東南の外れくらいに位置する、
曽爾高原というススキの高原で有名な曽爾村の、
建民運動場という自然の中にある野球場にも使える広場で、
いつもながらの素敵な舞台を実現させました。

公演は今月の27日までですが、
もし行くことが可能な方は、
是非にとお薦めしたいと思います。

現役で上演されている野外劇の中では、
間違いなく最もクオリティが高いものだと断言出来ます。

以下ネタバレを含む感想です。

草の少し生えた大きな広場がそのまま舞台になっていて、
階段上の客席からその広大な広がりを見下ろします。
頭上には夕暮れから夜に掛かる空が広がり、
周辺をぐるっと山が取り囲んでいます。
グラウンドには照明塔があって、
そのうちの一部は公演の照明としても使用されます。

維新派の舞台は一時はかなり大掛かりなセットが組まれ、
その大セットも見所の1つだったのですが、
最近は仕掛けはあってもシンプルなもので、
野外の景色をそもまま使用する、
という雰囲気のものになっています。

今回もセットは基本的にはなく、
山に囲まれた広場が目の前に広がっているだけです。

しかし、大空間を巧みに活かした照明や音響の効果、
一糸乱れぬ群舞などはさすがに素晴らしく、
予想を上回る美しい光景が次々と眼前に現れ、
そして儚くも消えて行きます。

中途で一旦照明が消えると、
闇の中に蛍のような光が1つずつ浮かび、
それが星空のように広がって、
月面を模したような幻想的な光景が広がるのが、
今回の白眉で、
これだけではるばる曽爾村まで来た意味は、
充分あると思わされました。

維新派の作品は一時は殆ど台詞はなく、
無言劇に近いスタイルで、
そのストーリーを追うことも、
かなり困難であったのですが、
最近の作品では普通の芝居のような独白や掛け合いが増え、
細部のニュアンスまでは難しいものの、
ストーリーラインは掴むことが楽になりました。

今回は以前の作品にも登場した、
「わたる」という青年が、
少年時代を回想する物語で、
曽爾村そのものが舞台となり、
男勝りの少女との儚い恋と、
その友達で風の又三郎のような謎の前歯のない少年の思い出が、
主軸として語られ、
そこにこれまでの作品で描かれた、
外国籍の少年が迫害される構図や、
日本地図を逆さに見て、
海を南下する構図、
主催の松本雄吉さんの、
おそらくは子供の頃の大阪の風景などが、
挟み込まれます。

ラストは靴の船が大海を渡るという、
作品中に登場するイメージが、
実体化して観客を迎えます。

維新派の世界は最近落ち着いて枯れて来た感じがあり、
それが物足りなく感じることも、
ないとは言えません。
特に東京で上演された「ろじ式」や「風景画」などは、
その感が強かったのですが、
その2作品のディテールは、
今回の野外劇でも良い意味で活かされていて、
円熟したその世界を、
今は楽しむべきなのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

進撃の巨人/エンドオブザワールド [映画]

こんにちは。
石原藤樹です。

色々あって昨日から今日にかけてもバタバタです。
今日は以前からの予定であったので、
2泊で奈良に出掛けることにしています。

今日は映画の話題です。

公開初日に見てしまったのがこちら。
進撃の巨人後編.jpg
進撃の巨人の実写映画版の後編です。

これは正直かなりの脱力作品です。

前編はそれでも原作のニュアンスを大分残していましたが、
後編は本当にオリジナルの世界で、
人間ドラマなどほぼゼロの、
「怪獣」同士の取っ組み合いの戦いがメインの作品です。
CGで加工されていますが、
着ぐるみ同士の対決が多く、
不気味な裸の巨人の群れは、
遠景でチラと出て来る程度です。

最も良く似た映画は、
間違いなく「サンダ対ガイラ」で、
ウルトラマン的なスパイスも掛かっています。
水原希子さんのミカサなど、
一体何のために出て来たのか分かりません。

