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せん妄の治療に安全な薬は何か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リスパダールと非定型精神病薬の比較.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
せん妄の治療に使用する薬の安全性を比較した論文です。

せん妄状態というのは意識障害の一種で、
典型的なものは集中治療室で患者さんが突然暴れだしたり、
認知症の患者さんが、
夜中に混乱して騒ぎ出すような状態のことを指しています。

こうした時には所謂安定剤はあまり効果はなく、
むしろせん妄を助長することもあるので、
抗精神病薬と呼ばれるタイプの薬が、
使用されることが通常です。

この目的で多く使用されて来た薬の代表が、
ハロペリドール(商品名セレネースなど)です。

ハロペリドールはせん妄のコントロールに、
有用性の高い薬剤ですが、
その一方で錐体外路症状や不整脈の誘発作用など、
副作用や有害事象の多い薬でもあります。

そこで非定型精神病薬と呼ばれる薬が開発されました。
非定型精神病薬はオランザピン(ジプレキサ)やクエチアピン(セロクエル)、
アリピプラゾール(エビリファイ)などがその代表で、
錐体外路症状が少ないことが特徴です。

このためにせん妄状態の治療においても、
ハロペリドールのような古いタイプの抗精神病薬より、
非定型精神病薬が第一選択として使用される流れになっています。

ところが…

せん妄の治療などにおいて、
ハロペリドールより非定型精神病薬がより安全である、
という根拠はそれほど確かなものではありません。
せん妄や認知症に対する古いタイプの抗精神病薬の使用が、
患者さんの生命予後に悪影響を与えるというのは、
ほぼ間違いのない事実ですが、
それと比較して生命予後の改善に非定型精神病薬が結び付いた、
というようなデータはあまり精度の高いものがありません。
そのため、アメリカのFDAは定型と非定型の区別なく、
認知症へのこうした薬剤使用のリスクを警告しています。

古いタイプの抗精神病薬と比較した時の非定型精神病薬の安全性は、
あまり明確なものではないのです。

今回の研究はアメリカの複数の医療機関において、
心筋梗塞の急性期の入院中に、
せん妄などのために古いタイプの抗精神病薬である、
ハロペリドールを使用した場合と、
非定型精神病薬である、
オランザピン、クエチアピン、リスペリドンを使用した場合を、
比較検証したものです。
6578名の抗精神病薬が使用された患者さんのうち、
1688名はハロペリドールが使用され、
4910名は非定型精神病薬が使用されていました。

患者さんの背景などを補正して比較したところ、
非定型精神病薬と比較して、
ハロペリドールの使用により、
使用7日間の死亡リスクは、
1.50倍(95%CI; 1.14 から1.96)有意に増加していました。
具体的には非定型精神病薬の使用時に、
患者さん100人1日当たり1.1名の死亡があったのに対して、
ハロペリドールの使用時には1.7名と増加していました。

ただ、この死亡リスクの増加は、
治療開始4日目でピークとなり、
5日目以降では有意な差はなくなっていました。

このように若干の差が、
入院時のせん妄に対する両者の薬剤では認められましたが、
ハロペリドールの使用期間は、
非定型精神病薬と比較して短く済んでいるので、
明確にハロペリドールのリスクが高いとも言い切れず、
現状では両者の薬剤とも、
心臓病の患者さんには一定のリスクがある、
というように考えておくのが良いように思います。

ただ、臨床の現場においては、
こうした薬剤の使用が必要となることもまた、
稀なことではないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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