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ミノサイクリンによる多発性硬化症進行予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
多発性硬化症に対するミノサイクリンの効果.jpg
今年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
多発性硬化症という難病の進行抑制に、
古くからあるミノサイクリンという抗生物質を使用する試みを、
臨床的に検証した論文です。

多発性硬化症というのは、
神経の難病の1つで、
神経を覆う絶縁体の鞘のような部分である、
髄鞘が破壊される脱髄という現象が起こることから、
脱髄疾患と呼ばれています。

この病気の特徴として、
まず単一の神経の部位に、
CIS(Clinically isolated syndrome)と呼ばれる、
1つの症状が起こり、
それに続いてまた別の部位に症状が起こって、
そうした脱髄症状を繰り返しながら、
病状が進行するという経過を取ります。

自己免疫がこの脱髄には影響をしていると考えられているので、
通常脱髄によると思われる単一症状が出現した場合には、
まずステロイドのパルス療法を行って、
症状を抑え込み、
それから再発予防として、
インターフェロンβの注射薬や、
フィンゴリモドなどの免疫抑制剤が、
継続的に使用されるのが一般的です。

この治療には一定の効果が認められていますが、
再発予防薬はどれも非常に高価な薬剤で、
その患者さんへの負担や医療費増大という問題が、
世界的に議論となっています。

そこで、もっと安価な治療薬で、
同様の予防効果が得られないか、
という検討が行われ、
その候補の1つと考えられているのが、
抗生物質のミノサイクリン(商品名ミノマイシンなど)です。

ミノサイクリンは抗生物質としての抗菌作用以外に、
免疫の調整作用や炎症性サイトカインの抑制作用などが、
存在することが確認をされている薬剤です。

これまでに、
通常の再発予防薬であるインターフェロンβに、
上乗せでミノサイクリンを使用した臨床試験が行われていて、
その結果は上乗せ効果は認められない、
というものでした。

しかし、より早期の病変において、
単独で使用した場合の効果については、
まだ精度の高い臨床試験による検証はされていませんでした。

そこで今回の臨床研究では、
カナダの複数の専門施設において、
多発性硬化症に進展する可能性の高い、
初発の脱髄症状と診断された患者さん、
トータル142名をクジ引きで2つの群に分け、
初発症状から180日以内に、
一方はミノサイクリンを100ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
開始後6か月の時点と、
24か月の時点で、
多発性硬化症への進展の有無を比較検証しています。

その結果、
治療開始後6か月の時点では、
ミノサイクリンは多発性硬化症への進展を、
有意に抑制していましたが、
24か月の時点では、
その差は認められませんでした。

つまり、短期的にはミノサイクリンには、
多発性硬化症の進展予防効果が認められたのですが、
その効果はより長期的には減弱する性質のもののように、
今回の結果からは思われます。

この短期的な効果は、
それだけで見ると、
現在使用されているインターフェロンβの効果に、
ほぼ匹敵するものなので、
今後補助的な治療として、
まずミノサイクリンを再発予防に使用し、
有効性が低下するタイミングで、
インターフェロンなどの治療に、
スイッチするような方法も、
検討に値すると思います。

いずれにしても、
まだ現段階で治療の選択肢として、
ミノサイクリンを使用することは、
時期尚早と考えられますが、
免疫抑制剤のような強い副作用はなく、
薬も安価であるという点は大きな長所で、
今後の知見の積み重ねに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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