尺も1時間半くらいととても短くて、
これも東宝怪獣映画の長さを目指したのかな、
とも思えます。
重厚さや話の奥行のような要素は皆無です。

僕の隣の席は若い男女のカップルでしたが、
女性の方が映画を見ているのに、
タンクトップ姿の男性は、
スマートフォンをずっと操作していて、
耳にはイアフォンを付けたままで、
たまに大きな音がすると、
チラと画面を見る程度です。

凄く迷惑、という訳ではないのですが、
隣で殆ど映画を見ていない人がいる、
というのは非常なストレスで、
それなら来なきゃいいのに、
と色々なことを考えて気分は沈みました。

総じて失敗作であることは間違いがなく、
ただ、東宝怪獣映画の変種として見れば、
そう悪くない、という言い方も出来ます。
いずれにしても、
劇場に足を運ぶ意義は、
僕には見いだせませんでした。

これから見る方への注意点は、
エンドクレジットが全て流れた後で、
「トゥルーマンショー」のようなオチが付くので、
大したオチではないのですが、
最後まで見ないと、
この映画を全て見たことにはならない、
ということです。

以下少しネタバレがあります。

前編はエレンが巨人になるまででしたが、
後編はそのままエレンが拘束されて、
それを新たな謎の巨人が攫って行く、
というところから始まります。

原作では城塞都市の様々な場所で物語が展開されますが、
映画版は最初に壊された壁を塞ぐためのミッションに、
同行したまま物語は進み、
ラストはそのまま超大型巨人との対決があって、
その巨人が死ぬと壁は塞がり、
エレンとミカサは壁の上に上って、
外の世界を初めて目にする、
というところで終わりになります。

外の世界は、
昔懐かしい「地球最後の日」のラストのオマージュで、
崩れた東京タワーなどがあるので、
ここは「未来の東京」だった、
ということのようです。

ポイントに出て来る悪党は、
皆巨人となり、
結局巨人同士の戦いとなります。
その巨人は実は戦争の兵器として生み出された、
人間の成れの果てで、
それが何らかの原因で急激に増え、
その恐怖を利用して、
壁を造った権力者が、
その恐怖を利用して住民を支配している、
という構図です。

最初に壁を壊す超大型巨人も、
権力者の変身で、
住民の恐怖感を煽るための自作自演だった、
という内容になっています。

原作に登場するエレンの父と、
巨人化を促す変な血清のようなものは、
オープニングでチラと出て来るのですが、
血清の謎などは全く明かされないので、
辻褄の合わない感じになっています。

原作も最近はジブリみたいな雰囲気になって、
迷走している感じがありますが、
映画版は強引に舞台を未来の東京にして、
それ以外は怪獣映画を目指した、
という代物です。

殆どCGショーなので、
あまりドラマもなく、
右往左往するだけの多くの役者さんが、
ちょっと気の毒に感じました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

イキウメ「語る室」 [演劇]

こんにちは。
石原藤樹です。

今日は日曜日ですが、
10月1日の北品川藤クリニック開業に向け、
備品の購入などに廻る予定です。
世間は大連休ですね。

今日は日曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
イキウメ「語る室」.jpg
イキウメの新作公演「語る室」が、
今池袋の東京芸術劇場で上演されています。

その初日に足を運びました。

上演前のチラシの説明では、
イキウメ別館カタルシツをベースにして、
3つの物語を役者が語る、
というオムニバスの趣向のように書かれていましたが、
実際には本公演の新作になっていました。

ただ、役者が時々正面を向いて、
独白を長く客席に語りかける、
という形式は部分的に残っています。

今回はしばらくぶりの客演になる、
板垣雄亮さんが個人的には楽しみで、
中嶋朋子さんも客演しています。
常連の女優さんである、
伊勢佳世さんと岩本幸子さんは、
いずれも今回は出演していません。

