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アルコール摂取量と心血管疾患との関連について(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

今週土曜日(4月1日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アルコールの摂取量と疾患.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アルコールの摂取量と病気との関連についての論文です。

お酒の量と病気との関係については、
色々な意見があります。

大量のお酒を飲んでいれば、
肝臓も悪くなりますし、
心臓病や脳卒中、高血圧などにも、
悪影響を及ぼすことは間違いがありません。

ただ、アルコールを少量飲む習慣のある人の方が、
全く飲まない人よりも、
一部の病気のリスクは低くなり、
寿命にも良い影響がある、
というような知見も複数存在しています。

日本では厚労省のe-ヘルスケアネットに、
日本のデータを元にして、
がんと心血管疾患、総死亡において、
純アルコールで平均23グラム未満(日本酒1合未満)の飲酒習慣のある方が、
全く飲まない人よりリスクが低い、
という結果を紹介しています。

その一方で、
昨年のメタ解析の論文によると、
確かに飲酒量が1日アルコール23グラム未満であれば、
機会飲酒の人とその死亡リスクには左程の差はないのですが、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
矢張り死亡リスクは増加する傾向を示していた、
というようなデータが紹介されています。

今回の研究はイギリスのもので、
プライマリケアの診療データをまとめて解析することにより、
個々の心血管疾患の発症リスクと、
アルコールの摂取量との関連を検証しています。

登録の時点では心血管疾患にかかっていない、
30歳以上の1937360名の診療データが解析の対象となっています。

その結果…

登録された190万人余のうち、
観察期間中に114859名が心血管疾患の診断を受けていました。
お酒をイギリスで規定された適正飲酒量の範囲で飲む人と比較して、
全くお酒を飲まない人は、
不安定狭心症のリスクが1.33倍(95%CI; 1.21から1.45)、
心筋梗塞のリスクが1.32倍(95%CI; 1.24から1.41)、
予期せぬ心臓死のリスクが1.56倍(95%CI; 1.38から1.76)、
心不全のリスクが1.24倍(95%CI; 1.11から1.38)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.12倍(95%CI;1.01から1.24)、
末梢の動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)のリスクが1.22倍(95%CI;1.13から1.32)、
腹部大動脈瘤のリスクが1.32倍(95%CI; 1.17から1.49)、
それぞれ有意に増加していました。

この場合の適正飲酒というのは、
男性で1日アルコール量30グラム以内(1週間で210グラム以内)、
女性で1日アルコール量20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
という基準が採用されています。
2016年に男女とも適正飲酒量は1日20グラム以内(1週間で140グラム以内)、
と改訂が行われたのですが、
このデータはそれ以前のものなので、
古い基準が適応されています。

一方で適正量の飲酒を基準とした場合に、
それを超える飲酒量では、
予期せぬ心臓死のリスクが1.21倍(95%CI; 1.08から1.35)、
心不全のリスクが1.22倍(95%CI; 1.08から1.37)、
心停止のリスクが1.50倍(95%CI; 1.26から1.77)、
一過性脳虚血発作のリスクが1.11倍(95%CI; 1.02から1.37)、
虚血性脳梗塞のリスクが1.33倍(95%CI; 1.09から1.63)、
脳内出血のリスクが1.37倍(95%CI; 1.16から1.62)、
末梢動脈疾患のリスクが1.35倍(95%CI; 1.23から1.48)、
それぞれ有意に増加していました。
しかし、心筋梗塞と安定狭心症の発症リスクについては、
有意ではないものの、
飲酒量が多い群の方がリスクが低い傾向が認められました。

総死亡のリスクについては、
矢張り適正範囲の飲酒量を基準とした時に、
全くお酒を飲まない人は1.24倍(95%CI; 1.20から1.28)、
適正量を超える飲酒をしている人は1.34倍(95%CI; 1.31から1.38)と、
いずれも有意に上昇していました。
つまり、お酒を少し飲む人が一番長生きで、
沢山飲む人も全く飲まない人も、
どちらも死亡リスクは高くなるという結果です。

今回のデータは概ね多くの病気において、
全くお酒を飲まない人より、
1日20グラム程度のアルコールを摂取している人の方が、
その発症リスクは低く、
それが適正量を超えるとリスクの増加に繋がる、
というものになっています。

ただ、注意が必要なのは、
適度に美味しくお酒を飲めている人は、
トータルには体調の良い人が多く、
一切お酒を飲まない人は、
お酒を飲めない人もいますし、
体調があまり良くなくてお酒が飲めない、
というような人もいるので、
そうしたバイアスが影響している可能性がある、
ということです。

今回のデータでは、
適正飲酒量を超える集団はひとまとめで評価しているので、
より適正範囲の飲酒の人の状態が、
良く評価されやすかった、
という面もあるように思います。

いずれにしても、
お酒を適度に飲むことは、
トータルに見て健康上の大きなリスクになることはなく、
その習慣の継続に問題はないと思いますし、
アルコールを全く飲まれない方は、
健康のために無理に飲むようなことは、
お考えにはならないのが良いと思います。

アルコールの害が問題になるのは、
概ね1日のアルコール量が20グラム(~25グラム)を超えてからで、
それより少ない量のアルコールは、
全く飲まないこととほぼ同一に考えて問題はない、
という理解が妥当ではないかと思います。

ただ、勿論アルコール依存症や、
肝機能低下や糖尿病の状態によっては、
完全な禁酒の継続が医療上必要なケースもあるので、
これはあくまでその時点で健康上の大きな問題がない方に限る、
ということは強調しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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コメント 2

shiharu

アルコール摂取と病気の関連については、循環器系の病気との関連ばかりが取り上げられがちで、消化器系疾患に関しては、完全飲酒に勝るものはないと思うのですがどうでしょうか?適正な飲酒が消化器の病気のリスクを軽減する、ということはない気がするのですが。大腸ガンで死んでも心筋梗塞で死んでも命を失うことには変わりはないと思います。
飲酒という基本的に禁じられているが、ある年齢を過ぎると許可される習慣については、テレビやラジオ、あるいは未成年者が見る可能性のあるネットなどでコマーシャルを流す様なことはおかしいのではないかと常々思っています。僕自身は少しお酒は飲みますが、どうも健康にマイナスがない、という説にはたとえ少量でも抵抗があります。

by shiharu (2017-04-01 02:01) 

shiharu

上記の投稿『完全飲酒』は『完全禁酒』の間違いです。失礼しました。
by shiharu (2017-04-04 23:07) 

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