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セレコキシブはアスピリンとの併用でも消化管出血を起こしにくいのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
セレコキシブとNSAIDSの比較.jpg
今月のLancet誌にウェブ掲載された、
痛み止めとアスピリンを一緒に使った場合の、
消化管出血のリスクについての論文です。

ロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
痛み止めとして広く使用されている薬です。

健康に大きな問題のない人が、
短期間の使用を行うにおいては、
その鎮痛や消炎の効果は確実で強く、
有効性と安全性のバランスもとれた薬ですが、
長期に使用する際や、
心血管疾患や腎機能低下などを持つ患者さんでは、
その副作用や有害事象のリスクが高くなることが、
大きな問題となります。

非ステロイド系消炎鎮痛剤の、
最も頻度の高い有害事象の1つは、
潰瘍などによる消化管出血です。
非ステロイド系消炎鎮痛剤の基本的な作用である、
プロスタグランジンの抑制により、
消化管の粘膜の保護作用も抑制され、
それにより粘膜障害による出血が起こりやすくなるのです。

特に心筋梗塞後などの患者さんで、
それ自体出血リスクを増加させる、
低用量のアスピリンを使用している場合に、
非ステロイド系消炎鎮痛剤を併用すれば、
消化管出血のリスクはより高まることが予想されます。

アスピリンを長期使用しているような患者さんでは、
消化管出血のリスクが高いと想定される場合には、
プロトンポンプ阻害剤という胃薬が、
その予防に併用されることがしばしばあります。

また、非ステロイド系消炎鎮痛剤の中でも、
COX2選択阻害剤と呼ばれる薬剤
(日本での保険適応はセレコキシブのみ)は、
それ以外の薬剤と比較して、
消化管出血の頻度は少ないという報告が多くあります。

ただ、実際にアスピリンと併用して使用した際の、
セレコキシブと他の非ステロイド系消炎鎮痛剤の安全性の比較は、
これまでに殆ど行われていません。

そこで今回の研究では、
香港の単独施設において、
心血管疾患で低用量アスピリンを使用していて、
関節炎のために非ステロイド系消炎鎮痛剤を併用しており、
消化管出血を来した患者さん514名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
出血の原因である潰瘍などが治癒したことを確認して、
一方はセレコキシブを1日200ミリグラムで使用し、
もう一方は古いタイプの非ステロイド系消炎鎮痛剤である、
ナプロキセン(商品名ナイキサンなど)を1日1000ミリグラム使用して、
18か月の経過観察を行っています。

アスピリンは1日80ミリグラムで使用され、
プロトンポンプ阻害剤であるエソメプラゾール(商品名ネキシウム)が、
1日20ミリグラムで両群で使用されています。

その結果…

セレコキシブ群では14名が消化管出血を再発したのに対して、
ナプロキセン群では31名が再発していて、
18か月の累積リスクは、
セレコキシブ群で5.6%に対して、
ナプロキセン群で12.3%で、
セレコキシブはナプロキセンと比較して、
消化管出血リスクは56%有意に抑制していました。
(95%CI; 0.23 から0.82)

このデータはほぼ予測の範囲の結果と思いますが、
臨床的な感覚ではナプロキセンの1日1000ミリというのは、
セレコキシブの1日200ミリよりかなり強いという印象です。
実際セレコキシブの日本での上限量は1日400ミリグラムであるのに対して、
ナプロキセンは1日600ミリグラムで1000ミリは日本では認められていない量です。

従って、
単純にナプロキセンよりセレコキシブの方が、
アスピリンとの併用で安全、
というようにも言い切れませんし、
そもそもアスピリンとプロトンポンプ阻害剤と非ステロイド系消炎鎮痛剤という、
かなり問題のある併用療法が、
果たして心血管疾患の予防として成立しているものなのか、
という点は疑問にも思いますが、
実地に近い組み合わせの薬の併用の効果を、
厳密に検証した意義は大きく、
今後のデータの蓄積をまた期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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コメント 2

ひでほ

Lancet誌に出る論文なら信頼できますね。
情報ありがとうございます。
昨日眠れなく録音しておいた肝臓の小俣先生の講演会を聴いていて、小俣先生の研究がLancetに昔載ったことなんかも知りました。先生の情報はあやしそうなものは、ちゃんとそれが書き込まれていて為になります。ありがとうございます。
by ひでほ (2017-04-29 18:32) 

fujiki

ひでほさんへ
コメントありがとうございます。
最近はウェブのみの論文も増えましたので、
その評価は悩ましいところです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2017-05-01 08:01) 

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