内容は、時空が歪んだような、
ちょっと奇妙な出来事が田舎町に起こる、という、
前川知大さんお馴染みの、
SF風味のドライなファンタジーですが、
前作の「聖地X」のようなシャープな感じではなく、
余白の多い、
ほのぼのした牧歌的な雰囲気の作品です。

それはそれで悪くないのですが、
僕は前川さんの、
トリッキーでシャープな感じが好きなので、
正直何か物足りない感じがしたことは事実です。

以下ネタバレを含む感想です。

2000年に田舎町で、
1人の園児と送迎バスの若い運転手が姿を消し、
その園児の母と、
母の弟の警官、
そして運転手の兄は、
お互いに相手を攻撃して深刻な対立をし、
ようやく5年後に和解します。

その2005年が主に舞台となるのですが、
そこでは板垣雄亮さん演じるインチキ霊媒師が、
霊柩車のような車を盗まれ、
誰かを待っているのですが、
その誰かは現れず、
誰かを探して不思議なヒッチハイカーの兄妹が現れます。

その登場人物の不思議ですれ違いのやり取りが、
やがてジグソーパズルのように繋がり、
ラストは牧歌的な野外の鍋パーティーで締めくくられます。

倉持裕の「ワンマン・ショー」に、
似た雰囲気を感じました。

同じ場面が何度か繰り返され、
時空のずれが、
最初の謎を別方向から解決します。

ただ、前述のように、
今回の超常現象は、
記憶という情報を底の底まで辿ると、
そこで時空の壁が取り払われる、
というくらいのファジーなものなので、
「ああ、そういうことなのか!」
と謎が解けて膝を打つような感じはなく、
「そんなこともあるかもね」
というくらいのもので、
前川さんのトリッキーな世界に期待すると、
やや失望する感じは否めません。

しかし、このゆるい感じが、
身を委ねると心地良い感じもあり、
イキウメの新傾向と、
捉えるべきなのかも知れません。

演出は一時のような、
様式的で失敗しているようなものではなく、
かつてのシンプルなスタイルに復帰しています。
役者は皆安定感があり、
安心して観ることが出来ます。
正体不明の少年のようであった、
大窪一衛さんは、
何故か前川知大さんにそっくりのビジュアルでした。
これは狙いでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

TRASHMASTERS「そぞろの民」 [演劇]

こんにちは。
石原藤樹です。

今日も北品川藤クリニック開業に向け、
慌ただしく1日を過ごす予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
そぞろの民.jpg
社会派で硬派の芝居が信条のTRASHMASTERSが、
今安保法制を取り込んだ新作を、
下北沢の駅前劇場で上演中です。

リアルな茶の間のセットが舞台に組まれ、
衆議院の安全保障関連法案の採決直後から始まるという、
真っ向勝負のような力作で、
娯楽性はある種捨てた感じがあり、
ともかく全編力の入りまくったディスカッションが連続します。

ノンストップの2時間半で、
こちらにも体力がないと観続けられませんし、
観客をかなり選ぶ感じがあります。

テーマは単一ではなく、
後半は家族の話が俎上に載せられ、
政治と家族と人間の問題が、
一体の物として議論の対象になります。

単純なアジテーションがやりたいのではなく、
それを超えた何かを目指していることは分かります。
ただ、それはそう簡単な挑戦ではなく、
トータルに芝居として成功していたかと言えば、
疑問符が残るところもあります。

印象としては、
大島渚の1960年代くらいの映画に似ています。
「日本の夜と霧」の現代版と、
言っても良いような雰囲気であり仕上がりです。

僕は大島渚の映画は大好きなので、
この作品も嫌いではなく、
最近の迷いのあったTRASHMASTERSの作品の中では、
最も好きな1本です。

以下ネタバレがあります。

国際政治学者の大学教授であった父がいて、
その3人の息子がいます。
長男は商社マンで死の商人的な仕事にも関わり、
次男は新聞記者で、
三男は会社員でしたが、
自分の仕事が軍事目的に流用されたことを憤って仕事を辞め、
活動家のライターの女性と、
安保法制反対の運動をしています。

