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喀痰ムチン濃度とCOPDとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ムチンと気管支炎.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の新たな重症度の指標として、
痰の中のムチンという粘性物質の濃度を測定している論文です。

やや特殊な測定法で濃度を評価しているので、
そのまま臨床にすぐ応用可能、
ということではないのですが、
COPDの経過に関するこれまであまり重視されて来なかった側面に、
初めて光を当てたものとして、
9月7日の紙面の巻頭を飾っています。

COPDというのは皆さんご存知のように、
主に喫煙を原因とする肺の進行性の病気で、
古典的な考えとしては、
慢性気管支炎と肺気腫という、
2つの側面があるとされていました。
肺気腫というのは気道の閉塞と、
それに伴う肺の拡張に伴う症状で、
明確な肺気腫という病態になる前に、
呼吸機能の検査においては、
1秒量という数値が低下するので、
それが初期のCOPDを発見するために、
有用な指標であるとされています。

古典的なCOPDには、
もう1つ慢性気管支炎という側面があります。

慢性気管支炎というのは、
「慢性の咳、痰が少なくとも年に3か月以上あり、
それが少なくとも連続2年以上認められ、
その症状が他の肺疾患や心疾患を原因としない」
と定義されています。

これを読むと何となく、
咳や痰が長く続いていれば慢性気管支炎なのか、
と思われがちですが、
実際には明確に感染に起因していたり、
アレルギーの関与があるようなものは除外した上でのことなので、
これはタバコを長く吸っている人での咳や痰の症状を、
基本的には意味していて、
慢性気管支炎というのは、
要するにほぼタバコ気管支炎と同等なのです。

それでは、
タバコを吸っている人で咳や痰が多いのは何故なのでしょうか?

1つの仮説は痰の主たる成分の1つである、
気道のムチンという粘液成分が多いという現象です。

ムチンというのは動物の分泌する粘液成分で、
オクラなどのネバネバの成分も、
ムチンの仲間です。
その成分は糖蛋白質で水溶性の食物繊維です。

ある意味高齢者の痰というのは、
病原体などを含まないものに関しては、
むしろ健康に良い成分である訳です。

このムチンは気道や粘膜を潤滑にし、
その表面を覆って保護するような役割を持っています。

従って、適度にある分には、
健康的なムチンなのですが、
それが過剰に産生されたり、
何等かの原因によってその局所の濃度が高くなると、
気道であればそれは痰となって、
咳の原因になったり、
咽喉を詰まらせる原因になったりもするのです。

それでは何故ムチン濃度は上昇するのでしょうか?

メカニズムは必ずしも明確ではありませんが、
COPDにおいてはムチンの産生が亢進し、
また水や電解質の輸送のバランスが崩れるので、
ムチン濃度とその量の増加が生じると考えられています。

それではこの気道におけるムチン濃度と、
COPDの予後との関連はどうなのでしょうか?
その点については、
これまであまり精度の高いデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
別個のCOPDの臨床研究の参加者917例の、
喀痰の総ムチン濃度の測定を行い、
そのうちの148例においては、
特に呼吸器疾患と関連の高い、
呼吸器分泌型ムチン(MUC5AC、MUC5B)の測定を行って、
他のCOPDの指標との関連を検証しています。

その結果、
喀痰の総ムチン濃度は、
喫煙歴のないコントロールよりCOPDの患者さんで有意に高く、
年に2回以上急性増悪のある重症のCOPDでは、
そうでないCOPDより有意に高くなっていました。
また、呼吸器分泌型ムチン濃度は、
喫煙歴のないコントロールと比較して、
重症のCOPDの喫煙者では10倍、
重症のCOPDの既往喫煙者では3倍と、
有意に増加していました。

このように、
喀痰のムチン濃度が高いほど、
COPDの重症度は高く、
それは喫煙歴とも相関していました。

今回のデータのみでCOPDにおける喀痰ムチン濃度の意義を、
確定的に言うことは困難ですが、
これまでのCOPDの評価は、
気道の閉塞性変化や気腫性変化に偏っていた、
という側面はあり、
今後慢性気管支炎と患者さんの予後との関連は、
もっと検証される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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