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コレステロールが低いと死亡リスクが高いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロールと寿命.jpg
今年のthe Journal of Gerontology誌に掲載された、
高齢者における血液のコレステロール値と死亡リスクとの関連についての論文です。

血液のコレステロール、
特にLDLコレステロールの高値が、
動脈硬化性疾患のリスクとなり、
そうした病気のリスクの高い方においては、
スタチンというコレステロール降下剤を使用することが、
そのリスクの軽減や生命予後の改善に繋がることは、
主にスタチンを使用した多くの精度の高い臨床試験において、
長期的にもほぼ確立された事実です。

ただ、その一方で一般住民を対象としたような、
疫学データの解析においては、
コレステロールが高齢者で低値であると、
総死亡のリスクが高くなるという結果が、
複数報告されています。

コレステロールが低い方が動脈硬化の病気のリスクは低下する筈なのに、
何故コレステロールの低い高齢者は、
むしろ生命予後が悪いのでしょうか?

このことの1つの説明は、
低栄養状態ではコレステロールは低下するので、
別にコレステロールが低いことそれ自体が、
生命予後を悪くしているのではなく、
栄養状態を悪くするような状態があるので、
その結果としてコレステロールが低いのではないか、
という考え方です。

このことを検証する目的で今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの医療データを活用して、
年齢が80から105歳の高齢者を登録し、
年齢性別などの因子を補正した上で、
生命予後と血液中の総コレステロールとの関連を検証しています。

その結果、
総コレステロールが4.5から5.4mmol/L(174から209mg/dL)と比較して、
3.0mmol/L(116mg/dL)未満では、
その後の総死亡のリスクは、
スタチンで治療をされている患者さんで1.53倍
(95%CI;1.43から1.64)、
スタチン未使用の方で1.41倍
(95%CI; 1.29から1.54)、
それぞれ有意に増加していました。

これを死亡前の2年間に限って解析すると、
同様の総コレステロール116mg/dL未満の死亡リスクは、
スタチンを使用中の患者さんで1.88倍
(95%CI; 1.68から2.11)、
スタチン未使用の方で3.33倍
(95%CI; 2.84から3.91)、
それぞれ有意に増加していいました。

このように、
確かに高齢者において、
総コレステロールが低いことはその後の死亡リスクを増加させますが、
そのリスクは死亡前の2年で急激に上昇し、
その時点ではスタチンを使用している患者さんより、
使用していない人の方がリスクは高くなっています。

この解釈は単一ではありませんが、
1つの考え方として、
コレステロールを下げること自体が生命予後へのリスクになるのではなく、
死亡に結び付くような体調変化の結果として、
おそらくは栄養状態を反映して、
コレステロールは低くなっているのではないか、
という流れが想定されます。

スタチンの臨床試験ではそうした傾向はないのに、
疫学データではコレステロールが低値であると生命予後が悪いという点、
死ぬ前のリスクが高い時点では、
むしろスタチンを使用している方が予後が良い点などから考えて、
一応筋の通った考えのように思います。

この問題はこれで解決が付いたということではないのですが、
コレステロールを下げることの生命予後への影響は、
以前指摘されていたような単純なものでは、
ないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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