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ドニゼッティ「ルチア」(2017年新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ルチア.jpg
ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」が、
今新国立劇場のオペラ・パレスで上演されています。

ルチアはソプラノの超絶技巧の狂乱の場が有名なオペラで、
マリア・カラスやサザーランドなど、
これまでに多くの名ソプラノが名演の数々を残しています。

狂乱の場以外にも、
全編が聴きどころと言って良い充実した作品で、
以前はかなりカットされて短縮版での上演が多かったのですが、
最近はほぼ完全に全編を上演することが多くなりました。

今回もほぼノーカットに近い上演だったと思います。

僕は割と「ルチア」は好きな部類のオペラで、
これまでに1996年のフィレンツェ歌劇場のデヴィ―アのルチアが、
この作品の生での初体験で、
2002年に新国立劇場でルキアネッツのルチアを聴き、
2003年トリエステオペラのボンファデッリ、
2007年ドニゼッティ劇場のランカトーレ
(この2回は滅茶苦茶短縮版でした)、
2011年メトロポリタン歌劇場のダムラウ、
そして2012年の演奏会形式のデセイ様、
と結構この作品は沢山聴いています。

中ではデヴィ―アのルチアは、
その当時のベルカントのお手本のような見事な歌唱でした。
ダムラウのルチアは、正統的な解釈とは違うと思うのですが、
如何にもドイツ的で理知的な狂気の表現が面白く、
技巧もほぼ完璧でした。
2012年のマリインスキー・オペラにデセイ様がゲストで出た舞台も、
僕は何と言ってもデセイ様が一番の女神なので、
1回限りの歌声を聴けて幸せでした。
デセイ様の良い時の、
あの伸びとスピードのある超高音は、
今出せるソプラノはいないと思います。

さて、今回のルチアですが、
トータルにはなかなか頑張っていたと思います。

イタリアの若手の指揮者ですが、
母国のベルカントを、
良く理解していることの分かる演奏でした。
オケもいい感じで鳴っていました。
特に1幕(第一部)は、
凝縮力のある演奏であったと思います。
狂乱の場の掛け合いは、
フルートではなくグラスハーモニカを使用していました。
最近はその方が多いという感じです。

演出はプロジェクションマッピングを使用した、
立体的な舞台がなかなか美しく、
オープニングで岩礁に映像の波濤が轟くのも、
「おっ」と思いますし、
ラストの岬のセットも良い感じです。
狂乱の場では、
何と花婿の生首を突き刺した槍を持って、
ルチアは登場し、
幻想に酔いしれる場面では、
背後から死の泉と荒野がせり出して来ます。
ただ、狂乱の場は歌で盛り上げるのが筋ですから、
演出過多な印象はありました。
ラストではルチアの死体が登場し、
それを抱えてテノールがアリアを歌い、
そのまま岬の突端から海に身を投げようという瞬間で幕が下ります。
今時珍しいグランギニュール劇のような趣向で、
僕はこうした物が嫌いではないので印象は悪くないのですが、
音楽に合っていたかどうかと言うと、
そこは疑問も残ります。
全体に濃厚な死の匂いが全編を覆うような演出でしたが、
音楽はそこまで退廃的ではないように思うからです。
衣装も擬古典という感じで、
年代不明という雰囲気ですが、
ルチアの最初の衣装を男装にしたのは面白いと思います。
黒いヴェールの使い方も面白かったと思います。

歌手陣ではルチア役のソプラノは、
オルガ・ペレチャッコというロシアの若手で、
ビジュアルはルチアにピタリの美形ですが、
まずまずソツのない歌唱で、
及第点だけれど物足りなさは残りました。
超高音はあまり伸びのある声は出せないようです。
初日の映像を見ると、
カヴァレッタの部分がかなりのスローテンポで、
これじゃダメじゃん、と思ったのですが、
僕の聴いた20日の舞台では、
テンポはもう少し速くなっていました。
ただ、高音の決めは苦手らしく、
その前になるとかなりの安全運転でスリリングさのない歌唱になります。
テノールはボチボチ。
エンリーコのルチンスキーはなかなか良かったと思います。
ただ、いいな、と思うと頑張り過ぎて失速したりして、
やや安定感のない印象はありました。
得意な場所は頑張るけれど、
苦手な部分は声が小さくなる、というタイプです。

そんな訳で不満はありますし、
抜群という舞台ではありませんでしたが、
なかなか演出には面白い部分があり、
何より久しぶりに新国立にベルカントの風が吹いた、
という感じのある、
聴き応えのあるオペラだったと思います。

一聴の価値は間違いなくあると思います。

1つこれはあまり言いたくはないのですが、
新国立劇場は最近良い舞台が多い一方で、
観客の質はかなり悪く、
今回も狂乱の場の直前に、
正面1列目のど真ん中くらいにお掛けになっているおじさんが、
盛大に携帯を鳴らされていました。
ある意味その後の狂乱の場より、
聴く方にとっては戦慄的な体験でした。
勘弁して欲しいものだと本当に思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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