父親は病で身体が不自由になり、
老人ホームに入所していたのですが、
安保関連法案が衆院で可決されたことに憤って、
老人ホームを脱走し、
家に戻ってしまいます。
それを知っていたのは三男だけでしたが、
丁度国会前のデモで外出し、
家に父親を1人残した時に、
父は首を吊って自殺してしまいます。

通夜の日に父の教え子や家族が喪服で集まり、
そこで「誰が父を殺したのか?」
という議論がいつ果てるともなく続くのです。

如何にも大島渚映画、という設定で、
強引に政治の問題を家族の問題と結び付け、
冠婚葬祭の儀式の場で、
物語を展開させています。

登場人物が全て喪服であるのは、
これが父の弔いであると共に、
今の社会や民主主義の弔いでもある、
ということを示している訳です。

しかし、後半は3人の兄弟の、
誰に最も父の死に対する責任があるのか、
という話になり、
最も優等生に見えた次男が、
実は最も父親から理解されていなかったことが明らかとなると、
ラストには次男も首を吊って自死してしまいます。

この家族のドロドロと、
国家と政治の問題が、
必ずしも溶け合っていない、という点が、
構成上の欠点ではあるのですが、
それはかつての大島映画でも同じことで、
個人的な心情のようなものが、
最終的にはテーマとして浮上するからこそ、
ドラマは成立するのだと思います。

キャストは皆好演で、
前回公演では絶叫台詞が聞き取れず、
硬くて稚拙に感じたのですが、
今回の後半の絶叫の連続は、
しっかりと芝居になっていました。
ここまでやってくれると清々しい感じがしますし、
技術的にも進歩していると思います。

屈折した役柄を演じた星野卓誠さんがとても上手く、
直情的な三男の倉貫さんもスマートで良い感じです。
また、三男の恋人を演じた飯野遠さんが、
後半上手でじっと三人の兄弟の議論を見つめている、
冷徹な視線がグッと来ました。
これも大島映画でお馴染みの構図です。

演出は極めて抑制されたもので、
これが正解だと思うのですが、
大島渚の「儀式」みたいに、
もっと様式的に、もっと仰々しくやっても、
良かったのではないかと感じました。

今この芝居がどんな成長を遂げているのか、
芝居は現実を超えているのか、
それともただ呑み込まれているだけなのか、
ある種のレクイエムのように感じられるものなのか、
今日キャストの皆さんが、
どのような気持ちで舞台に立つのか、
目撃は出来ませんが、
応援はしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

原発性アルドステロン症における抗利尿ホルモンの影響 [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

10月1日の北品川藤クリニックの開院に向け、
今日もバタバタと準備が予定されています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
原発性アルドステロン症とバゾプレッシン.jpg
今月のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
原発性アルドステロン症における、
抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)の関与について検証した論文です。

ホルモン関連の、
ちょっとマニアックな検証です。

原発性アルドステロン症と言うのは、
副腎の過形成や良性の腫瘍(腺腫)から、
アルドステロンという血圧を維持するためのホルモンが、
過剰に分泌されることにより、
高血圧と低カリウム血症とを呈する病気です。

このようにホルモンなどの原因があって、
高血圧が生じる場合を、
二次性高血圧と言って、
通常の高血圧と分けているのですが、
その二次性高血圧症の中で、
最も多いのがこの原発性アルドステロン症です。

この病気は典型的なものは、
血液のアルドステロンと、
レニン活性という数値を同時に測定すれば、
ほぼそれだけで診断の絞込みが可能なので、
僕も可能であれば、
高血圧の患者さんで一度は測定をするようにしています。

さて、原発性アルドステロン症では、
アルドステロンの過剰分泌が生じます。

このアルドステロンは、
ナトリウムと水を身体に溜め込む働きがあり、
それがナトリウムとカリウムとを交換する、
腎尿細管の一種のポンプを介した作用なので、
カリウムは過剰に排泄されて、
低カリウム血症が生じます。

