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治療前の血圧値から見た降圧治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は石原が研修会出席のため、
午後の診療は休診とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
降圧目標と予後JAMA.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
治療前の血圧値と降圧治療の効果との関係についての論文です。
スウェーデンの研究者によるもので、
これまでの論文や臨床研究のデータをまとめた、
システマティック・レビューとメタ解析の論文です。

高血圧が心筋梗塞や脳卒中などの病気のリスクを上げ、
生命予後にも影響を与えることは、
多くの疫学データで実証された事実ですが、
血圧の高い人に降圧剤の治療をして血圧を下げると、
そのリスクが下がるかどうかは、
またそれとは別の問題です。

疫学データでは収縮期血圧が120mmHgを超えると、
病気のリスクが増えることは事実としても、
120を超える全ての人に、
120を下回ることを目標として治療を行った方が、
その方にとって良い結果になるとは限りません。
それはまた別の話なのです。

現行の多くのガイドラインにおいては、
収縮期血圧が140mmHgを降圧目標として治療が行われていますが、
最近幾つかの臨床試験やメタ解析において、
より低い目標値を設定した方が、
患者さんの予後には良い影響を与えるのではないか、
という指摘がされるようになりました。

最も大きな影響を与えたのはSPRINT試験という、
大規模臨床試験で、
ここでは収縮期血圧が140未満を目標としたコントロールと、
120未満を目標としたコントロールを比較したところ、
総死亡のリスクも心血管疾患のリスクも、
120未満を目標としたコントロールの方がより低下した、
という結果が得られています。

ただ、糖尿病の患者さんを対象としたデータにおいては、
120を目標とするようなコントロールは、
あまり良い結果に結びついていません。
それが糖尿病の患者さんに限定したことであるのかは、
まだ結論は出ていないのです。

今回の論文の研究者達は、
どちらかと言うと120未満を目指したような、
厳格な血糖コントロールには懐疑的な立場のようで、
2017年2月までの最新のデータも含めた、
これまでの臨床データをまとめて解析して、
この問題の再検討を行っています。

74の臨床データに含まれる、
平均年齢63.6歳の306273名の患者さんのデータを、
まとめて解析した結果として、
まだ心血管疾患の既往のない患者さんの一次予防としては、
降圧治療の心血管疾患予防効果は、
治療開始の時点での収縮期血圧に関連が認められました。

治療開始時の収縮期血圧が160mmHg以上の場合には、
降圧治療により総死亡のリスクは7%(95%CI; 0.87から1.00)、
心血管疾患の発症リスクは22%(95%CI; 0.70から0.87)
の低下を示していて、
収縮期血圧が140から159mmHgでは、
降圧治療により総死亡のリスクは13%(95%CI;0.75から1.00)、
心血管疾患の発症リスクは12%(95%CI; 0.80から0.96)
の低下を示していました。
一方で治療開始時の収縮期血圧が140mmHg未満の場合には、
総死亡も心血管疾患発症のリスクにも、
治療による有意な低下は認められませんでした。
心血管疾患を発症した患者さんの再発予防についてのデータでは、
平均の登録時の収縮期血圧が138mmHgの状態で、
心血管疾患の再発のリスクは10%(95%CI; 0.84から0.97)
有意に低下していましたが、
総死亡のリスクについては有意な低下は認められませんでした。

このように、
治療前の収縮期血圧から見ると、
それが140mmHg以上であれば、
一定の病気の予防や生命予後の改善に、
血圧の治療が結び付くと言って良いのですが、
140を切るような場合には、
そうだと言い切ることは難しいとという結果が、
今回のメタ解析からは得られています。

これは血圧の測定法による違いがあるのでは、
という議論もあり、
患者さんの病態によっても差があるのも当然なので、
かなり大雑把な検証に過ぎないのですが、
降圧治療がどんな患者さんに対して有効であるのか、
と言う点については、
一筋縄で結論が付くような事項ではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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AF冠者

79歳の家内が6月に雑用の疲れか高血圧になり開業医2か所、地元日赤、隣市の大学病院に検査入院7日、日赤では「気のせいだ」の診断でミカルデ40、後者では「緊急性高血圧」でデパス0.5
常時高血圧ではなく夜間(11時~2時)に150~180:70 となりミカルディスもアムロジンも服薬するとかえって上昇、義息からのインデラルとドグマチールで過ごしておりましたが、朝はいつも収縮期110:70になります。先日も20時に170になり救急外来でニフェシビンを服用、3時間で帰宅できました。先生は「深夜の測定はやめるように」とのことですが、不快気分で覚醒するようです。TVで「仮面性高血圧」で朝になって下がっていればいい、と解説されましたがいかがなものでしょうか。拡張期は上昇しません。ふさわしい薬はないでしょうか。
by AF冠者 (2017-11-20 10:43) 

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