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高齢者の潜在性甲状腺機能低下症の治療効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
潜在性甲状腺機能低下症の治療効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対しての、
ホルモン補充療法の効果を検証した論文です。

潜在性甲状腺機能低下症というのは、
甲状腺刺激ホルモンは正常範囲より上昇しているものの、
甲状腺ホルモンの数値自体は、
正常範囲となっている状態のことを示しています。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上がっているということは、
身体は甲状腺の働きが弱っていると判断して、
甲状腺により強い刺激を与えている、
ということになります。
それで機能としては維持されているということになるので、
軽症の甲状腺機能低下症、
という判断になる訳です。

こうした機能低下は橋本病などの病気でも起こりますが、
軽度のものは加齢によっても生じます。
ある海外データによると65歳以上の8から18%に、
潜在性甲状腺機能低下症が見られ、
その比率は男性より女性で多かった、
という結果が報告されています。

従って、その全てを病気として治療する、
ということは適切ではないと思います。
ただ、その一方で身体のだるさや体力の低下など、
不定愁訴的な症状が潜在性甲状腺機能低下症で生じる、
という報告もあり、
それがホルモン剤による治療で改善した、
という症例報告も複数存在しています。

これまでに多くの疫学データはありますが、
偽薬を使用するような精度の高い臨床試験で、
潜在性甲状腺機能低下症の治療効果が、
検証されたことはこれまであまりありませんでした。

そこで今回の研究では、
ヨーロッパにおいて、
年齢が65歳以上の潜在性甲状腺機能低下症の患者さん、
トータル737名をクジ引きで2つの群に分け、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方は甲状腺ホルモン(T4 )製剤を、
1日50μgもしくは25μg(虚血性心疾患の既往もしくは体重50キロ未満)
から開始してTSHの正常化を目指し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
1年間の治療を行なっています。

この場合の潜在性甲状腺機能低下症というのは、
甲状腺ホルモンは正常範囲で、
TSHが4.60から19.99mIU/Lであるものを示しています。

その結果、1年間の治療の前後で、
甲状腺機能低下に関連すると思われる自覚症状には、
偽薬と比較して有意な差は認められませんでした。
ただ、甲状腺ホルモンの使用による、
有害事象も特に認められませんでした。

今回の研究は、まあそうだろうな、
というような事項を、
改めて確認したようなものなので、
それほどの新味はありませんが、
甲状腺の分野ではどうしても小さい臨床研究が多く、
こうした厳密なデザインの治療効果の研究はあまりないので、
その意味では意義のあるものだと思います。

短絡的に誤解する方がいるといけないのですが、
これは全ての高齢者に、
数値だけを見て甲状腺ホルモンを使用することは意味がない、
と言う意味で、
患者さんによっては有効であるという点を、
否定するものではないということは、
最後に強調しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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