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急性下気道感染症に対するステロイドの有効性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
プレドニンの下気道感染への効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
下気道感染症に対するステロイド剤の効果についての論文です。

急性下気道感染症というのは、
咽喉の更に奥、
気管支などの気道に急性の炎症が起こり、
咳や痰や息切れなどの症状起こることで、
一般には咳の続く風邪や、
長引く風邪というような言い方をしているのが、
それに近いニュアンスです。

ただ、ここで急性下気道感染症(Acute lower respiratory tract infection)
と定義しているのは、
急性の咳症状に、
痰、胸痛、息切れ、喘鳴のうち少なくとも1つが伴っている場合、
となっています。

こうした症状に対して、
その人が特に喘息などの基礎疾患がなければ、
抗生物質の使用がその予後を改善する、
という根拠はありません。
しかし、そうではあっても、
一般臨床においては、
国内外を問わずに抗生物質が使用されています。
最近では抗生物質の濫用ということが、
盛んに報道もされていますが、
上記文献の記載においても、
イギリスやアメリカでもそうした傾向は同じであるようです。

急性下気道感染症に対して抗生物質が安易に使用されるのは、
その使用により患者さんの不快な症状が、
より早く改善されるのではないか、
という期待があるからです。
そうした期待があるのは、
抗生物質以外に症状を早期に改善するような治療が、
確立されていないからだと思います。

ここで喘息の急性増悪のケースを考えてみると、
症状はほぼ急性下気道感染症に一致していて、
それが引き金になって急激な喘息症状の悪化が起こります。
この時、ステロイド剤の使用は、
気道の炎症を強力に抑えることにより、
症状の持続期間の短縮などにおいて、
一定の有効性が認められています。

ただ、これは気管支喘息に限った知見で、
喘息を合併していない急性下気道感染に対しての、
ステロイド剤の使用は世界的に推奨はされていませんし、
その効果は確認されていません。

しかし、実際には一般臨床において、
国内外を問わずそうした治療がしばしば行われています。

つまり、急性の下気道感染症に対して、
飲み薬の糖質コルチコイドであるプレドニゾロンなどを、
喘息でなくても併用するような治療です。

それでは、実際にそうした治療の効果はどの程度あるのでしょうか?

この問題を検証するために今回の研究では、
イギリスの複数のプライマリケアのクリニックにおいて、
専門施設で研修を受けた医師や専門看護師により、
18歳以上で急性の下気道感染症と診断され喘息の既往のない、
トータル401名の患者を、
診断の時点でクジ引きで2つの群に分け、
一方はステロイドのプレドニゾロンを1日40㎎、
5日間使用し、
もう一方は偽薬を同じ様に使用して、
症状の持続期間や重症度などを比較しています。

その結果…

両群において、
その症状の持続も重症度や予後についても、
有意な差は認められませんでした。

つまり、
プレドニゾロンを短期間使用することは、
急性下気道感染症を悪化させることはないものの、
症状を明らかに改善したり、
重症化を予防するような作用も、
確認はされませんでした。

今回の結果のみで、
全ての急性下気道感染症の患者さんに対して、
ステロイドの使用が無意味である、
とは言い切れませんが、
現状気管支喘息などの基礎疾患のない大人であれば、
その使用によるメリットは現時点では確認はされていないと、
そう理解をしておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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