So-net無料ブログ作成
検索選択

非ステロイド系消炎鎮痛剤による院外心停止のリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
NSAIDSと院外心停止.jpg
今年のEuropean Heart Journal誌に掲載された、
消炎鎮痛剤の使用と院外心停止との関連を検証した論文です。

ロキソニンやボルタレン(いずれも商品名)などの、
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
手っ取り早く痛みや熱を改善する薬として、
広く使用されています。

その主な作用は、
COXと呼ばれる酵素を阻害することにより、
プロスタグランジンの産生を抑制することにあります。

しかし、非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
多くの副作用や有害事象のある薬としても知られています。

現時点で明確なものとしては、
急性の腎障害や胃粘膜障害による消化管出血、
心血管疾患リスクの高い患者さんにおける、
心筋梗塞などの発症リスクの増加などがあり、
この心血管疾患リスクの増加は、
アスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤の使用時により、
より顕著となることが報告されています。

胃粘膜障害については、
COX2の選択的阻害剤で減少することが確認されていますが、
腎障害や心血管疾患のリスク増加については、
それほどの差はないと考えられています。

さて、スポーツなどの時に多い突然の心停止は、
すぐに処置を行わないと死亡の危険性が極めて高く、
AED(体外除細動器)の普及によりその救命率は増加しましたが、
それでも深刻な健康上の脅威であることは間違いがありません。

院外心停止の原因は不明なものも多いのですが、
虚血性心疾患やそれ以外の心血管疾患が、
その原因となっているケースが多いことが想定されています。

それでは、
こうした院外心停止の事例において、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の関与はあるのでしょうか?

この点については、
あまりまとまった調査がこれまでにありませんでした。

そこで今回の研究においては、
国民総背番号制のデンマークの医療データを活用して、
2001年から2010年の報告された引退心停止の事例28947名を解析し、
その直前30日以内の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用と、
心停止との関連を検証しています。

非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用は、
3376例で認められていて、
中ではイブプロフェン(商品名ブルフェンなど)で51.0%と最も高く、
次がジクロフェナク(商品名ボルタレンなど)で21.8%となっていました。

非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用により、
トータルな解析では、
未使用と比較して院外心停止のリスクは、
1.31倍(95%CI;1.17から1.46)有意に増加していました。

そして、個々の薬剤毎の解析では、
イブプロフェンの使用により、
院外心停止は未使用と比較して1.50倍(95%CI;1.23から1.82)、
ジクロフェナクの使用により1.31倍(95%Ci;1.14から1.51)と、
いずれも有意に増加していました。

それ以外にCOX非選択性のナプロキセンと、
COX2選択制のセレコキシブとレフェコキシブが検討され、
いずれも単独では有意な心停止の増加は示しませんでしたが、
使用事例は少ないため、
本当にこうした薬剤の安全性が、
イブプロフェンやジクロフェナクより優れているかどうかは、
この結果からは判断は難しいように思います。
ただ、ナプロキセンは以前の検証においても、
心筋梗塞や脳卒中のリスクを増加させない、
というデータはあり、
一定の蓋然性はある可能性はあります。

いずれにしても、
心疾患のある患者さんにおいては、
極力非ステロイド系消炎鎮痛剤は使用しない方が良く、
使用の必要性が高い場合には、
COX2選択的阻害剤(日本ではセレコキシブのみ)かナプロキセンを用いるのが、
現状は妥当な判断であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 11

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
メッセージを送る