身体の水分量を調節するホルモンには、
もう1つバゾプレッシン(AVP)があって、
これは脳下垂体の後葉と呼ばれる場所から分泌されます。

このバゾプレッシンは、
尿を濃縮させて尿量を減少させる働きがあり、
このため抗利尿ホルモンと呼ばれています。

通常脱水になり、
血圧が低下し、
血液の浸透圧が上昇することにより分泌されます。

身体に水分が足りないことを感知して、
尿量を減少させ、
それ以上脱水が進行しないように調節するのです。

それでは、
原発性アルドステロン症の時には、
バゾプレッシンはどのように分泌が調節されるのでしょうか?

これが意外に分かっていません。

アルドステロンの過剰分泌があると、
血液量は増加し、血液のナトリウムはやや増加します。
血圧も上昇します。
このうち血圧の上昇も血液量の増加も、
共にバゾプレッシンを抑制する因子です。
しかし、その一方でナトリウムの増加は、
脱水の兆候の1つなので、
バゾプレッシンの分泌を刺激する要素の1つとなります。

実際にアルドステロンの過剰分泌が継続すると、
循環血液量は増加せず、
むくみなども生じない、
とするデータがあり、
ホルモンの作用が長期的には減弱する、
一種のエスケイプ現象が起こっている、
とする報告もあります。

こうした知見も考えると、
アルドステロンが増加しているからと言って、
バゾプレッシンが抑制されるとも言い切れないのです。

これまでの報告においても、
原発性アルドステロン症でバゾプレッシンが低下した、
という報告のある一方で、
上昇したという報告もあり、
その結果は一定していません。

この曖昧さの原因の1つとして、
バゾプレッシンの測定が、
不安定で誤差が生じ易いということがあります。

近年バゾプレッシンの前駆物質から生成されるペプチドである、
コペプチン(Copeptin)を、
バゾプレッシンの代わりに測定することが試みられ、
バゾプレッシンの測定より安定していることから、
そちらが主流になりつつあります。

今回の研究では、
フランスの単独施設において、
115名の原発性アルドステロン症の患者さんを、
48名の本態性高血圧(通常の高血圧)の患者さんと、
108名の正常血圧のコントロールの被験者と比較して、
コペプチン濃度と尿中浸透圧などとの関係を検証しています。

その結果…

原発性アルドステロン症の患者さんのコペプチン濃度は、
コントロールの1.61倍(1.26から2.06)、
本態性高血圧の1.40倍(1.08から1.82)、
それぞれ有意に増加が認められました。

血液のナトリウム濃度は、
原発性アルドステロン症の患者さんで軽度上昇していて、
ナトリウム濃度とコペプチン濃度は相関が認められました。

しかし、尿の浸透圧は、
コントロールよりも原発性アルドステロン症の方が低く、
尿量自体も原発性アルドステロン症の方が多くなっていました。

まとめるとこうなります。

原発性アルドステロン症では、
血液のナトリウム濃度に敏感の反応して、
バゾプレッシンの分泌は通常の1.5倍程度に亢進しています。
しかし、その作用はむしろ減弱していて、
尿の濃縮や尿量の低下は起こっていません。

つまり、
腎臓においてバゾプレッシンの効きが悪くなる、
バゾプレッシン抵抗性が生じているのです。

これが何を意味しているのかは、
必ずしも明確ではありません。
原発性アルドステロン症に伴う低カリウム血症は、
尿の浸透圧を低下させる作用があるので、
それで相殺されている、
という考え方は可能ですが、
実証されているものではありません。

ただ、近年糖尿病や心不全など多くの病態において、
コペプチンの上昇が認められる、
という報告があり、
何らかの病的なサインなのか、
それとも一種の代償機転なのかは、
今後の検証を待たなければいけませんが、
最近注目の興味深い知見であることは、
間違いがないと思います。

今日はちょっとマニアックなホルモンの話題でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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